これからの働き方と「しごとのみらい」vol.05

新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

私どもの機関誌「Monthly」では、竹内義晴氏より、これからの働き方に関するコラムを毎月、ご寄稿いただいております。本日はその原稿をご紹介いたします。

 

しごとのみらい テレワーク

誰も来ないコワーキングスペース

私は2013年から2年間、妙高高原で趣きのある別荘を借り、「晴耕雨読」というコワーキングスペースを運営したことがあります。オープン当初は何人か来てくださり、意気揚々でした。しかしその後、人の流れはすぐに絶え、「人を呼び込もう」とイベントを企画するも、今度は「イベントすること」が目的になってしまい、続けることに疲れてしまいました。

また当時、いまでいうところの「ワーケーション」のような利用のされかたをイメージしましたが、誰も来訪していただけない現実に、こう思いました。「そもそも、Wi-Fiがあることなんて、来訪の目的にはならないよな」「軽い仕事なら、普通ホテルでするよな」「せっかく観光に来たのに、仕事はしないよな」という考えに至り、契約更新を機に、晴耕雨読は一旦閉めることを決意。「箱だけあっても、人は来ないんだ」という、当たり前の現実を痛感したのです。

 

そのコワーキングスペースは、ちゃんと運営できるのか?

地方で、コワーキングスペースが拡がる中、「ちゃんと運用できるのか?」という観点に立ったとき、経験上「厳しいのではないか?」と個人的には思っています。その理由は簡単です。「そもそも、新潟県内にはテレワークできる人が少ない」からです。

(中略)

「いやいや、先を見据えれば、テレワーク人口は増えるでしょう。だって、多様な働き方、働き方改革の時代ですよ」というご意見も分かります。しかし、都市部からのテレワーカーの来訪を期待しても、すでに全国で奪い合いの状態です。新潟県内の企業がテレワークによるメリットを理解し、環境が整わなければ、新潟県内のテレワーク人口は増えません。

しかも、コワーキングスペースの利用料は、一人1日1000円程度。10人来たって10000円の売り上げにしかなりません。人の流れが多い都市部なら売り上げも立つかもしれませんが、新潟の、交通の便が悪いところにコワーキングスペース「だけ」を作ったところで、大幅な利用者は見込めません。ですから、「これからは多様な働き方の時代だから」「テレワークの時代だから」といった雰囲気で、安易にコワーキングスペース「だけ」を増やしてはいけないのです。

 

流行に流されず「本質」を考えよう

もし、テレワークやワーケーションを推進するなら、私は本来の目的である、新潟県内の企業における「働き方多様化」に関心があるし、都市部と地域に「いかに、人の流れを生む仕組みを作るか」に関心があります。それは、単に箱ものを作ることではなく「いかに来訪してくださるか」という場や、コミュニティの設計が大切なのではないかと考えています。

しかし、口で言うのは簡単ですが、これらの場やコミュニティを形作るのは容易なことではありません。でももし、何かしらに取り組むのなら、「流行っているから」「助成金があるから」と一過性の雰囲気に左右されるのではなく、「そもそも」の本質的な目的をしっかりと考え、それを実現するために行動したいのです。


竹内義晴. これからの働き方と「しごとのみらい」. Monthly. 2021, 9月号, pp.28-29.

感想

特に地方でビジネスを展開する際には、流行りや雰囲気でなく、データやヒアリングを通じて、ニーズがどの程度あるのかをしっかり把握することの大切さを改めて実感しました。竹内氏がおっしゃる通り、「そもそも」の本質を捉えた上で行動したいものです