これからの働き方と「しごとのみらい」vol.02

新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

私どもの機関誌「Monthly」では、竹内義晴氏より、これからの働き方に関するコラムを毎月、ご寄稿いただいております。本日はその原稿をご紹介いたします。

 

しごとのみらい

新潟と都市部を「副業・兼業」でつなぐ仕組みづくり

「チャレンジをしたいけれど、手が回らない……」

みなさんの会社では「業務をもっと効率化したい」「ホームページなどで集客する仕組みをつくりたい」など、何かしらの「理想」をお持ちではないでしょうか。近くに「ITが得意な人」や「会社のPRが得意な人」などがいたらいいなと思ったことはありませんか。

そのような人材を採用すればいいのかもしれません。でも、人件費負担がどのぐらいなのか分かりませんし、そもそも、そういった人材が地域にいないという課題もあるかもしれません。その結果、「新たなチャレンジをしたいけれど、なかなか手が回らない……」というのが、実際のところではないでしょうか。

実は2021年4月より、私の地元、妙高市で「地域の企業と、都市部で働くさまざまな知識や経験がある人たちを、副業・兼業の形でマッチングする」という取り組みをはじめました。冒頭に挙げたような、地域企業の「困りごと」を解決するとともに、仕事を通じて、地域を行き来する人(いわゆる、関係人口)を増やすことが目的です。

なぜ「副業・兼業なのか」――それには、「都市部のニーズ」と「地域企業のメリット」があります。


「増える副業・兼業のニーズ」

いま、都市部で「副業・兼業したい」と考える人が増えています。その理由は、大きく分けると2つあります。1つは、政府による「副業・兼業の推進」です。2017年の暮れ、政府は働き方改革の一環として、『副業・兼業の促進に関するガイドライン』を発表しました。これまで「副業・兼業はNG」とする企業が圧倒的多数でしたが、これを機に、都市部を中心に副業・兼業をOKとする企業が増えてきました。

もう1つは、コロナ禍です。新型コロナウイルス感染症の拡がりで、都市部の多くの人が在宅勤務やテレワークを強いられました。一方で、多くの人が「会社ではない場所でも仕事ができる」ことを経験しました。今まで多くを費やしていた通勤時間がなくなったことも、時間的な余裕を生みました。

このような背景から、「副業・兼業したい」と考える人が増えているのです。


「都市部の人が副業・兼業に期待していること」

実はこれまで、地域での副業・兼業や2拠点居住、2拠点ワークなどに関心がある多くの人たちと話をしてきました。彼らが副業・兼業する期待には「金銭的な価値」ももちろんあります。でも、それ以上に「お金以外の価値」を期待している人たちの方が断然多いことに気づきました。

「お金以外の価値」とは、たとえば「地域に貢献したい」という気持ちです。都市部には新潟出身者が数多くいますが、住んでいるのは都市部でも「地元に想いを馳せている人」は多いです。

だからといって、地元に仕事があるかないか分からない中で、いきなり会社を辞めて移住するわけにはいきませんし、パートナーの仕事や、子どもの学校のことを考えると、移住のハードルはかなり高いのが現実です。でも、「週に1~2日程度」「テレワークで」「新潟の企業で副業・兼業」という形なら、移住する必要はありませんし、これまで培ってきた知識や経験を生かして地域に貢献できます。

また、副業・兼業の期待には「所属している会社ではできない経験を地域でしたい」「会社では関わることができないタイプの人たちと出会いたい」など、さまざまなものがあります。

つまり、副業・兼業を通じて、地域の企業との関わりをつくると、これまでの観光や移住に加えて、仕事を通じた新たな「地域と都市部の人たちとの関係」を創ることができるのです。


「都市部人材とつながる地域企業のメリット」

副業・兼業による都市部人材とのつながりは、地域の企業にとってもメリットがあります。1つは、「会社や地域に想いを持っていて、かつ、知識や経験が豊富な人が、自社の業務に関わってくれること」です。

たとえば、「ホームページをつくる」という業務を、ホームページ作成会社に委託することはできます。けれども、業務委託は一般的には「仕事の切れ目が縁の切れ目」になりがちです。その結果「ホームページは作ったけれど、更新できない」といった、運用面が課題になることが少なくありません。

もし、ホームページの作成や運用、ITに関することなどを、「委託先」ではなく、どちらかといえば「会社の事情が分かる仲間」として一緒に仕事ができたら、どうでしょうか?また、フルタイム雇用では負担となりやすい人件費も、副業・兼業の形ならそれほど大きくないでしょう。

 

「実体験に基づく仕組みづくり」

この、「地域と副業・兼業人材をつなぐ仕組みづくり」の必要性は、私自身の実体験に基づいています。

私はいま、妙高市に在住し、NPO法人を経営しながら、東京のIT企業でも週2日働いています。フルタイムではありませんが、「地方在住者独自の目」や「地域側の人脈」などは、新たな事業の企画や営業的な面で、東京の会社にも役に立てているのではないかと思っています。この逆――つまり、地域の企業に、都市部人材が副業・兼業できる仕組みがあれば、新潟の企業にとっても、新潟を愛している都市部の人達にとっても価値があります。「労働条件で」ではなく「新潟への想い」を、仕事を通じてマッチングできたらいいなと思っています。


竹内義晴. これからの働き方と「しごとのみらい」. Monthly. 2021, 6月号, pp.24-25.

感想

公益財団法人 にいがた産業想像機構では「令和3年度:地域外副業・兼業人材活用促進事業助成金」を募集し、プロフェッショナル人材と認められるような県外の副業・兼業人材が県内事業所を訪れて業務にあたる際の交通費や宿泊費の一部を県内事業所に対して助成しています。

このように「副業・兼業」への関心が高まる中、支援する制度も整備され始めているので、今後、「副業・兼業」の動きが顕在化するかどうか、その動向が注目されます。