V-RESASによる新潟県内の個人消費の動向(2020年8月)

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

景気の現状を確認する際には、経済全体(GDP)の5割以上を占める個人消費の動向をおさえることが不可欠です。その際、小売業販売額や乗用車の新車新規登録・届出台数といった「モノ」の動きを統計データで月ごとにチェックするのが一般的です。一方、「サービス」の動向は統計データで月ごとに把握するのが難しいため、当センターでは企業に対する聞き取りを中心に現状を探ってきました。

こうした中、内閣府地方創生推進室と内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局が「 V-RESAS 」のWebsiteを6月30日に公開しました。このWebsiteにより、「サービス」の動きが一部、可視化できるようになりました。そこで、本日は「 V-RESAS 」により県内における「サービス」の動向を確認していきたいと思います。

 

データ、ビッグデータ、デジタル

人流…滞在人口の動向

まずは「人」の動きから確認してみましょう。

下のグラフで示されている滞在人口とはスマートフォンの特定のアプリケーションから、ユーザの同意を得た上で GPSデータを取得し、滞在人口を推定したデータです。 なお、滞在人口は「平均して滞在していると推定される換算人口数」と明記されています。

滞在人口-新潟県

出典:「V-RESAS」および株式会社Agoop「流動人口データ」

新潟県全体の滞在人口をみると、オレンジ色の「都道府県外」の滞在人口は5月第1週を底に緩やかに増加していました。しかし、感染が再び拡大し始めた7月以降は概ね横ばいで推移しており、9月に入っても回復傾向はみられません。中でも例年、夏休みで県外旅行者が増える時期である8月も停滞したままでした。これは国の観光支援策である「Go Toトラベル」から東京発着の旅行が除外された影響があるのかもしれません。

また、緑色の「都道府県内」の滞在者数が前年をわずかに下回ったまま横ばいで推移する一方、青色の「市区町村内」の滞在者数が前年をわずかに上回ったまま横ばいで推移しています。したがって、新潟県民は同一の「市区町村内」にとどまり、他の「市区町村内」に移動するのを控えている傾向が続いているものと推察されます。

さらに対象を新潟県全体ではなく、県内を代表する観光地にある「越後湯沢駅」の滞在人口に絞ってみると、「都道府県外」の滞在人口は前年同週比20~80%程度のマイナスで推移しています。つまり、主力顧客である県外旅行者が少なく、厳しい状況が続いていると思われます。ただし、「都道府県内」の滞在者数が7月後半から前年をやや上回って推移しており、県外旅行者の落ち込み分をカバーするほどではないものの、全体を下支えしている状況となっています。

滞在人口-越後湯沢

出典:「V-RESAS」および株式会社Agoop「流動人口データ」

宿泊…宿泊者数の動向

次いで「宿泊」の動きを確認してみましょう。

「宿泊者数」は「観光予報プラットフォーム推進協議会」が保有するデータ――具体的には、旅行会社の店頭・国内ネット販売・外国語予約サイトなどの販売実績などをもとにしています。なお、単純には比較できないため、あくまでも参考程度となりますが、観光庁「宿泊統計」の延べ宿泊者数と比較すると、本データは延べ宿泊者数全体の約2割程度をカバーしている計算となります。

新潟県全体の「宿泊者数」(青色)をみると、5月を底に緩やかに回復していたものの、7月と8月は前年同月比50%程度のマイナスとなり、横ばいで推移しています。やはり、オレンジ色の「都道府県外」の宿泊者数の落ち込みが大きくなっているのが響いています。一方、緑色の「都道府県内」の宿泊者数は国や県内自治体による観光支援策の効果もあり、7~8月は前年同月比50~80%程度のブラスとなったもの、全体を押し上げるまでには至っていません。

宿泊者数

出典:「V-RESAS」および観光予報プラットフォーム推進協議会(事務局:日本観光振興協会)

「宿泊者数」を分類別にみると、すべての分類で前年を下回っています。ただし、オレンジ色の「男女二人(カップル・夫婦)」と茶色の「一人」など、「3密」を回避するような人数の少ない旅行タイプの回復が目立っています。

グループ宿泊者数

出典:「V-RESAS」および観光予報プラットフォーム推進協議会(事務局:日本観光振興協会)

飲食…飲食店情報の閲覧数

続いて、「飲食」の動きを確認します。

「飲食店情報の閲覧数」とは月間利用者数4,000万人の「Retty」が保有するデータから、飲食店を利用しようとする人の動向を把握するものです。なお、閲覧数であることから、実際に飲食店に行くタイミングよりも、やや先行するデータの可能性があります。

新潟県全体の「飲食店情報の閲覧数」をみると、青色の「すべてのジャンル」は5月第1週を底に緩やかに回復し、7月第4週には前年同週比プラスに転じました。しかしその後、8月第3週まで再び減少傾向とたどります。なお、8月第4週以降は幾分、持ち直して前年同週比10%前後のマイナスとなり、横ばいで推移しています。

ただし、ピンク色の「居酒屋・バー」は8月第3週を底に持ち直しているものの、前年同週比30~40%程度のマイナスが続いており、苦戦している状況がうかがわれます。

飲食店

出典:「V-RESAS」およびRetty株式会社 Food Data Platform

興味・関心…キーワードの検索人数

最後に、消費に対する興味・関心を確認してみましょう。

「キーワードの検索人数」とは、Yahoo!検索で検索されたカテゴリ毎の検索人数をもとに、人々の興味・関心を前年同期比で表しているものす。飲食店と同様に、実際の消費に比べてやや先行するデータであると思われます。

このうち、青色の「すべての消費カテゴリ」をみると、5月第2~5週あたりの間で検索人数が高止まり、その後は減少傾向をたどっています。9月に入り、やや下げ止まっているものの、消費に関する興味・関心の高まりはみられていない状況です。

さらに直近の動きを項目別で詳しくみると、「店舗」や「ファッション」などに関する情報を検索した人数は比較的順調に推移している一方、「イベント」「旅行・観光」などは低迷しており、本格的な回復はまだ先になると見込まれます。

検索人数

出典:「V-RESAS」およびヤフー・データソリューション

感想

宿泊、飲食といった新潟県内のサービスの動向を詳しくみてみると、全体的に5月を底に持ち直していたものの、感染者数の拡大が続いた8月以降は停滞していることが分かりました。当面は感染状況に応じて、消費行動が強弱する展開が続くのではないかと思われます。

そのため、地域経済の実情を把握するには、小売業販売額や乗用車の新車新規登録・届出台数といった「モノ」の動きに加えて、速報性のある「V-RESAS」により「サービス」の動きも確認していくことが大切であると実感しました。