新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。
私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。今月の「センター月報9月号」では、人前で話す場面で緊張を和らげる方法について、ご寄稿いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。
人前で話す時には…
先週、講演先で担当の方にこういわれました。
「今日は私が司会を担当しますが、緊張するタイプなんです。失敗したらすみません」
実はこういわれることは結構あります。社長、管理職の方でも人前で話すときに緊張するタイプの人はいます。大勢の前でも落ち着いてしっかりと話ができるとビジネスの成果も上がりますね。今日はプレゼン、発表会、スピーチで緊張を和らげる方法を3つご紹介しましょう。
緊張を和らげる方法その1は「オープニング・ワンパターン法」です。人前で話すということはとても高度な作業です。話す内容を覚えて、時間配分を考えて、聞き手の反応をみながら、スライドを投影して…といった多くの関連のないことを同時並行に進めるマルチタスクな作業です。
あなたは野球の試合中にバッターボックスに立ってピッチャーの投げる球に集中しながら、明日の会議のことを考えながら、俳句を一句考えて、ヒットを打つことはムリなはずです。プレゼンのことを考えながら、家族との約束を思い出し、サッカーのフリーキックを決めることも不可能なはずです。
関連の無いことを同時にするのはとても難しいのです。
同様に人前で話すという作業もきわめて高い集中力と早い頭の回転が求められます。そして、人前で話をするときにもっとも緊張感が高まるのはオープニングです。
その最も緊張するオープニングに
「ちゃんと話せるだろうか?」
「話す内容を忘れないだろうか?」
「みんな、聞いているだろうか?」
「声はちゃんと聞こえるだろうか?」等と考えると、ただでさえ考えることが多い状態なのにさらに負荷がかかって頭がパニック状態になるのは当たり前のことです。
そのため、私は「オープニング・ワンパターン法」をお勧めしています。
つまり、プレゼン、発表、スピーチ等で人前に立ったときのオープニングトークは同じ話をする、ということです。
例えば私は講演の冒頭は必ずワンパターンです。
「元気で商売熱心な〇〇〇の皆さん、こんにちは!(〇〇は主催会社や地域の名称)新潟から来ましたビジネス心理学講師の酒井とし夫です。今日はたくさんの方にお集まりを頂きありがとうございます。これから〇〇分のお時間を頂戴しておりますがせっかくの機会ですから皆さんのお仕事と人生にバチッと刺激を与える時間にしようと思います。どうか最後まで楽しんでいってください。では、さっそくですが元気で商売熱心な〇〇〇の皆さんにお願いがあります。その場でご起立ください!」
このセリフはどこの会場で講演を行なうときも全く同じです。そして、この後にいつも同じ実習を行ないます。つまり、緊張感が高まる話初めにマルチタスクを行なわず、シングルタスクのみを行なうことに集中しています。
あなたも
「元気で誠実で仕事熱心な皆さんおはようございます。営業部1課の佐藤義男です。これから〇〇について話をしますので今日も最後まで笑顔で聞いてください」
と毎回同じオープニングトークで朝話し始めてもよいでしょう。
「こんにちは。株式会社〇〇の皆様、いつもお引き立てを頂きありがとうございます。営業とゴルフが三度の飯より好きなスマイル商事の田中です。今日も御社に最適な新サービスの紹介をさせて頂きますのでどうぞご期待ください。それではさっそくお手元の資料をご覧ください」
と毎回同じオープニングで会議やプレゼンテーションをスタートさせてもよいわけです。出だし良ければすべて良し。
プレゼン、発表、スピーチ等のオープニングはシングルタスクなワンパターンのトークをお勧めします。
酒井とし夫(2019)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第42回」『センター月報』2019年9月号
感想
酒井先生がご紹介された「オープニング・ワンパターン法」を実は、私自身も使用しています。
酒井先生のように格好の良いものではありませんが、私も講演会・セミナー・研修会の講師を務める際、次のような話から始めています。
「改めまして、皆様、こんにちは。今ほどご紹介いただきました新潟経済社会リサーチセンターの江口知章と申します。本日は◯◯について◯時間程度、お話をさせていただきます。さて…」
このうち、◯◯のみ変えるだけで、ほぼ 毎回、同じパターンです。このパターンにすると、落ち着いて話し始めることを実感しています。
やはりスタートが肝心ですので、できるだけ滑らかに話し始められるように、緊張しがちな方は、同じパータンを用意してみるのも良いと思います。