農商工連携による「いもジェンヌ」ブランドの開発

新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。

本日は、新潟市西区の海岸線に沿った地域の農家を中心として葉たばこに代わる新たな作目を開発し、今年で商標登録から10年目を迎える「いもジェンヌ」ブランドの取り組みをご紹介いたします。

 

いもジェンヌ

葉たばこの廃作とさつまいもの栽培

新潟市西区赤塚の海岸沿地域は、砂地で水はけがよい耕作環境を利用して、すいか、大根、葉たばこなどの畑作農業者が多い地域です。2000年当時、喫煙が抑制され、(中略)葉たばこ農家の多くが転作する農産物の作目を検討していました。

当初から開発プロジェクトに参加してきた伊藤久氏(現JA新潟みらいかんしょ部会部会長)は「(中略)青果市場関係者からは、さつまいもの市場ニーズが高い割に県内産が少ないため有望とアドバイスを受けた」と当時を振り返ります。

地域農業者の若者の会では、さつまいもの作付けを試行し成功したとの報告を受けて、08年からはほ場でのプロジェクトが開始されました。栽培には甘みが強く、焼くとしっとりした食感が特長の「べにはる か」というさつまいもの品種を採用しました。

プロジェクト開始時の構成員は、生産者と新潟みらい農業協同組合(以下JA新潟みらい)、新潟市西区役所で、新潟県新潟農業普及指導センターの技術指導を受けながら実証的な栽培に取り組んみました。

翌年には、新潟西及び赤塚商工会も参加して新潟西地域農商工連携協議会(現在のいもジェンヌ農商工連携協議会)が設立されました。同協議会では、規格外品などを活用するため、西区内の菓子店でさつまいものペーストを製菓に使い、さらにいも焼酎を製品化するなど農商工連携による計画が進められました。

「いもジェンヌ」ブランドの開発

毎年試し掘りによって収穫後の熟成期間を決めたのちに収獲される「べにはるか」は、約1カ月一定温度・湿度の貯蔵庫で熟成され、糖度を高めたのちに「いもジェンヌ」ブランドとして出荷されます。

収穫物の規格外品はペースト状にして冷凍保存することで、製菓店の原材料として活用でき、無駄のない利用が可能となりました。現在、新潟市内および市近郊(燕市など)では、15~16店舗がいもジェンヌ製品を手掛けています。

また、2011年の「いもジェンヌ」ブランドの開発時には、新潟大学教育学部の教員・学生の協力を得ながらブランドコンセプトやネーミング、ロゴマークを作成しました。現在、さつまいもは商標登録されて「いもジェンヌ」として出荷されているほか、加工食品の製菓には同ブランド名のシールを貼って「いもジェンヌ」のブランド力を高めました。

こうして開発当初は、数名の農家によって10aの作付けからスタートしたいもジェンヌの生産は、昨年20年時点では21名の農家が生産に携わることで作付面積が21haに拡大し、出荷量では19年に約321トンまで増加しています。

いもジェンヌ・コラボ商品

農産品ブランド開発の現状と課題

さつまいもの栽培は、植え付け用の切り苗の購入がコスト高要因になっていたため、苗の作り方を工夫して切り苗を自作し栽培コストを抑えました。また、栽培農家にとってさつまいもの栽培は、9月・10月に収穫してからの室内作業になるので、冬仕事で対応できた。同時期に収穫されるねぎなどと同時に栽培できることから、農家所得の安定や農業法人の 従業員の給与の確保にも寄与しています。

販売面では、JA新潟みらいが県内スーパーでの販路を確保しました。いもジェンヌは消費者から好評だったことから、生産の拡大が求められています。

現在、収穫物はJA新潟みらいの貯蔵庫を使用していもジェンヌブランドとしての品質を維持しています。しかし、現在でも収穫期には貯蔵庫に空きスペースがないことから増産する上での課題となっています。

情報発信と知名度の向上

マスコミの告知により全国ネットのテレビで取り上げられるなど認知度は向上しました。さらに協議会では、「フードメッセ in にいがた」に出展し、知名度の向上や新しい販路の開拓などを行っています。

コロナ禍でイベント開催が困難なことから、協議会では2021年9月までにいもジェンヌに特化した情報サイトを立ち上げる予定です。新潟市西区には他にもくろさき茶豆などの有名ブランドがあることから、地域農産品を消費者に伝え、購入してもらうまでの仕組みをウェブ上で構築するとのことです。

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「Monthly」 2021年9月号の 「地方創生の視点」を加除修正しました。