新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。
私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。
今月の「センター月報5月号」では、営業や接客の仕事に就いている人がお客様からより魅力的に映るためのヒントについて、寄稿いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。
撮影をお勧めする理由
あなたは生まれて初めて自分の声を録音して、その声を聞いたときのことをおぼえているでしょうか。そのとき、自分の声を聞いてどう思ったでしょうか?
私は「えっ!?これが自分の声?変な声だな」と強く感じました。もしかしたらあなたもそう思ったかもしれません。
自分の声は骨伝音(声帯などの振動が頭蓋骨を伝わり直接聴覚神経に伝わる音)と気導音(空気を伝って鼓膜を振動させ聴覚神経に伝わる音)の2つが合わさった音で認識しています。しかし、あなたの声を聞く相手はあなたの口からでた声が空気振動となり、それが相手の鼓膜を震わせて伝わる気導音だけで聞いています。
そのため、あなたが自分で思っているあなたの声と、相手が聞いているあなたの声は全然違うことになります。
(中略)
あなたも相手の人に「聞こえない」「聞き取りづらい」「分かりにくい」といわれたことがありませんか?実はあなたの感じている声質も声の大きさも声のスピードもそのまま相手に伝わるとは思わない方が良いです。相手の聞き取りやすい声、聞きやすい声の大きさ、聞きやすいスピードを客観的に意識して話す必要があります。
声と同様にあなたの表情や外見もあなたが自分自身で考えている「あなた」と周りの人から見えている「あなた」も大きく異なります。
先ほど生まれて初めて自分の声を録音して、その声を聞いたときに「えっ!?これが自分の声?変な声だな」と感じたと書きましたが、実は表情や外見も撮影して、それを自分で見ると「えっ!?これが自分の表情?」と驚くことがあります。
私は講演活動を始めたばかりの頃、自分の講演風景を撮影して再生して見たことがあります。初めて人前で話している己の表情や姿を再生したときに「えっ!?こんなに暗い顔をして話をしているの?全然覇気がない」と強く強く感じました。
私は商売人やビジネスマンに元気ややる気を届ける立場であるにも関わらず、そこに映っていたのは暗い顔をした、滑舌の悪い、声の小さな、エネルギーの無い、小さな自分でした。
もちろん、自分では元気よく、景気よく、勢いよく、大きく話している「つもり」でした。
しかし、それは違っていました。
声と同じで自分では自分の姿も自分の目で相手の目に映るように観察することができないのです。
そのため、機会があればぜひあなた自身や社員の方、スタッフの方の仕事の様子、セールスの場、接客風景、プレゼンの様子をスマホの動画で撮影してみましょう。
そしてそれを再生して客観的に観察してみましょう。
あなたや社員、スタッフの方にはビジネスマンとしての自分の理想の姿があるはずです。その理想の姿、表情、外見、声、エネルギーと、再生した画面に映っている自分のそれは完全に一致しているでしょうか?
もし、一致していないということに気がつけば、その差はこれから埋めることができます。しかし、差に気がつかないと埋めようがないのです。
中身も外見もお客様から見てより魅力的であればビジネスもよりスムーズに進みます。
折にふれて手鏡やスマホで自分自身をチェックしてみましょう。
酒井とし夫(2019)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第38回」『センター月報』2019年5月号
感想
私も自分で話す姿を写真やビデオで確認したことがあるのですが、自分の予想とは大きく異なる姿で落ち込んだことがありました。これは自分のことは自分で見られない、つまり「見慣れない」から落ち込むのだと思います。したがって、何度も何度も繰り返し「見慣れ」てくれば、冷静に自分の様子を評価できるようになるのではないのでしょうか。
酒井先生のおっしゃる通り、「気がつけば、その差はこれから埋めることができます。しかし、差に気がつかないと埋めようがない」訳ですから、数年ぶりに、自分の話す姿をチェックしてみようと思います。