こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。
さて、今回はホテルや旅館業にとって主要な顧客層である「シニア世代」のお話です。どうやらシニア世代は国内の宿泊旅行に出かけなくなっているそうです。
そこで、私どもの機関誌「センター月報3月号」では、シニア世代が宿泊旅行に行かなくなった背景と今後の対応策について提案しています。執筆は毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生です。
選択肢が広がる余暇活動
井門先生は、シニア世代が宿泊旅行をしなくなっている背景を様々なデータから探っていきます。
シニアはなぜ宿泊旅行をしなくなっているのだろう。
レジャー白書のデータを拾ってみたのが図表3である。これをみると、国内観光旅行やドライブ、カラオケといった「従来型の余暇活動が減少傾向にある」ことが読み取れる。
一方、近年、調査選択肢に加わった「ショッピングモール(での買い物)」や「SNS」といった新たな要素が増えている。余暇の選択肢が広がり、宿泊旅行の魅力が少しずつ薄れていると想定できないだろうか。つまり、宿泊旅行に関する新たな魅力付けをしていかないと、ますます飽きられてしまうと推測できるのだ。
また、図表4は、シニア層の「国内宿泊旅行における不安要素」に関する調査結果である。このグラフから、シニア層は「長距離移動」や「健康・体力」に不安を感じていることがわかる。団塊の世代の高齢化により平均年齢の重心が上昇していることもあり、徐々に「健康上の不安」が旅行を思いとどまらせるようになってきているのだろう。
ここまでのグラフを読み取る限り、シニア層は「健康上の不安もあり、長距離移動を伴う宿泊旅行をするよりも、近郊のショッピングモールやSNSでの余暇にシフトしつつあり、宿泊旅行をしなくなっている」という仮説が浮かんでくる。
この他の理由として想像するに、就労年齢の上昇や休日の分散により「親しい人と休みが合いにくくなり、宿泊旅行をあきらめている」ことも考えられるが、いずれにしても、これまでの旅行を支えてきてくれたシニア層が縮小しようとしている。
(中略)
今後、シニア市場を考えると、遠距離よりも近場の観光地に向くようになり、さらに食事への要望が強まると予測できそうだ。そして、好きな食事ができないなら宿泊旅行を取りやめ、少しずつ需要は別の余暇へとシフトしていく…。そうした事情もあり、訪日外国人観光の需要も取り込んでいくことを計画する必要が生じている。
そうしたイメージを持っておく必要はないだろうか。
井門隆夫(2016)「地域観光事業のススメ方第72回」『センター月報』2016年3月号
読み終えて
もちろん、シニア世代を呼び戻すための対応策についても、井門先生は提案されていますが、それは本誌をご覧いただけますようお願い申し上げます。
なお、ご紹介した調査結果をはじめ、様々なデータを集め分析することで、早めの対策・行動をとることの大切さを今回、改めて実感しました。