新潟経済社会リサーチセンターの銀山です。
弊社が発刊している「センター月報11号」で、大卒者の採用に関する現状や県内の取組事例、採用を進める際のポイントなどを紹介する「新潟県内における大卒者採用の現状と推進のポイント― 県内における有効な採用活動とは」というレポートを掲載しました。
人手不足の企業における採用活動の参考としていただきたくまとめました。そこで、本ブログでもそのポイントをお伝えしたいと思います。
採用市場は学生の売り手市場
企業では人員の不足感が強まっており、文部科学省「大学卒業者及び高校卒業者の就職状況調査」によると、18年3月に卒業した大卒者の就職率は98.0%に達しています。07年の本調査開始以来、過去最高となるなど、学生の売り手市場となっています。
業種や従業員規模でのミスマッチ
リクルートワークス研究所「ワークス大卒求人倍率調査」によると、19年卒の業種別の求人倍率は、流通業が12.57倍、建設業が9.55倍と1倍を大きく超えているほか、製造業も1.97倍となっており、業種によっては採用が難しい状況となっています。従業員規模別では「300人未満」が9.91倍と最も高く、採用が難しい状況です。以下「300~999人」(1.43倍)、「1,000~4,999人」(1.04倍)、「5,000人以上」(0.37倍)となっています。
図表1 2019年卒の大卒求人倍率(従業員規模別・業種別)
県内企業における効果的な取組内容
当センターが今年5月に行なった「新規学卒者を対象とした正社員の採用活動に関するアンケート調査」のなかで、採用につながった効果的な取組内容などを自由回答形式で尋ねたところ、採用ページの充実やSNS・ブログの活用などを行なう「自社ホームページの採用ページの拡充」をあげた企業が15社となり、最も多くなっています(図表2)。
次いで、学内外で開催される「説明会への参加回数の増加」、インターンシップの内容の工夫や開催回数の増加といった「インターンシップへの取組強化」、共同研究や就職支援担当者との関係強化を図ることなどを行なう「大学との結びつきの強化」が各6社と多いです。
また、説明会での集客やPRなどにおける「若手社員の活用」が5社、社員から親族・友人・知人などを紹介してもらう「紹介制度の導入」が3社などとなっています。
県内企業が様々な手段を使い、より多くの学生に企業を知ってもらう活動を行なっていることがうかがえます。
図表2 採用活動において上手くいった取組内容(上位項目のみ)
事例紹介
上記のように採用を取り巻く環境は厳しさを増しています。本レポートでは求人倍率が高い業種である「製造業」と「建設業」で「従業員が300人未満」の企業規模にも関わらず、特徴的な取り組みで採用を進めている県内企業の事例を3つ紹介しています。
①株式会社南雲製作所(上越市、金型製造):大企業と採用面で競合することも多いものの、インターンシップや大学との共同研究、経営トップの熱意など、様々な取り組みにより、優秀な人材を集めています。
②株式会社長岡歯車製作所(長岡市、歯車製造):社員の高齢化と、熟練社員から若手社員への技術の承継という課題がありましたが、現在では若手社員中心の採用活動と新入社員教育で、社員の平均年齢が30.7歳に大幅低下することに成功されています。
③株式会社巴山組(阿賀町、総合建設業):一般的には弱みと感じられる山間地や建設業という特徴を捉え直して、その魅力を伝えることで学生にアピールし、地域貢献という企業理念に共感する人材を求めています。
おわりに
今回の調査を通して、売り手市場となっている大卒者の採用活動において、様々な取り組を実施して順調に採用を進めている企業があることを改めて実感することができました。こうした企業に共通していることは、社員を大切にしているという姿勢を学生に上手く伝えているということです。採用を進めるために様々な工夫はあると思いますが、根底にはこうした姿勢が大事だと思いました。
本レポートでは上記の事例企業の詳細な取り組みのほか、採用を進める際のポイント、県内の採用に関する動向などをお伝えしています。本レポートを読みたい方は、銀山(ぎんざん)宛てに「ブログを見た」と言って、こちらまでメールしていただくか、Tel025-246-3211までお電話ください。無料でご提供いたします。
なお、新潟経済社会リサーチセンターでは、新潟県内の企業、商工会議所・商工会、行政機関の皆様を対象に講演会・セミナーや研修会などへの講師派遣をおこなっております。上記のような採用活動に関する講演などのご依頼・お問い合せは担当:銀山(銀山)宛てに「講師派遣の件で」とこちらまでメールしていただくか、Tel025-246-3211までお電話ください。