新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。
講演会等の講師を依頼された際、新潟県十日町市の松之山温泉で土産物店を営む「十一屋商店」さんの事例を紹介する時があります。その場合、講演後に「十一屋商店さんの手書きPOP広告の事例をもっと知りたい」との声をいただくことがあります。そこで、本日は十一屋商店の福原基裕さんの了解を得て、店内に置かれている手書きPOP広告の事例をご紹介いたします。自らの情報発信を見直す際の参考にしてみてください。
※不要不急の外出を控えるように呼びかけられている中、発信する情報の内容・表現・タイミング・媒体などについては、十分に配慮しましょう。
十一屋商店さんの手書きPOP広告事例
十一屋商店さんの店内には数多くのPOP広告が飾られています。そのほとんどが店主自ら手書きしたものです。商品の長所を真摯に伝えたものから、クスッと笑えるような冗談を交えたものまで様々なPOP広告があります。読んでいるだけで訪れる人が楽しなるようなお店です。
こうしたPOP広告の多くは原則、①最初にキャッチコピーを記載し、②次にその商品の特徴や魅力などを知らせて、③最後に商品名と価格を表示する、という順番で書かれています。 特に、商品名ではなく、キャッチコピーから書き始めることで、お客様の興味・関心をひく工夫に力が入れられています。
そこで、キャッチコピーの種類に応じて、事例を紹介していきます。キャッチコピーの種類については、当センターでお世話になっているマーケティング・コンサルタントの松野恵介氏のブログを参考に、概ね5つに分けてご紹介いたします。
その1…ターゲットを絞って呼びかける
十一屋商店さんでは、どのようなお客様に向いている商品なのか?を明示したPOP広告が数多く置かれています。具体的には、「~~のあなたへ」といったキャッチコピーで表現されています。
▲「おみやげ選びにお悩みのあなたへ」と悩みに焦点を合わせています。
▲「ここでしか買えない日本酒が欲しいというあなたへ」と地域・場所を限定しています。
▲「結納や結婚式が近い親族の方へ」と行事等にフォーカスしています。
▲「都会で一人暮らしの子供に仕送りをしようと考えているあなたへ」と家族構成に焦点をあてています。
その2…お客様の声を活用する
「お客様の声」を活用したPOP広告も置かれています。例えば、かぎ括弧により会話調で表現したキャッチコピーがみうけられます。
▲「『箱だけ下さい!!』と高校生に言われました」と実際にいただいたお客様の声をそのままキャッチコピーにしています。
▲「『料理するの大変そう!』って思っているあなたへ」とお客様の声と、先程ご紹介した「その1…ターゲットを絞って呼びかける」を組み合わせたPOP広告です。
▲「『えっ!! これがそばなの?』と思ってしまうくらい細いのですが…」とその商品を試した時のお客様の感想を記載しています。
▲「『どこまでぬける?』かわいい毛抜き」とこちらも商品を試した際の感想を使っています。
その3…具体的な数字を入れて活用する
数字を活用して商品の特徴を伝えることで、読み手が「なるほど」と納得しやすいPOP広告も置かれています。
▲「『6年仕込みと3年仕込み』3年の違いは埋まりません」と数字を活用したキャッチコピーにしています。
▲「これ1枚で2合!! 2枚で4合は飲めてしまう!!」と美味しさを具体的な数字で表しています。
▲「長い歴史がある」と漠然と伝えるのではなく「しんこ餅を作り続けて60年」と具体的な数字を入れて表現しています。
▲人気ラキングも掲示されています。
その4…好きな理由をそのまま書く
紹介する商品が好きになった理由、好きになった体験などを伝えたPOP広告も作成されています。
▲「ぜひ食べてみてください!!」の後に、自身の結婚式の引出物として使用したことが述べられています。
▲「これ以上の日本酒は知りません」と伝えた後に、お正月用として購入することをおすすめしています。
▲「あなたはどちらのパッケージが好きですか?」の次に、全国名水百選の商品であることを伝えています。
▲「元祖を買わずに何を買うのさ!!」と元祖に焦点を合わせています。
その5…知らないことを教えてあげる
店として強調したいことよりも、お客様の知りたい情報を伝えるPOP広告も置かれています。「ご存知ですか?」「知っていますか?」といった問いかけと一緒に表現されています。
▲「ご存知ですか?米100%の純米酒と言えど加水されているという事を!!」と述べた後に、純米酒と原酒の特徴・情報を解説しています。
▲「知っていましたか?そばを塩で食べると香りがすごく引き立ちます!!」と食べ方の提案をしています。
▲「新潟県には酒粕の焼酎がある事をご存知ですか?」と尋ねた後に、焼酎の製造工程について例え話を使い、分かりやすく説明しています。
▲日本酒の「生酒」「生貯蔵酒」「生詰め」といった知っているようであまり知られていない点について、解説しています。
6.その他
十一屋さんには、思わずクスッと笑ってしまうようなPOP広告も数多く置かれているという特徴があります。
▲ユーモアを交えて、「婿投げまんじゅう」の説明をしています。
▲欠品の案内を柔らかい表現で伝えています。
▲わさびの辛さを「厳しい人生に」という冗談と一緒に表現することで、読んだ人を笑顔にしています。
▲「これで失敗したらあきらめた方がいい!!」とユーモアを交えて、簡単に炊き込みご飯が作れることを伝えています。
まとめ
ご紹介した事例以外にも、様々な手書きPOP広告が店内に置かれています。何よりも「量」が多いのが特徴です。数多くの手書きPOP広告を置くことで、お客様も楽しくなりますし、お店側の作成能力もより一層高まったのだと思われます。
なお、十一屋商店さんでは、視察なども快く引き受けていらっしゃるので、興味のある人は連絡の上、一度、訪れてみてはいかがでしょうか。
なお、当ブログでは手書きPOP広告について、以下の投稿もしておりますので、ご参考にしてください。
=====
「手書きPOP広告を使った情報発信方法・・・柏崎市連合商工会・研修会」
「手書きのPOP広告の書き方…湯沢温泉通り商店街・第1回勉強会」
「聴くだけではもたいない!研修会やセミナーを十二分に活用するポイントとは?」