新潟県内中小企業の海外展開~ 海外販路開拓へのチャレンジを支援!~

新潟経済社会リサーチセンターの唐橋です。

近年、海外への販路拡大に向けて、公益財団法人にいがた産業創造機構(以下NICO)を活用する県内企業が増えています。

そこで、県内企業の海外展開の背景や動向、支援機関としてのサポート事業について、NICOに伺いました。

 

海外ビジネス

助成制度の活用状況と海外展開の背景

県内企業の海外展開の支援メニューとして充実を図っている助成制度「海外展開加速化支援事業」(注1) の2019年度の採択企業は51社に及び、県内の中小企業が海外販路の開拓に積極的にチャレンジしていることが窺われます。

また、今年度開始した「海外展開トライアルサポート事業」(注2)は、海外展開に初めて取り組む企業を対象にしているが、14社が採択されました。


二つの支援事業の採択企業を業種別でみると、製造業では食品(含む清酒)が、非製造業では卸・小売業が多くなっています(図表1)。

海外展開支援事業・採択企業数

(注1) 県内企業の優れた商品・製品・サービスについて、海外での市場調査及び販路開拓に要する経費の一部を助成
(注2) 海外展開に初めて取り組む企業や経験が浅い企業を対象に、海外市場調査や見本市・展示会出展などのトライアルに要する経費の一部を助成

2013年から開始したNICOの海外展開助成制度の採択企業は、当初20社程度から直近3年間では毎年50社を超え、年々増加傾向にある。また、海外展開に関する相談件数も多くなってきています。

その背景として、将来の人口減少に伴い、国内需要の先細りが見込まれるなかで、新たな販路を海外に求めようとする企業が増えていることが考えられます。

また、食品関係が増えている背景には、国が農林水産物や加工食品の輸出拡大を目標に掲げていることや、その方針を受けて様々な支援機関が企業の取り組みを後押ししていることがあります。

新潟県は、酒造メーカーを含め食品産業が盛んですが、これまでは国内向けの販売が中心であった企業が多く、海外展開への潜在的なニーズは大きいといえます。また、その多くが中小企業であることから、助成制度を利用しやすく、今後も助成制度を活用する企業は増えていくと思われます。

NICOでも、セミナーや相談会などを開催し、助成制度の活用を広く呼びかけるとともに、海外展開ニーズのある企業には海外展開の実現に向けた相談などのサポートを行なっています。

海外展開支援メニューも充実

NICOでは、助成制度の他にも県内の中小企業の海外展開ニーズに対応するため、そのステージに応じたサポート事業を幅広く展開しています。

海外ビジネスに精通したアドバイザーが、貿易実務や契約にまつわるトラブル防止など、様々な相談に無料で対応するほか、海外ビジネスコーディネーターをアジアなど9カ国・地域の主要都市に21人配置し、現地でのマッチングなど企業活動をサポートしています。

また、シンガポールや台湾など国・地域ごとのビジネスの最新情報を解説する海外ビジネスセミナーや、海外展開に必要な人材の育成のための海外人材養成講座などを定期的に開催しています。

さらに、既に海外に展開している企業向けには、海外見本市、現地商談会への出展やマッチング支援、外国への特許等の出願への支援や契約関係などの貿易実務や海外現地情報の提供を行なっています。

パリにテストマーケティング拠点

2018年7月、NICOのサポートのもと、欧州での県産品の販路拡大を図るため、パリ新潟専門店「Kinase(キナセ)」(注3)がオープンしました。

パリの高級百貨店やブティックが立ち並ぶ富裕層が住むエリアで、県産品の販売等テストマーケティング事業を行ない、その良さを知ってもらうことで県産品の認知度を上げ、ビジネスチャンスの獲得を目指しています。

新潟の風景(水・稲穂)をイメージして装飾された店内には、新潟のお酒、お米などの食品や工芸品、300点を超えるアイテムが陳列されています。

パリで県産品のみを専門に扱う店舗の展開は全国でも例を見ない試みであり、常時展示販売できる専門店を持っていることは強みといえます。

パリ新潟専門店「キナセ」

(注3) 2018年7月10日開設。にいがた産業創造機構との委託契約により、店舗運営やマーケティング業務などを株式会社グラムスリーに委託

また、出品した企業にとっても、「キナセ」の現地仲介業者としての機能を活用しながら、パリの中心地で自社の商品の販売を試みることが可能となる。さらに、ヨーロッパ全土への展開への足掛かりとしての機能も期待されています。

「キナセ」は、新潟県およびNICOからマーケティング事業等の業務委託を受けており、オープン以来1年余りが経過した現在では、新潟の清酒や食品、工芸品などを中心に県内67社の321商品を取り扱っています(図表2)。

パリ新潟専門店「キナセ」取扱商品数

また、「キナセ」を起点として、百貨店や専門店などヨーロッパの流通業者への市場拡大も視野に入れて、現地のイベントや展示商談会に出展するなど、プロモーション活動を行ない、既に現地の高級百貨店「ボン・マルシェ」への新潟清酒の納入も開始しています。

将来的には、パリを起点に欧州各地へ県産品を展開し、新潟ブランドの浸透を図っていくこととしています。 「キナセ」への出品の申し込みは、NICOのホームページにて随時受け付けています。

NICOでは、海外展開への支援のほかにも、創業や新技術・新商品開発、新分野進出、経営革新、販路開拓など幅広く、県内の中小企業の新たな挑戦を支援しています。

また、新潟市内以外にも県内地域を遍く網羅するため、出張個別相談会「NICOカフェ」を概ね月1回、県内各地、県北や魚沼、上越などで開催しており、多くの企業が気軽に相談できる場を提供しています。

まとめ

政府は、農林水産物・食品の輸出を積極的に推進しています。県内においても、金属製品などの工業製品に加え、近年では、従来は国内向け販売が中心であった農林水産品や加工食品、卸・小売等サービス業などの海外展開が増えてきています。

国内の人口減少が進み、国内需要の頭打ちが予測されるなか、新たな販路を海外に求める県内中小企業の動きはこれからも加速していくものと思われます。

NICOでは、海外展開に初めて取り組もうとする企業には、先ずは基本的な知識を学ぶために、NICOが開催するセミナーや講習会への参加を勧めています。相談の内容によっては、NICOだけではなく県やジェトロなどの他の支援機関とも連携して海外展開のニーズに対応しています。

これからも、県内中小企業の海外展開への支援機関の積極的なサポートが期待されています。

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「センター月報」 2020年2月号の 「潮流 県内最新トピックス 第26回」を加除修正しました。