新潟経済社会リサーチセンターの近です。
当センターでは毎月、新潟県経済の基調判断を発表しています。
当センターが独自に行っている 県内の企業様へのヒアリング調査やアンケート調査と、毎月発表される経済指標を通じて、 県内の景気動向を分析し基調判断をおこなっています。
そこで、今回は7月の基調判断を紹介します。
7月の基調判断:横ばいで推移している県内経済
〇個人消費は緩やかに持ち直している
〇住宅投資と公共投資は持ち直しつつある
〇設備投資と雇用状況は概ね横ばいで推移している
〇生産活動は弱含んでいる
〇総じてみると県内経済は横ばいで推移している 7月は上記のとおり判断しました。詳しくは「グラフで見る県内経済」をご覧ください。
新潟県内の住宅投資の動向
今月は、「住宅投資」についてみていきたいと思います。
国土交通省が毎月発表している「建築着工統計」をみると、6月の新潟県の新設住宅着工戸数は前年比4.1%減と3カ月ぶりに前年を下回りました(図表1)。
ただし、4-6月期では前年比10.2%増となっており、基調としては持ち直しつつあります(図表2)。
(図表1)
(図表2) 新設住宅着工戸数(前年比・3カ月移動平均)
それぞれ内訳をみると、
〇持家の着工戸数は、前年比21.0%増の674戸となり、4カ月連続で前年を上回った
〇貸家の着工戸数は、前年比21.0%減の188戸となり、2カ月ぶりに前年を下回った
〇分譲の着工戸数は、前年比58.1%減の75戸となり、3カ月ぶりに前年を下回った
となっています。
貸家は相続対策などの需要が一巡したことなどから低調に推移している一方、持家は好調な動きとなっています。持家については2018年7月頃から増加傾向に転じて以降、4四半期連続で前年を上回っています。利便性の高いエリアを中心に需要が高い状況が続いているほか、10月からの消費税引き上げの影響が背景にあるとみられます。
今回の増税に関して、税率8%を適用する特例措置は19年3月末までの工事契約とされているため、駆け込み需要はすでに終わっており、その大部分が着工戸数に反映されたとみられます。 ただし、持家に関しては駆け込み需要が多少みられたものの、前回の増税時(14年4月)と比べると勢いはみられず、住宅メーカーからも「駆け込み需要は盛り上がりに欠けた」といった声も聞かれました(図表3)。
(図表3) 前回増税時の新設住宅着工戸数(前年比・3カ月移動平均)
その理由として、住宅ローン減税の対象期間延長やすまい給付金制度の拡充といった、政府による増税後の住宅取得優遇制度が充実していることが考えられます。「住宅取得優遇制度があるため、4月以降も販売は堅調となっている」との声も聞かれており、駆け込み需要が大きくなかった一方、前回増税時のような反動減といった動きは今のところみられていません。
まとめ
足元で住宅投資は持家を中心に、持ち直しつつあります。消費増税の影響についても、政府の手厚い住宅取得優遇制度の効果などもあり、大幅な落ち込みは避けられています。
ただし、一部では「優遇制度は時限性があることから、契約を急ぐ動きもみられる」といった声が聞かれるなど、これらの制度の期間が終了した後の市況の低迷が懸念されます。 また、米中貿易摩擦の影響などにより、国内景気が悪化し雇用・所得環境が悪化すれば、住宅を購入しようといった動きが鈍ることも考えられるため、注視していく必要があります。