都道府県別の人口移動(2020年1~11月累計)~東京都は転入超過数が急減、新潟県は…~

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

新型ウイルスの影響により、都道府県間の人口移動が大きく変化しています。具体的には、これまで増加傾向を続けてきた地方から東京都などに人口が移動する流れが緩やかになっています。いわば、集中緩和の動きがみられます。

そこで、本日は都道府県間の人口移動について、全国および東京都、そして私たちの会社のある新潟県のそれぞれの状況をご紹介します。

 

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東京都の「転入超過」は大幅に縮小

2020年1~11月までの累計で都道府県間の人口移動をみると、転入者が転出者を上回る「転入超過」数は下の図のとおり、東京都が最も多くなっています。以下、神奈川県、埼玉県、千葉県が続き、1都3県で「転入超過」数が多くなっています。

ただし、昨年同時期の累計と比べると、東京都の「転入超過」数は半分以下に縮小しています。これは他道府県から東京都に流入する「転入者数」が減少する一方、東京都から他道府県へと流出する「転出者数」が増加しているためです。

都道府県別の転入超過数

2020年1月以降の人口移動を単月でみると、東京都では1~3月までは前年と同様の傾向をたどっていました。しかし、4月以降は異なる動きを示しています。新型ウイルスの感染拡大を背景に、4月の「転入超過」数が大幅に縮小した後、5月には「転出超過」に転じました。これは統計で比較可能な2013年7月以降、初めての「転出超過」となりました。翌月の6月に一旦、持ち直すものの、7月以降直近の11月まで5か月連続で「転出超過」が続いています。1年で最も転入者数の多い3月の「貯金」があるため、 2020年1~11月までの累計で「転入超過」を維持していることが理解できます。

東京都の転入超過数

なお、1都3県のうち千葉県では累計で「転入超過」数が拡大しているものの、埼玉県、神奈川県では東京都と同様に「転入超過」数が縮小しています。埼玉県、神奈川県とも他都道府県から流入する「転入者数」の減少が大きな要因です。

「転出超過」の状況にあった多くの道や県では、「転出超過」数が緩やかに

2020年1~11月までの累計で1都3県を除く全国の人口移動をみると、 転出者が転入者を上回る「転出超過」の状況にあった多くの道や県では、「転出超過」数が縮小しています。その多くは転入者数が増えのではなく、転出者数が減ったことが大きな要因です。

このうち、私たちの会社のある新潟県の人口移動をご紹介します。2020年1月以降の単月でみると、1~3月までは前年と同様の傾向をたどっていました。その後、4月~5月、8月と「転出超過」数が縮小し、9月にはわずかながら「転入超過」に転じました。累計でみると、転入者数が微減となる一方、転出者数が大きく減っています。つまり、新潟県に流入する人が増えたのではなく、流出する人が少なくなったのが実態とみられます。

新潟県の転入超過数

このように地方から1都3県への人の流れが緩やかになっている背景には、次のような点が指摘されています。

  • 新型ウイルスの影響から、進学や就職、転勤、転職、住み替えなどにより郊外・地方から東京都などに移住する人が減っている。
  • 具体的には、在宅勤務が一部に広がるなど、通勤する必要性が薄れていることもあり、郊外・地方での居住を維持・優先する人が増えている。
  • また、大学等で授業がリモート化されたことに伴い、若年層で東京都などに移住せず、郊外・地方での居住を維持・優先する人が増えている。
  • さらに、景気の低迷などから、地方から東京都などへの転職者の流入が減っている。
  • その一方で、地方移住への関心が高まっているほか、企業の一部では、本社を地方に移転しているところもある。

なお、 2020年1~11月までの累計で1都3県を除く全国の人口移動をみると、 転入者が転出者を上回る「転入超過」の状況にあった大阪府や福岡県などでは 、「転入超過」数がより一層拡大しています。ただし、転入者が増えたわけではなく、転出者数が前年よりも抑えられた要因によるものです。

21大都市の人口移動は都市によって異なる

続いて、21大都市での人口移動を2020年1~11月までの累計でみると、 転入者が転出者を上回る「転入超過」数は下の図のとおり、東京都特別区部が最も多くなっています。以下、大阪市、横浜市、さいたま市、札幌市、福岡市などが続いています。

なお、「転入超過」の状況にある都市をみると、東京都特別区部のほか、川崎市などで「転入超過」数が縮小する一方、大阪市、横浜市、仙台市、相模原市、千葉市などでは「転入超過」数が拡大しています。このうち、大阪市と相模原市はわずからながら転入者がプラスとなりました。

21大都市別の転入超過数

これに対して、「転出超過」の状況にある都市をみると、岡山市、北九州市、浜松市、広島市などで「転出超過」数が縮小しています。一方、京都市、神戸市などでは「転出超過」数が拡大しており、都市による違いが生じています。

私たちの会社のある新潟市をみると、前年の「転出超過」から「転入超過」に転じています。 2020年1月以降の単月でみると、1~3月までは前年と同様の傾向をたどっていたものの、4月に「転入超過」が大幅に拡大しています。その後も概ね「転入超過」で推移しています。転入者が微減となるものの、転出者が前年を大幅に下回っている要因が大きくなっています。

新潟市の転入超過数

感想

地方から東京都などに人口が移動する動きが緩和されていることが確認できました。

こうした中、地方の自治体では移住者を呼び込む取り組みが活発化しています。また、内閣府地方創生推進事務局では、移住を応援する「いいかも地方暮らし」というウェブサイトを開設して、移住者へのインタビューを掲載したり、移住の際に参考となるウェブサイトを紹介したりするなど、情報発信を強化しています。なお、インタビューには新潟県内に移住したお二人も含まれています。

その一方で、今後、感染が収束した場合には、再び、東京都などへの人口集中の動きが現れ、現状の集中緩和の動きは短期間で終わる可能性があります。

したがって、転出超過で悩む地方では、移住に興味にある人への呼び込みを強化するのはもちろんのこと、地域に定着してもらえるような魅力的な仕事や街・地域を作り出すという本質な取り組み、いわば「地方創生」がより一層求められているのだと思われます。

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参考文献

岡田豊「コロナで東京の転入超過数が急減」『みずほ総合研究所 みずほインサイト』2020年6月29日  <https://www.mizuho-ri.co.jp/publication/research/pdf/insight/pl200629.pdf> (2021年1月14日アクセス)

大塚敬「コロナ禍発生から半年、一極集中から様相が一変した東京都の人口動向」『 三菱UFJリサーチ&コンサルティング リサーチナウ』2020年10月1日 <https://www.murc.jp/report/rc/column/search_now/sn201001/>
(2021年1月14日アクセス)

永井恵子「2020年春の国内移動者数の状況-住民基本台帳人口移動報告2020年3月及び4月の結果から-」『総務省 統計Today』No,156、2020年6月10日 <https://www.stat.go.jp/info/today/156.html>
(2021年1月14日アクセス)

永井恵子「緊急事態宣言下における国内移動者数の状況~東京都の状況を中心に~-住民基本台帳人口移動報告2020年5月の結果から-」『総務省 統計Today』No,157、2020年6月30日 <https://www.stat.go.jp/info/today/157.html>
(2021年1月14日アクセス)

永井恵子「緊急事態宣言解除後の国内移動者数の状況~東京都の状況を中心に~
-住民基本台帳人口移動報告2020年7月の結果から-」『総務省 統計Today』No,161、2020年8月27日 <https://www.stat.go.jp/info/today/161.html>
(2021年1月14日アクセス)

永井恵子「転出超過が続く東京都及び東京圏の状況
-住民基本台帳人口移動報告2020年8月の結果から-」『総務省 統計Today』No,164、2020年9月29日 <https://www.stat.go.jp/info/today/164.html>
(2021年1月14日アクセス)