新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。
私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。
今月の「センター月報8月号」では、人間心理の原則に則った販売促進手法について、ご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。
利己的な相対略奪感
人間は自分が本来手にすべきものを手に入れられずに、自分と似ている他者がそれらを手に入れたことが分かった場合には不満が生じます。
(中略)
簡単にいうと人間は自分と同じような環境、立場にある人が、自分が手に入れていないものを手にしたことが分かると不満が生じるということです。これを心理学的には利己的な相対的略奪感といいますが、この感情は行動のための強いエネルギーとなります。
(中略)
たとえば、夜に衛星放送で通販番組をみていると次のようなストーリーが展開されます。
「今日はこちらの美容液をご紹介します。その前に一人の女性にご登場いただきましょう。佐藤さんどうぞ、こちらへ」
そして、司会者がゲストに向かって質問をします。
「みなさん、こちらの佐藤さんは何歳だと思いますか?」
「40代半ばかしら?」
「40代の前半じゃないかしら?」司会者がこういいます。
「実は佐藤さんは今年78歳になられます」
「え~!シワが全然無い。お肌がツルツルですね(ゲストがいっせいに驚く)どうしてそんなにお肌がキレイなのですか?」…そして、佐藤さんが20年前から愛用している美容液が紹介されることになります。
(中略)
先の衛星放送では、78歳の佐藤さんが20年前から愛用している美容液が紹介されるとともに、「本来ならあなたも佐藤さんのようにいつまでも若々しくシワのないお肌を手に入れる資格があります。もし、あなたのお肌がそうなっていないとしたら、それはあなたの日常生活の習慣のせいや老化や遺伝のせいではなく、単に美容液の違いなのですよ」
と説明することにより、視聴者の心に相対的略奪感を芽生えさせて、そこから行動(=購入)につなげるという広告戦略になっています。
これは、良い悪いの話ではありません。今の日本には質の高い、しかも価格の安い商品やサービスが溢れています。今までどおりに商品名と効能を連呼していれば売れる時代ではありません。各社ともなんとかしてお客様の心を揺り動かして、注意を引き、興味を喚起して、欲求に火を付け、行動に向かわせようと試行錯誤をしています。
先の衛星放送では、美容液の紹介の後に他のお客様の使用感想が次々と紹介されることが多いのですが、これは心理学の社会的証明という原理を応用したものです。
また、「今回は先着500名様限定でのお届けです」という決まり文句もよく登場しますが、これは以前にもこのコラム記事で紹介した希少限定の原理です。「お電話が込み合っておりますので、つながらない場合にはお掛け直しください」という一言を伝えると反応率が高まるのも希少限定の原理を利用した広告テクニックです。
(中略)
自社や自店でセールストークを考えるとき、チラシやDM、ホームページのコピーを書くときには、このような人間心理の原則に則って考え、コンテンツを作成するとお客様の心をぐっとつかむことができます。
酒井とし夫(2017)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第17回」『センター月報』2017年8月号
感想
酒井先生の原稿によれば、どうやったらお客様に購入してもらえるのか?について、通販番組は考え抜いて作られているようですね。広告テクニックの勉強という観点から、一度、ゆっくり視聴してみたいと思いました。