新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。
先日、久しぶりに楽曲をダウンロードにより購入しました。楽曲の購入はCDだけではなく、ダウンロードや定額制のストリーミングサービスなど、様々な形態に広がっています。そのため、各形態の利用動向が気になったことから、楽曲購入に関する統計をご紹介いたします。
CDや音楽配信などによる生産・売上実績は?
一般社団法人日本レコード協会がまとめた統計によると、CDなどの生産実績のほか、ダウンロード・ストリーミングといった音楽配信売上実績を合わせた合計金額は2017年で2,893億円となっています。長期的にみると、減少傾向で推移しています。CD、アナログディスク、カセットテープなどを合わせた「オーディオレコード」の減少が響いています。
一方、「音楽配信売上」はストリーミングの増加により近年は4年連続で前年を上回っています。それでも「音楽配信売上」が「オーディオレコード」の減少分を補うほどの金額にまでは成長していません。
ライブ市場の動向は?
CDや音楽配信などの売上が低迷する中、音楽業界ではライブに力が入れられているという話を聞く機会が多いです。そこで、ライブに関する統計も確認してみました。なお、ライブに関する統計については、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)が全国各地の正会員社を対象に調査をおこなっておりますので、その統計をご紹介したいと思います。ただし、会員社を対象としているため、ライブ市場全体をカバーしているわけではない点には注意が必要です。
一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)のまとめた統計をみると、スタジアム・アリーナ、ホール、ライブハウス、野外などでおこなわれるライブの年間売上は2017年で3,324億円となっています。単純には比較できませんが、参考までに先ほどご紹介したCDや音楽配信などの売上(2,893億円)と比べると、規模は大きくなっています。
長期的にみると、ライブの年間売上や公演数、動員数は増加傾向をたどっています。スタジアム・アリーナ、ホール、ライブハウスとも概ね上昇しています。ただし、年間売上や動員数はここ3年ほどは横ばいで推移しているようです。最近に限れば、スタジアム・アリーナの頭打ち傾向がうかがわれます。一般社団法人コンサートプロモーターズ協会(ACPC)の「2017年の市場概況」によると、「会場不足の深刻化」などが指摘されています。
なお、2017年の公演数と動員数を地域別にみると、当然ながら「関東」と「近畿」の比率が高くなっています。特に、動員数では「関東」が全体の半数を占めています。私たちが住む新潟県の公演数については541回と全体の1.7%となっています。ほぼ人口規模並みの水準といえるでしょう。
ライブ・音楽会への行動者率は…
以上のような統計をみると、CDや音楽配信などの売上よりもライブの売上・公演数・動員数に勢いが感じられます。そこで、ライブに関して、もう少し詳しくみていきたいと思います。具体的には、性別・年代別の動向を確認するため、総務省『社会基本調査』の結果をご紹介いたします。なお、総務省『社会基本調査』の概要については、「スポーツ観戦が盛んな地域は?」の投稿をご覧下さい。
2016年の調査結果をみると、過去1年間に「音楽会などによる音楽鑑賞」をした人の割合(行動率)はクラシック音楽で10.1%、ポピュラー音楽・歌謡曲で13.7%となっています。長期的にみると、概ね増加傾向で推移しており、先ほどのライブの動員数などと同じような傾向がうかがわれます。ただし、総務省『社会基本調査』については無料の音楽会なども含まれている点には注意が必要です。
この行動者率を性別・年代別にみると、各年代とも男性よりも女性で高くなっています。特に「音楽会などによるポピュラー音楽・歌謡曲鑑賞」については、女性の20-24歳前後と、50-54歳前後で行動率が高くなっています。
さらに、行動者率を地域別にみると、以下の表のとおりとなります。概ね、「関東」と「近畿」地域の行動者率が高くなっています。なお、私たちが住む新潟県は「音楽会などによるポピュラー音楽・歌謡曲鑑賞」で27位、「音楽会などによるクラシック音楽鑑賞」で36位にとどっています。
感想
統計で確認してみると、ライブ市場の勢いには、やや驚かせられる結果となりました。
出かけやすい季節ですので、皆さんも、お近くのライブに足を運んでみてはいかがでしょうか。
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一般社団団法人 日本レコード協会の統計と、一般社団法人 コンサートプロモーターズ協会(ACPC)の統計を活用させていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。