最高の学習方法

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報11月号」では、 新しい知識やスキルなどの習得度合いを高める方法について、ご寄稿いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

学習方法

教えることが学びの近道


ある経営者の方がこう言っていました。

「本を読んでいて良い言葉だな、素敵な格言だな、心に響く文章だなと思ったら、これをすぐに周りの人に言ってまわります。何人にも伝えます。するとその言葉を自然に覚えられるのです」

この話を聞いて私は30代前半に都内の専門学校に通ってパソコンのインストラクターの資格を取ったときのことを思い出しました。

インストラクターの資格試験に合格するとすぐに知り合いが経営するパソコン教室から「インストラクターとして生徒を指導して欲しい」と頼まれました。

その瞬間に私は「よし、いよいよインストラクターデビューだ!」とは思いませんでした。私はこう思ったのです。

「はたして私に教えることができるだろうか?」

専門学校に通い、勉強して、知識と操作方法を学び、試験に合格したことは事実です。でも、とても不安でした。「勉強したことを全部覚えているだろうか?知らないことを聞かれたらどうしよう?私の知識だけで対応できるだろうか?」

その後、何度か知人の教室で生徒に指導をして、個人レッスンもするようになり、自分でパソコン教室を開校しました。

その間にアプリケーションのバージョンも変わり、パソコンのOSも変わり、操作方法も変わっていきました。その都度、新しい操作方法を覚えていったわけですが、その間、知識と操作方法の習得に一番役立った勉強法は本を読んだり、動画を観たり、教材で学ぶことではありませんでした。

最も勉強法として役立ったものは『教えること』でした。座学で知識として学んだことを相手に教えることにより自分の知識が全体として体系化されました。

また、相手から質問を受けると、そこで新しい操作方法に関してテキストで学び、そしてそれを何人もの人に教え、さらに質問を受けるとまた調べる。そして調べたことをまた何人もの人に教える…この繰り返しが一番自分自身の勉強になりました。

教えることが自分の一番の学びになったのです。

そのため「どうも自分は人前でのスピーチが苦手です。どうしたらよいでしょう?」「私はオンラインに疎いのですがどうすれば詳しくなれますか?」「コミュニケーションが下手なのです。どうすればよいでしょう?」という相談を受けると「ではそのテーマであなたが周りの人に教える場を作ってください」と答えることが多くあります。教えることが一番自分のためになるからです。

そして、そのテーマについて学び、知識を得て、人に教えて、体系的な理解が深まると、自分では苦手だと思っていたことが、案外、自分で自分に壁を作っていただけだということに気がつく人も少なくありません。

スピーチが苦手だと自分で思っているから積極的に話し方について学ばないし、練習もしないし、人前で話す機会を避けるのでますます苦手意識が高まります。オンラインやコミュニケーションに対する苦手意識も同じです。

実際に私の仲間内の勉強会に参加していた男性で営業に苦手意識を持っていた人がいます。その人に「お客様に喜ばれる営業活動」をテーマにミニセミナーを開催してもらったことがあります。

元々真面目な性格の方でしたが営業の役割とは何か、営業マンの心得とはどんなものか、営業のスキルにはどんなものがあるかをちゃんと調べて、まとめて、皆の前で講師を務めました。その後、彼は自分で学んだことを仕事で生かして、嬉々として営業に出かけるようになっています。

おそらく知識がインプットされるとともに教える側に立つことによって本人の意識も変わるのだと思います。

(中略)

特に今年は社会が大きく変化し、その変化に対応して新しい知識やスキル、考え方の修得が必要な年になっています。

ぜひ、あなたも何か新しいテーマにチャレンジする際には教えることによって、その修得の度合いを深め、スピードを速めてみてはいかがでしょう。

「人は教えることによって、最もよく学ぶ。」
ルキウス・アンナエウス・セネカ(ローマ帝国時代の哲学者)
 


酒井とし夫(2020)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第56回」『センター月報』2020年11月号

感想

酒井先生がご紹介した営業担当者のように。自分の苦手分野について社内外の講師を引き受けると、苦手克服につながるケースもあるようです。このように成長のためには、あえて自分自身を追い込むことも時には必要なのかもしれません。