3分でわかる!新潟県の地価調査(2021)

新潟社会リサーチセンターの近です。

新潟県が2021年9月に県内の地価調査地点530地点の地価調査を発表しました。「地価調査」とは、都道府県が毎年7月1日現在で基準地の価格調査を実施し、その結果を公表しているものです。前年の調査(基準日:20年7月1日。以下、前年調査)は、県内地価の下落幅が9年ぶりに拡大するなど、新型ウイルスの影響による景気悪化や先行き不透明感が反映される結果となりました。

今年の調査では、新型ウイルス感染拡大から1年以上が経過し、景気が持ち直しに向かうなか、地価がどのように変動しているかが注目されました。本日はこの地価調査の結果についてご紹介します。

 

人混みの写真

県内の地価は26年連続の下落。しかし下落幅は縮小

21年の新潟県の地価は、全用途平均で▲1.1%と、1996年以来26年連続の下落となりました。ただし、下落幅は前年の▲1.2%から2年ぶりに縮小しています。また、価格が上昇した地点(全用途)は63地点と、前年調査の51地点から増加しました。新型ウイルス感染拡大から1年以上が経過し、経済活動が段階的に再開するなか、地価の下落に歯止めがかかりつつあることが示されました。

※住宅地、商業地、工業地、宅地見込地、林地の合計

【用途別平均変動率】 (( )内は前年値)

(資料)新潟県「令和3年度新潟県地価調査結果の概要について」

前年調査と比べて下落幅が縮小した要因は?

地価の下落幅が縮小した要因としては、以下のようなことが考えられます。まずは、前年と比べて国内及び県内経済が持ち直していることです。第二に、不動産取引が正常化したことが挙げられます。前年調査の基準日は、全国で発出された緊急事態宣言の解除後(緊急事態宣言は、県内で5/14に解除され、すべての都道府県で5/25に解除となった)、間もない時期だったため、不動産取引が著しく停滞していました。その後、経済活動が再開され、不動産売買が正常化したことで需給動向が適正に反映されたことも要因の一つと思われます。

なお、ワクチン接種の進捗によって、さらに経済活動が活発化するとの先行きの期待もあり、地価の下落は落ち着きつつあるとみられます。

地価の上昇地点は新潟市に集中

前年との変動率(全用途)を地域別にみてみます。価格が上昇した地点は前年調査に比べて増加しているものの、30市町村のうち、前年比上昇となったのは2市町村、下落幅が縮小したのは7市町村にとどまっていいます。その一方で、下落幅が拡大した市町村は13市町村となっており、県内全域にわたって地価の下落が一服しているとは言えない状況です。

【市区町村別対前年変動率(全用途)】

(単位:地点、%)

(資料)新潟県「令和3年度新潟県地価調査のあらまし」

また、上昇した63地点のうち、58地点が新潟市となっており、地価の上昇地点は新潟市に集中していることがわかります。

新潟市の上昇地点を用途別でみると、住宅地では中央区、東区、江南区の上昇率が高くなっています。利便性の観点から、新潟駅周辺の中央区や新潟駅への交通アクセスが良い東区、江南区などのエリアに対するニーズは根強いようです。特に中央区は、2020年頃からビルや商業施設からマンションへの建て替えが進められており、マンション業者も同地域に居住を希望する層が多いと見込んでいることがうかがえます。

商業地をみると、変動率上位地点には新潟駅から万代地区を中心に、中央区が占めています。万代シティのリニューアル工事や大型マンションが建設中の万代地区の地価が大きく上昇しており、集客や収益の向上への期待が高まっています。また、23年度中に新潟駅の南北が直接通路でつなげられる予定となっており、バスや人の往来が活発化すると予想されることなどから、新潟駅南地区の堅調な需要も続いています。新型ウイルスの影響により飲食業、宿泊業などサービス業を中心に厳しい状況が続いていますが、再開発事業による店舗の収益性向上や集客力への期待感から、新潟市内の商業地は地価の持ち直しがみられています。

新潟市中心部はビルの建て替えが進む可能性も

新潟市では新潟駅、万代、古町を結ぶ都心軸を「にいがた2㎞」と名付け、市民に関心をもってもらい、民間投資につなげるような取り組みが進められています。21年9月には、新潟駅から古町地区までのエリアが「都市再生緊急整備地域」 に指定されました。これにより、老朽化したビルの建て替えが進むと予想されます。これまでビルの老朽化を理由に「新潟での拠点設置が難しい」との県外企業の声もあったことから、今後は企業誘致やサテライトオフィスの新設の動きが広がることが期待されます。

古町地区は、新潟駅や万代地区に比べて地価の持ち直しに遅れがみられていますが、「新潟2キロ」 プロジェクトや 「都市再生緊急整備地域」 指定によるビルの建て替えなどにより、地価の持ち直しが波及していくかが注目されます。

※ 国によって指定される地域であり、指定地域内で都市計画決定をした事業については、容積率の緩和など様々な特例が活用可能となる。地域指定により、地方都市に質の高い投資を呼び込み、都市開発を促進する効果が見込まれます。

製造業の業績改善を背景に、工業地の地価は前年比横ばいまで回復

世界的な経済回復を背景とした受注増加をうけて、他の業種に先駆けて製造業の業績が改善しています。そのような状況から、県内の工業地の地価は前年比0.0%(前回調査:同▲0.3%)と横ばいで推移し、住宅地の同▲1.2%、商業地の同▲1.3%に比べて、地価の戻りが大きくなっています。

業績改善をうけて、設備投資を再開する動きや増加する受注に対応するため工場を新設する動きもみられます。今後、工業地へのニーズは持ち直していくことが予想され、地価の回復が見込まれます。

また、全国的にみても工業地は上昇傾向にあります。特に、巣ごもり需要の増加に伴ってECサイトでの販売が大きく伸びていることなどから、物流施設の建設(予定)地域の地価上昇が顕著となっています。

県内では、 高速道路が近いことに加え、港を利用した輸出入が可能なことから、東港に隣接した工業地域で物流施設の建設が増加しており、同地域に属する聖籠町の工業地点は上昇が続いています。

まとめ

今回の調査をみると、地価の下落が続いているものの、下落幅は縮小しており、 大幅な下落は一服しつつあるとの結果となりました。ただし、中長期的にみると、新潟県内の人口は23年連続して減少しており、人口減少、少子高齢化が進む本県において、地価の大幅な上昇は期待しづらいと考えられます。

一方、新型ウイルスの影響から、東京圏在住者の地方移住への関心が高いとの内閣府の調査結果も発表されており、 地方で暮らすニーズは高まっていることがうかがえます。

県内では、新潟県が移住希望者への情報発信や補助金交付などに力を入れているほか、各自治体や民間企業でもワーケーションの実施やテレワークができるコワーキングスペース、サテライトオフィスの設置など多様な働き方に対応する取り組みが広がっています。県内への移住を促し、さらに定住に繋げていくためには、官民一体となった「にぎわい創出」や働きやすい環境作り、子育て世代への支援充実により、「選ばれるまち」にしていくことが必要です。地価の持ち直しは、その結果としてみえてくると考えられます。