「首都圏等IT関連企業の県内進出の動き」と題した調査レポートをまとめました

近年、首都圏のIT関連企業の県内進出が増加しています。背景には、人口減少対策の一環として県が市町村と連携し誘致に力を入れていることに加え、企業の
間でも人材確保難や自然災害などに備えた拠点分散の必要性から、地方に進出するニーズが高まっていることが挙げられます。

また、新型ウイルスの感染拡大を契機に首都圏の過密リスクが意識され、リモー
トワークの拡大など新たな働き方が求められていることも追い風となっています。

そこで、誘致により県内に進出した企業の事例や、進出企業のニーズ、今後の誘致のポイントなどについてまとめた調査レポートの一部をご紹介したいと思います。

 

ネット インターネット デジタル it

企業誘致の背景

24年続く人口の社会減

県が市町村と連携してIT関連企業の誘致に力を入れている背景には、人口の県外流出、特に就職期の年齢層の流出に歯止めがかからないという問題があります。

県の「人口移動調査」で県外との転出入の状況をみると、バブル経済崩壊後の1993年から96年にかけては県外からの転入者が県外への転出者を上回る社会増(転入超過)に転じていたものの、97年からは24年連続で県外への転出者が県外からの転入者を上回る社会減(転出超過)の状況が続いています(図表1)。

社会増減

年齢別では「20 ~ 24歳」の転出超過が大きく、そのほとんどが就職を理由としたものである。また、直近5年間は「20 ~ 24歳」の県外への流出が拡大傾向にあることがわかります(図表2)。

年齢別転出入

県内の大学・専門学校等の県内就職率は5割台まで低下

「20 ~ 24歳」の就職を理由とした県外への流出拡大は、県内の大学・専門学校等の卒業後の進路にも表れています。

県内の大学・専門学校等の新規卒業者の県内就職率の動きをみると、2012年3月卒は69.8%と7割近くあったものの、翌年以降、年を追うごとに低下し、20年3月卒は55.2%にまで落ち込んでいます(図表3)。

ただし、21年3月卒は新型ウイルスの影響で県外での就職活動が制約され、県内企業が就職先として見直されたことなどから、県内就職率は上昇に転じています(図表3)。

新潟県内の大学等の県内就職率

IT関連企業の誘致実績

IT関連企業に的を絞った誘致施策を展開

人口の社会減が続く状況を受けて、県は若者の県内定着や県外からのU・Iターンを促進するため、市町村と連携してIT関連企業のオフィス誘致に力を入れています。

県がIT関連企業に的を絞るのは、就職先として魅力を感じている若者が多いことや、首都圏での人材確保難を背景に企業側に地方進出のニーズがあること、また、社会のデジタル化が進むなか、付加価値の高い成長産業として県内にIT関連産業の集積を図りたいことなどが理由として挙げられます。

県は2018年度からオフィス賃料や人件費、人材確保費用などを支援する補助金制度を充実させ、19年度からは県内の市町村とともに首都圏のIT企業向けに立地セミナーを開催しています。また、東京事務所のスタッフによる企業訪問も展開するなど積極的に取り組んでいます。

2020年度は過去最多の12社が県内に進出

このような施策が奏功し、それまで毎年1社程度だった県のIT関連企業の誘致実績は、2018年度が6社、19年度が4社となり、20年度は、県によるオフィス賃料の補助率が2割から6割へと大幅に拡充されたこともあり、過去最多となる12社に上っています(図表4)。

新潟県のIT関連企業の誘致実績

バックオフィス業務が多い県内拠点

2016年度から20年度に県と市町村が連携して誘致した企業をみると、県内拠点の業務内容はシステム開発、インターネット広告の運用・管理、コールセンター業務の受託など様々ですが、総じて本社業務のバックオフィス的な機能を担うケースが多くなっといます。

また、進出地では新潟市が圧倒的に多くなっています。新潟市への進出が多い理由は、労働力人口(約40万人)や大学・専門学校等の学生数(約3万人)が多く、人材確保の面で有利であることや、進出企業が求めるオフィス環境が整っていることが挙げられます。加えて、新潟市独自のオフィス賃料に係る補助金が2020年度から県の補助金と併用可能となり、進出企業にとってメリットが高まったことも大きいといえます。

進出企業25社の雇用計画は1,660人、2021年7月現在で約4割の雇用が実現

進出企業の県内での雇用状況は、新潟県産業立地課によると、2016年度から20年度に進出した25社の合計で653人(うち女性457人)となっています(2021年7月現在)。このうち新卒は53人(うち女性39人)、U・Iターンは54人(うち女性10人)となっています。

進出企業は、進出時に県や市に対して3年から7年程度の複数年にわたる雇用計画を提出しています。同計画では25社の合計で1,660人となっていること
から、既に約4割の雇用が実現していることになります。

県内進出企業の事例

県内に進出した企業は、なぜ新潟に進出したのでしょうか。進出企業のうち業態の異なる3社の事例を紹介しています。

まとめ

本レポートで紹介した企業の事例を踏まえ、進出企業のニーズと県及び県内市町村の今後の誘致のポイントについて以下のように整理しました。

  • 優秀な人材確保が可能なことを訴求
  • 災害対策としての拠点性を訴求
  • 進出企業と地元企業との交流・協業を促進

通信環境の整備により働く場所の制約が少なくなってきているなか、新型ウイルスの感染拡大を契機に企業の地方進出の機運が高まっています。

企業誘致では新潟の魅力を積極的にアピールするとともに、誘致後は進出企業と地元企業との連携を強めることで、地域に新たな付加価値が生まれることを期待したいと思います。

詳しくは、Monthly2021年10月号「首都圏等IT関連企業の県内進出の動き」をご覧ください。

江口 知章(えぐち ともあき)

江口 知章(えぐち ともあき)

新潟経済社会リサーチセンター研究部長。主な担当は、観光地の活性化支援です。料理メニューの開発、着地型旅行商品の企画、さらに旅館の方々のウェブサイト、チラシ、POP広告の作成などもお手伝いしております。