県内企業における健康経営の取り組みについてまとめました

新潟経済社会リサーチセンターの江口大暁です。

従業員などと一緒に健康の保持や増進に取り組むことで、生産性の向上や企業のイメージアップ、将来的な業績向上などを目指す「健康経営(注1)」の取り組みが注目を集めています。

(注1)健康経営はNPO法人健康経営研究会の登録商標です

そこで当センターでは健康経営の取り組み状況を把握するため、県内企業を対象にアンケート調査を実施し、「センター月報3月号」にその結果をまとめました。

本レポートでは、健康経営の現状について改めて整理するとともに、すでに健康経営に取り組んでいる県内企業の事例を踏まえたうえで、健康経営に取り組むためのポイントを整理しましたので、本日はその概要をご紹介します。詳しくは「センター月報2020年6月号 県内企業における健康経営の取り組み」をご覧ください。

 

健康食品

健康経営とは

経済産業省によると、健康経営とは「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践すること」とされています。

企業にとって、健康経営という考えに基づき従業員等の健康の保持や増進を行なうことは、労働生産性の向上、企業のイメージ向上、さらには医療費の適正化などにつながるとされています。そしてこうした取り組みに必要な経費は単なる「コスト」でなく、将来に向けた「投資」であると捉えられています。

健康経営が注目される背景

①少子高齢化の進展と就業者の高年齢化

日本の将来推計人口をみると、年少人口(0〜14歳)と生産年齢人口(15~64歳)が減少する一方で、老年人口(65歳以上)の高齢者が増加すると予測されています。こうしたなか、企業の定年延長や再雇用制度等の推進により、60歳以上の就業者数が年々増加しており、2019年では就業者全体の約2割を占め、就業者の高年齢化が進んでいます。

日本の将来推計人口など

②定期健康診断の有所見率の上昇

企業が労働安全衛生法で義務付けられている定期健康診断における有所見率(健診の結果、異常の所見があると診断された労働者の割合)は上昇傾向にあります。新潟県は全国を下回っていましたが、近年では全国と同水準にまで上昇傾向にあります。背景としては、労働形態の多様化によるストレスの増加や、働く人の高年齢化などが要因と考えられ、就業者の健康問題による事業継続のリスクが懸念されています。

定期健康診断の有所見率の推移

③逼迫している労働市場での採用活動

経済産業省の調査をみると、就活生がどのような企業に就職したいかについては(複数回答)「福利厚生が充実している」(44.2%)や「従業員の健康や働き方に配慮している」(43.8%)の回答割合がともに4割を超え、高い回答率となっています。経営上の問題点として人材不足があげられるなか、従業員を採用するうえで健康経営に取り組んでいるかどうかが一つの基準となっていることがみてとれます。

健康経営の認知度

当センター「従業員などの健康保持・増進に向けた取り組みに関するアンケート調査」(2019年11月実施)で、県内企業における健康経営の認知度について県内企業に尋ねたところ、健康経営を理解している割合は約3割にとどまっています。

健康経営に取り組んでいる企業の推移

特に優良な健康経営を実践している大企業や中小企業等の法人を顕彰する制度として「健康経営優良法人制度」があります。これは、経済産業省が設計し、日本健康会議(注2)が認定をしているものです。

(注2)日本健康会議とは、経済団体・保険者・自治体・医療関係団体など民間組織が連携し、厚生労働省・経済産業省の協力のもと、国民の健康寿命の延伸と、医療費適正化に向けて、実効的な活動を行なうことを目的とした団体です

新潟県の「健康経営優良法人2020」の中小規模法人部門をみると、認定数は70法人と前年度の36法人に比べ、約2倍となっています(2020年5月1日現在)。

また、新潟県も従業員等の健康づくりに積極的に取り組む企業等を「にいがた健康経営推進企業」として登録し、その取り組みを支援しています。「にいがた健康経営推進企業登録事業」は2019年7月より「元気いきいき健康企業登録事業」と「グッド!スポーツカンパニー(新潟県スポーツ推進企業)認定制度」を統合し、再構築したものであるため、単純に過去の登録数とは比較ができないものの、2019年度の認定数は493事業所となっており、この4年間で大きく増加しています。

「にいがた健康経営推進企業」の登録事業所数の推移

取り組みの事例

健康経営への取り組みが増えつつあるなか、積極的に健康経営に取り組んでいる県内企業について、以下の3社を紹介しています。

  • 株式会社 高舘組(上越市)─女性中心の健康経営推進チームによる健康意識の醸成─
  • 大島電気 株式会社(十日町市)─専門の委員会で従業員の健康管理を徹底─
  • 株式会社 サカタ製作所(長岡市)─健康をテーマにした講演会を開催し、従業員の健康への啓もうを実施─

取り組みのポイント

紹介した事例を踏まえ、健康経営を取り組むうえでのポイントについて以下の3つにまとめました。

①トップダウンによる全社的な取り組み

②健康経営の可視化

③外部資源の活用と工夫

おわりに

今回の調査を通じて、健康経営は効果がすぐにみえにくいものの、政府が推し進めている「働き方改革」の一環として取り組む企業が増えてきていることがわかりました。 さらに足元では、新型ウイルス感染症の拡大によって、従業員の健康は企業の事業継続にとってより切実なものとなっています。

今後は、企業が持続的に成長するための経営戦略の一環として健康経営への取り組みがよりいっそう求められそうです。