フィードバックのやり方で悩んだ時には…

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

年度末を終えて人事評価の時期を迎えているビジネスマンの方々も多いと思われます。このうち、評価者となっている上司の方々の中には非評価者である部下に対し、評価結果を伝えたり、育成のための面接をしたりする場面があるのではないでしょうか。

私もその一人なのですが、面談相手に上手くフィードバックするのは、なかなか難しいと日頃から感じています。そこで、フィードバックする際に参考となる調査や書籍について、本日はご紹介したいと思います。

 

面接 面談 説明

フィードバックのやり方次第で働きやすさの向上につながる可能性も…

先日、従業員満足度調査(ES調査) の資料をまとめるために、 厚生労働省『令和元年版 労働経済の分析』(以下『令和元年版 労働経済白書』)を確認していると、次のような調査結果を目にしました¹。

フィードバックの実施有無と頻度

企業に勤務する正社員 ( 1万6,752件:有効回収率16.4%) を対象に、「働きやすさに対して満足感を感じている」かどうかを尋ねた結果をみると、「いつも感じる」「よく感じる」と回答した人を『働きやすいと感じている人』とし、「めったに感じない」「全く感じない」と回答した人を『働きにくいと感じている人』とした場合、上司からのフィードバックが実施されているケースでは、 『働きやすいと感じている人』 の割合が『働きにくいと感じている人 』に比べて高くなっています²。

一方、フィードバックが全く実施されないケースでは、『働きにくいと感じている人』の割合の方が『働きやすいと感じている人』よりも高くなっています。

なお、フィードバックの頻度が「半年に1度」から「週に1度」の間では、『働きやすいと感じている人』の割合に大きな変化はみられませんでしたので、やり方にもよるのでしょうが、「半年に1度」実施すれば、相応の働きやすさにつながるのかもしれません。

 

フィードバックの頻度と働きやすさ

 

フィードバックの効果の有無

また、上司からのフィードバックが実施された正社員のうち、フィードバックが「とても効果的であった」と「どちらかといえば効果的であった」の回答を合わせた『 どちらかといえば効果があったと判断 』された場合では、 『働きやすいと感じている人』 の割合 が『働きにくいと感じている人 』に比べて高くなっています。

これに対して、 上司からのフィードバックが「どちらかといえば効果がなかった」 「効果がなかった」 の回答を合わせた『フィードバックの効果がなかったと判断』された場合では、 『働きにくいと感じている人』の割合の方が『働きやすいと感じている人』に比べて高くなっています。

したがって、 効果的なフィードバックがおこなわれれば、働きやすさににつながる可能性がうかがわれる結果となっています。

フィードバックの効果と働きやすさ

フィードバックが効果的だった理由・効果的でなかった理由

さらに、上司からの『フィードバックの効果があったと判断』した人に対して、効果的であった理由を尋ねると(複数回答)、「今後の行動に関するアドバイスがあった」の割合が63.0%と最も高く、以下「具体的な行動について誉められた」 (33.6%)、「具体的な行動について注意された」(32.4%)などが続いています。

フィードバックが効果的であった理由

一方、上司からの 『フィードバックの効果がなかったと判断』した人に対して、効果的でなかった理由を尋ねると(複数回答)、「フィールドバックの内容が充実していない」の割合が44.6%、「今後の行動に関するアドバイスがなく、どうすればよいか不明」が 39.2%となり、この2項目が特に高くなっています。

そのため、フィードバックについては、今後の行動に関するアドバイスや具体的な行動に対する賞賛・注意などがキーポイントとなっているようです。

フィードバックが効果的でなかった理由

中原淳『フィードバック入門』の感想

今ほど、効果的なフィードバックをするには、今後の行動に関するアドバイスや具体的な行動にフォーカスすることが大切であるとの調査結果をご紹介しましたが、当たり前の面があります。

なぜならば、中原淳(2016年)『フィードバック入門』PHP新書 によると、

フィードバックとは、

1.【情報通知】

たとえ耳の痛いことであっても、部下のパフォーマンス等に対して情報や結果をちゃんと通知すること(現状を把握し、向き合うことの支援)

2.【立て直し】

部下が自己のパフォーマンス等を認識し、自らの業務や行動を振り返り、今後の行動計画をたてる支援を行うこと(振り返りと、アクションプランづくりの支援)

の二つの要素から成立します。

これら二つの働きかけを通して、部下の成長を促進するのがフィードバックです。

このうち1の「情報通知」はどちらかというと「ティーチング(一方向的な情報伝達)」に近いものがあり、2の「立て直し」は「コーチング(振り返り)」に近いものがあります。


中原淳(2016年)『フィードバック入門』PHPビジネス新書

と説明されているからです。さらに同書では、

相手に刺さるようなフィードバックをするためには「できるだけ具体的に相手の問題行動の事実を指摘すること」が必要



中原淳(2016年)『フィードバック入門』PHPビジネス新書

とも指摘しています。したがって、 効果的なフィードバックには、今後のアドバイスと 具体性を意識することが不可欠なのかもしれません。

なお、同書にはフィトーバックの実際の進め方やチェックポイント、フィードバックにまつわるTips(コツ)、面談相手のタイプ別応対方法なども記載されているため、興味のある方は手に取ってみてはいかがでしょうか。特にフィードバックに苦手意識をある方には、「フィードバック前には必ず脳内予行演習」「嫌われても仕方がないという覚悟を持とう」といったTips(コツ)は参考となるでしょう。

まとめ

もちろん、働きやすさについてはフィードバック以外の要因があるほか、働きやすい職場だからこそフィードバックも実施され、その効果も高いケースもあり、必ずしも因果関係を表している訳ではない点には注意が必要です。それでも今後のアドバイスと具体性を意識しながらフィードバックに臨むことで、フィードバックの効果が上がるきっかけになるでは?と感じています。

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¹ 調査結果については、以下の書籍・調査を参考とさせていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

厚生労働省編(2019年)『令和元年版 労働経済白書』 https://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/roudou/18/18-1.html
<2021年3月16日アクセス>

労働政策研究・研修機構(2020年)
「人手不足等をめぐる現状と働き方等に関する調査(企業調査・労働者調査)」(2019年9月18日)
https://www.jil.go.jp/institute/research/2020/193.html
<2021年3月16日アクセス>

²  グラフについては、「パワーポイントの品質と生産性を向上させるデザイン・テンプレート(https://ppt.design4u.jp/template/)」を加工して作成いたしました。また、下記の宮城 信一 (2019年)『「デザイン」の力で人を動かす!プレゼン資料作成「超」授業 プレゼン上手に明日からなれる』SBクリエイティブ も参考とさせていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。グラフやPowerPointを作成する際にデザイン面で悩まれている方には、とても良いアドバイスが記載されています。