県内の有効求人倍率は急速に低下。雇用状況は悪化傾向に

新潟経済社会リサーチセンターの近です。

7月後半から3月決算企業の2020年4-6月期の決算発表が本格化しています。新型ウイルスの影響によって売上高が減少するなど、多くの企業から厳しい決算内容が発表されています。こうした企業の収益悪化をうけて、希望退職を募る、来年度の新卒採用を見送る、といった措置をとる企業も出てきており、これまで「人手不足」とされていた雇用環境に変化が生じてきています。

そこで本日は、統計資料や当センターで実施したアンケート調査の結果などから、県内の雇用状況についてみていきたいと思います。

 

有効求人倍率は1倍を超えているものの、急速に悪化

新潟労働局から発表された6月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月から0.03ポイント低下し1.18倍となりました(図表1)。有効求人倍率とは、公共職業安定所(ハローワーク)に申し込まれている求職者数に対する求人数の割合です。

(図表1)新潟県の有効求人倍率(全数・季節調整済)の推移

つまり、有効求人倍率が1.18倍というのは、仕事を探している人(求職者)100人に対して、118人分の仕事(求人)がある状態なので、現状では求職者以上の求人のニーズがある状態となっています。

ただし、有効求人倍率は1.00倍を超えているものの、前月の値と比べて6カ月連続で低下しており、今年に入ってからの低下幅は0.35ポイント(20年1月:1.53倍→6月:1.18倍)となり、急速に悪化しています。

直近で雇用が急激に悪化した局面といえば、リーマン・ショック前後が挙げられます。有効求人倍率は08年4月(0.97倍)に1倍を割り込み、1年3カ月後の09年7月には0.44倍まで低下しました。これ以降も低水準での推移が続き、13年8月に1 倍の水準を回復するまで4年以上を要しました。

足元の有効求人倍率をみると大幅な低下が続いていることに加え、低下のスピードが急速であることなどから、リーマン・ショック前後のような雇用悪化に陥ることが懸念されています。

新規求人数は大幅な減少が続く

雇用状況について、もう少し詳しくみていきたいと思います。まず求人側からです。

雇用の先行指標である新規求人数は、20年1月から前年比10.0%以上の減少が続いています。特に4月(前年比27.5%)と5月(同▲31.1%)の減少幅は大きくなっており、新型ウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言下で企業活動が大きく停滞していたことがうかがえます。

業種別にみると、製造業は19年2月から17カ月連続で低下しています。要因としては、18年秋ごろから激化した米中貿易摩擦などにより海外からの受注が減少し、製造業の業況感が悪化したことから新規雇用に慎重になったことが挙げられます。

加えて今年に入り、宿泊業・飲食サービス業の新規求人数が大幅に減少しています。これは今冬の記録的な暖冬少雪を背景としたスキー場などの来場客減少に伴い、関連する宿泊施設や飲食店からの求人が大きく落ち込んだためです。さらに、宿泊業・飲食サービス業の新規求人数は4月、5月ともに前年と比べて60%以上の減少となりました。新型ウイルスの影響により、緊急事態宣言中は休業や営業時間の短縮を実施した店舗が多くみられたことが要因とみられます。営業が再開され、6月の新規求人数は前年割れが続いているものの、減少幅は縮小しています。

新規求職者数は事業主都合による離職者が増加

次に求職者側をみていきましょう。

新規求職者数は今年に入り、やや減少傾向にありました。新型ウイルスの影響により、外出を自粛する動きが広がったことから、求職活動を控えていたことが一因だったようです。緊急事態宣言が解除され、徐々に経済活動が再開されてきたことから、6月の求職者数は6カ月ぶりに前年を上回っています。

新規求職者(パートを除く常用)を態様別にみると、在職者の求職者は減少している一方、事業主都合による離職者の求職者数が増加しています。企業整備に伴う離職者数が増加傾向にあるなか、本人の意思に基づかない離職者が増えていることには注意が必要です。

企業の雇用の不足感は急速に緩和

当センターが20年5月に実施した企業動向調査によると、企業の雇用BSI(「過剰」-「不足」)は前回調査から19.3ポイント上昇し、▲20.7となりました(図表2)。14年上期(▲19.1)以来6年ぶりの水準となり、雇用の不足感は急速に和らいでいます。

回答企業からは、「新型ウイルスの収束が見込めないなかでは雇用の維持も難しくなる可能性がある」といった先行きの雇用について不安視する声も聞かれました。

(図表2)雇用BSI(業種別)

まとめ

県内では製造業を中心として新規雇用にやや慎重な姿勢が広がっていたなか、今冬の記録的な暖冬少雪に続き、新型ウイルスの影響により幅広い業種で雇用状況が悪化しています。経済活動の再開により、企業の事業環境は4-5月を底に持ち直しているとの声も聞かれるものの、ここにきて感染者が再び増加傾向にあるなかで先行きは不透明な状況となっており、新規雇用のみならず現従業員の雇用が維持されるか懸念されるところです。雇用状況の悪化は消費マインドの低下を招き、個人消費や住宅投資など影響は経済全体に波及することから、今後の雇用状況を注目していきたいと思います。