移住は定住が前提でない?

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報3月号」では、移住者の受け入れに対する考え方について、ご寄稿いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

居住と移住

地方において「移住」は「定住」が前提となっているという点である。これが、地方創生が進まず、人材不足が解決しないひとつの理由ではないかと思っている。もちろん、信頼を構築するには時間が必要だ。地方のコミュニティは「結」のような助け合いや共同作業がベースとなっているため、信頼を得ることは最も大切であり、そのためには定住が求められるという事情も理解できる。
 
しかし、「移住」は「定住」前提ではないという考え方や仕組みを導入する時代になってきたと思う。移住は人生のワンステップであり、もっと自由な生き方、住み方、働き方を認める世のなかにしていく必要がある。そうした時代感覚をいかに日本に根づかせていくかがこれからの時代の課題だ。
(中略)
少し前の感覚なら、こうしたシェアハウスは、長く住み続けることを前提としていないためかネガティブな評価が多かったと思う。しかし、ミニマリスト(所有しない暮らしをする人々)と呼ばれる新しい世代には評価が高く、
(中略)
数々のメディアでも多く紹介されている。
(中略)
シェアハウス、ゲストハウスと呼ばれる「居住と宿泊の混在型コミュニティ」の存在が、新しい時代の地方創生に不可欠な要素になってきたと感じている。宿泊業も1泊型の宿泊客だけでは生きていけない時代が近づいている。半居住型の需要をいかに創造していくか、移住と宿泊の中間需要が必要になってきた。
 
「2.「卒業」は4年が前提ではない」
 
宿泊業での人手不足と高い離職率が問題になることがよくある。これには様々な理由があると思うが、なかでも宿泊業は定住者と移住者が職場で混在するミニ・コミュニティという性質があるという理由もあるだろう。定住者は、その職場のやり方やルールを守ろうとする一方、移住者は、不合理な面は改革をしようと考える点で地域コミュニティと似ている。移住者の典型は外国人労働者等であるが、こうした現代の移住労働者は採用コストがかかるうえ、職場内のコミュニティに波風を立てることが多いため、経営者も定住者を求めようとする。しかし、定住者だけでは改革が進まず、労働生産性も高まらない。そもそも、定住人口が年々減少している。その葛藤の一方で移住促進が進まずに人手不足を生んでいないだろうか。
 
移住労働者には、学生インターンシップやアルバイトも含まれる。私のゼミ学生も毎年宿泊業にお世話になっているが、こうした現場の葛藤を克明に教えてくれる。その一方で、よい人間関係を築くことも多く、現場で知り合った方々と一生のつながりを得ることも多い。なかには、外国と日本を行ききしながら働く移住労働者の方がいて、そうした方に感化され、またそうした方を頼り、海外留学やワーキングホリデーのために休学をする学生も毎年のようにいる。宿泊業という移住労働者を受け入れるプラットフォームが実は人生を変えるきっかけとなっているのだ。
 
そしていざ海外で働くようになり、移住労働者として働くようになると、移住者の受け入れが日本より柔軟であるためか居心地がよくなり、一人として弱音をはかずに、人間としてぐんと成長する。親御さんは、なんとか4年で卒業し、日本で安定した職場で定職を得て、マイホームを買い定住することを夢みているかもしれないが、そうした生き方や人生がこれから正しいとは限らないし、あえて申せば、間違っていると思う。これからの時代に生きる力を得られるなら、教室だけで得たわずかの知識だけ持って卒業するのではなく、5年や6年をかけてでも、国内外の実社会で揉まれて育つほうがはるかに将来のためになるだろう。そうした意味で、今や大学は4年で卒業が前提ではない。
 
井門隆夫(2020)「観光イノベーションで地域を元気に 第35回」『センター月報』2020年3月号

感想

人口の減少が進む地域では、移住者をどうやって増やすか?ということに力が入れられています。

しかし、そもそも「移住者」へのイメージを変える必要がありそうですし、受入方法についても従来のやり方から変えていかなければならないようです。