高齢ドライバーの運転免許自主返納が増加

新潟経済社会リサーチセンターの唐橋です。

「運転に自信がなくなった」「家族から運転が心配だと言われた」などを理由に、自ら運転免許の取り消しを行なう自主返納が増加傾向にあります。

新潟県警では、高齢ドライバーをサポートするため、新潟県運転免許センターに「高齢運転者支援室」を設置し、高齢者の事故防止に向けた取り組みのほか、高齢者からの運転適性や免許更新に関する相談を受け付けています。

一方で、自動車は高齢者にとっても日常生活に欠かせない交通手段です。運転に不安がある高齢ドライバーに自主返納を促すためには、自ら自動車を運転しな くても安心して暮らせる社会の実現が求められています。

そこで、高齢ドライバーの免許更新をめぐる現状や、運転免許自主返納者への県内自治体の支援内容等についてまとめてみました。

 

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免許自主返納は年間60万人を超える

2019年に運転免許を自主返納したドライバーは全国で60万人を超え過去最高となりました。そのうち65歳以上が57万人余りと全体の約95%を占めています。また75 歳以上も約35万人と増加傾向が続いています(図表1)。

運転免許自主返納件数

新潟県でも65歳以上の自主返納者は年々増加しており、2019年に初めて1万人を超えました。

「高齢運転者支援室」によれば、自主返納者が増加している背景として、高齢ドライバーが関係する重大な事故の多発と残された遺族の悲痛な声、自身の運転 に対する不安や家族からの勧め、75歳以上のドライバーに対する免許更新時の「認知機能検査」の義務付けなどが影響するとしています。

免許更新時の「実車試験」導入へ

高齢ドライバーの免許更新時の手続きについては、1997年にそれまで任意で実施されていた「高齢者講習」が75歳以上に義務化され、2001年には70歳以上に対象が引き下げられました。また、2009年には75歳以上に「認知機能検査」が義務付けられるなどの法律改正が順次なされてきました。

近年、交通事故件数が減少傾向にある一方で、高齢ドライバーが関係する事故の割合が増加していることがその理由にあるようです。そして、今後新たに導入さ れるのが「実車試験」です。

2020年6月に国会で成立した道路交通法一部改正では、75歳以上で一定の交通違反や事故を起こした人に、実際に車を運転して運転技能を確認する「実車試験」が2022年から新たに導入されます。その試験で不合格となれば免許の更新は認められません(図表2)。

実車試験導入案

併せて、運転に不安がある人の選択肢として、衝突被害軽減ブレーキなど先進的な安全機能を備えた安全運転サポートカーに限って運転できる「サポートカー限定免許」が新たに創設される見通しです。

広がる高齢ドライバーや免許自主返納者への支援

60歳以上の人を対象とした内閣府の調査(注1)では、外出の際に全体の56.6%の人が「自分で自動車を運転」し、そのうち約3分の2の人は「ほとんど毎日運転する」と回答しています。また、警察庁が75歳以上の人を対象に実施したアンケート調査(注2)では、運転免許の自主返納をためらう理由として「車がないと生活が不便なこと」(68.5%)の割合が最も高く、一方で自主返納に必要な支援策については「交通手段に対する支援の充実」(45.9%)の割合が最も高くなっています。

県内でも高齢ドライバーへのサポートや運転免許自主返納者への支援が広がっています。 高齢運転者支援室では、免許更新時の安全運転講習や自主返納に関する電話相談などのサポートに力を入れています。高齢ドライバー本人やその家族からの相談を安全運転相談ダイヤル「#8080(シャープハレバレ)」で受け付けており、「運転に不安を感じたらまずは相談を」と呼びかけています。

また、多くの県内市町村が免許自主返納者に対し、タクシーやバスの利用料金の補助など交通手段の確保に向けた支援等を行なっています(図表3)。

自主返納者への支援内容

まとめ

全国の75歳以上の運転免許保有者は2009年の324万人から2019年には593万人と10年間で約270万人増加しました。警察庁の推計では5年後の2024年には760万人に達する見通しです(注3)。自主返納件数は増加しても返納率は低い状況が続くとみられます。

高齢化が進むなかで、高齢者が安心して暮らせる環境を整備し、自主返納を希望する高齢ドライバーを支える取り組みがますます期待されます。

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(注1)内閣府「令和元年版高齢社会白書」
(注2)警察庁「平成27年自主返納に関するアンケート結果」
(注3)警察庁「道路交通法の一部を改正する法律案(概要)」

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「センター月報」 2020年8月号の 「潮流 県内最新トピックス 第28回」を加除修正しました。