小さな会社の差別化事例

 

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。今月の「センター月報11月号」では、小さな会社の差別化事例について、ご寄稿いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

小さな会社の差別化事例

 

弱者の基本戦略は差別化

ある日曜日、家の車庫のシャッターが開かなくなりました。インターネットで鍵の修理屋を探しましたが、私の住む地元ではお店がみつかりませんでした。鍵の修理の全国規模の手配サイトで探しても登録はありませんでした。メーカーの支店に電話をしても留守電になっていました。

しかし、偶然に1件の鍵の修理屋のサイトを発見しました。住所を調べると隣の市でしたので電話をすると「今、現場なのでこちらを片付けてからそちらに向かいます」とのこと。

数時間して、修理屋の車がやってきました。それから私はずっと傍らにいて修理の様子をみながら、その方の話を聞いていたのですが、次のことが分かりました。

・その方は脱サラして一人で鍵の修理屋を営んでいる。
・新潟県上越地域で実質的に稼動しているのはその人の修理屋だけ。
・手配サイトに登録して仕事を受注する下請けはやらない。直接受注のみ受け付け。

つまり、この人は地域で差別化しているといえます。同業が存在しないので、戦わずして勝っている、ともいえます。

しかも、直接戦でお客様から直接仕事を受注していますから利益率が高くなります。上越市域は県内でも小さな市場なので、大手企業が参入してくる可能性は極めて低いはずです。そのため参入障壁問題もクリアしているわけです。

修理代金は決して安くはありませんでしたが、連日依頼が絶えないそうです。市場は小さいがニーズがあり、競合他社が提供できないが自社が提供できる価値を提供している、まさにバリュープロポジションを具現化したビジネス展開です。

経営規模の小さな会社の差別化事例、戦い方事例としての良いお手本です。

(中略)

私が最初に出版した時も、強者とは差別化してタイトルや内容を決めました。ビジネス部門での「経営戦略」「ランチェスター」「マーケティング」「営業」「マネジメント」といったカテゴリには強者がたくさんいますから、こういったカテゴリで本を出しても勝てないと考えました。

そこで選んだのが「広告」というカテゴリだったのです。そこで本のタイトルが「広告宣伝心理術」(日本能率協会MC刊)となったのです。実は私の出版本で一番売れたのはこの本です。

どの業界にも必ず強い競争相手が存在します。

「私は強い相手と戦って勝つのが好きである。大きな市場で、幅広く、勝負する」

そういうタイプの方は正面からガチンコ勝負を挑めば良いでしょう。

これは経営戦略でいうと強者の戦略です。

でも、こちら側の経営資源や戦力が客観的にみて相手に劣っているのであれば、

「戦わずして勝つ、勝ちやすきに勝つ。市場を絞って特化する。差別化を図ってオンリーワンになる」のが優れた経営戦略です。これは弱者の戦略です。

もちろんどちらを選ぶかはあなたの自由です。

ちなみに私の仕事場には次のように書いて貼ってあります。

「競合と同じことは絶対にやらない」



酒井とし夫(2019)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第44回」『センター月報』2019年11月号

感想

地域でご商売されている人の中で、意外に見落としがちなのがインターネットの対策です。最初のご紹介いただいた「鍵の修理屋」さんの事例のように、悩み・困りごとの解決のために、自宅周辺の会社をインターネットで探す地域住民の方も多いと思われます。

したがって、お客様がどのような悩み・困りごとを抱えているのか?その場合、どのような検索キーワードで情報を探しているのか?さらに、その検索キーワードを打ち込んだ際に、自社のホームページやブログが検索エンジンで表示されるのか?などを確認することがまずは重要でしょう。