新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。
私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。
今月の「センター月報2月号」では、お客様から自社を選んでもらう方法について、ご寄稿いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。
差別化された存在
最近は家電店に入ると大型テレビや冷蔵庫の前に立って、スマホをみている人がいますが、あれがSearch(検索)です。スマホを使って同じ商品の他のお店での販売価格や配送料の有無や設置費用や割引率やポイント還元率を調べて比較しているわけです。
その結果、他店の方が同じ商品でも「安い」「ポイントが多い」と分かるとお客様はそちらのお店に行ってしまい、その後、ネットで「※※店のポイントの方が多い」「※※は対応がイマイチ」などとフェイスブックや口コミサイトでシェアされてしまうわけです。
10年前であれば「市場ニーズ」があって、「自社で提供できる」商品があればまだ売れました。競合店と比較できる情報が少なかったからです。しかし、今は「市場ニーズ」があって、「自社で提供できる」商品があり、かつ「競合が提供できない」ものでないと売れないのです。
(中略)
あなた自身もこの数年の間で、何かを買おうとしたときにスマホで他のお店の価格を調べたことがあるはずです。レストランの予約をする前に口コミや評判を調べたことがあるはずです。宿泊先を決めるときに比較サイトで料金を調べて比較したことがあるはずです。サービスの申し込みをする前にレビューや評判を調べたことがあるはずです。
それが今の時代。
あなたの商品やサービスも必ずお客様に比較されます。
その時代においてお客様にAction(購買行動)に至ってもらうには
(1)お得な存在になる。
(2)差別化された存在になる。
という2つの方法があります。(1)お得な存在になる、というのは比較されることを前提に価格やサービスや特典で僅差でも良いので他社よりも安い、得、メリットがある状態で商売をするということ。
「他店より1円でも高い商品がありましたらスタッフまでお知らせください」「レジでさらに5%値引き」「送料、取り付け代金、金利手数料無料」「2着目は1,000円」というやり方です。お客様も数字で比較しやすいので購買に至る確率が上がります。
一方、(2)差別化された存在になる、というのは比較されることを前提に比較されても比較のしようがない状態にするという方法。
たとえば、私の知人に文房具店を営んでいるAさんがいます。普通の文房具店であれば他のお店と扱っている商品は同じなので、バリュー・プロポジションがありません。そのため(1)お得な存在になる、しか生き残ることができません。
しかし、Aさんのお店の文具は他店より安くもないし、値引きもしていません。しかしマスコミにも取り上げられるほど繁盛しています。なぜなら(2)差別化された存在になる、を実現しているからです。
実はAさんのお店は…左利き専門の文房具店なのです。
比較されることを前提に比較されても比較のしようがない状態になっているのです。簡単にいうとマーケットに競合がいないのです。だから比較されようがないわけです。
(中略)
比較されることを前提に比較されても比較のしようがない、競合がいない状態になっているのです。情報が溢れる時代においてお客様は必ず購買に至る過程でSearch(他のお店も調べて比較)します。そこで取るべき方向は2つです。
さて、あなたはどちらの存在を目指すのでしょうか。
酒井とし夫(2019)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第35回」『センター月報』2019年2月号
感想
酒井先生のおっしゃるとおり、「比較されることを前提に」商売をしていかなければならない時代となったようです。その際、お客様から「選ばれる理由」を打ち出せるかどうかが、(2)差別化された存在になるための鍵になると思いました。もちろん、そう簡単に「選ばれる理由」を打ち出せる訳ではありませんが、それを意識していかないと、(1)お得な存在になる、しか生き残る術はないのかもしれません。