新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。
本日は、コミュニティ・ビジネスの新潟県内での取組事例を紹介するシリーズの2回目となります。前回の投稿は「コミュニティ・ビジネスで地域活性化 その1」をご覧下さい。
コミュニティビジネスの取組事例 事例1
朝日村まゆの花の会
当会の代表は横井栄子氏。会員は18名。
~養蚕業の衰退と打開策の検討~
かつて村上市内に製糸工場があったことから、1970年代の岩船郡地域(現村上市)では養蚕業が盛んでありました。しかし、絹製品の需要の落ち込みから養蚕農家は減少し、産業として衰退の一途を辿っていました。JAの養蚕農家の婦人部会において養蚕業を継続するために検討を重ねるなかで、雑誌に掲載されたまゆ玉からシルクフラワーが作れる記事にヒントを得ました。実際に山形県天童市への視察を踏まえた後、制作講習会を実施し1985年の12月から本格的なシルクフラワーの制作が始まりました。
~活性化に向けた取り組み~
ところが、地元の養蚕農家は、まゆ玉を既に製品として出荷済であったため、納品先の農協からまゆ玉を買い戻して制作を行ないました。翌年の86年4月に現在のみどりの里物産会館や村上駅内の観光協会で委託販売を開始しました。また、企画・制作を行なう朝日村まゆの花の会を設立し、継続的な事業としてスタートしました。さらに、96年には道の駅である現在の場所に「朝日シルクフラワー制作工房」を設立し、現在は常設の講習会・製品販売の活動拠点となっています。
~創業支援と活動内容の変化~
開業当初は、養蚕農家の主婦達が本業のかたわらに取り組む趣味と実益を兼ねた活動が中心でした。しかし、制作工房の設立後は、販売規模が拡大するにつれて、経営の視点が求められるようになってきました。このため、都岐沙羅パートナーズセンターが進める里創プランに応募し採択されたことで、作品の販売方法、情報発信ツールの整備など、事業経営のノウハウを取り入
れていきました。
~今後の展望~
これまでは順調に事業を拡大し、シルクフラワー作りを通して若い世代も参加するようになってきました。地元小学校の総合学習に蚕を提供するほか、新潟市の女池小学校のように蚕を育てて卒業式用のコサージュ作りに取り組む学校も生まれています。スタートして30年が経過し、地域おこし協力隊の若者も参加して新たな活気が生まれました。今後は村上地域における養蚕業を継承できるよう農業法人に飼育委託を検討するなど、首都圏での販売も視野に入れています。地元の養蚕業とシルクフラワーの制作・販売の好循環を作ることで地場産業の継承につなげていけるような事業の拡大を図りたいとのことです。
まとめ
今回は、具体的な取組事例をご紹介いたしました。さらにもう1事例をご紹介したいのですが、少し長くなりましたので、後日、改めてお知らせいたします。
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『センター月報』2018年6月号の「地方叢生に向けた、地域の取り組み」を加除修正いたしました。