原材料価格が上昇。上昇の要因や企業への影響は?

新潟経済社会リサーチセンターの近です。

鉄や原油といった資源価格の上昇が続いています。鉄や原油などは原材料として、企業活動に欠かすことのできないものです。新型ウイルスによる急激な需要低迷がやや落ち着き、企業の売り上げは徐々に持ち直しつつあるものの、原材料価格の上昇によって「売り上げの回復ほど利益が上がらない」といった声も聞かれます。

当センターが5月に県内企業に実施した「2021年上期 新潟県企業調査」をみても、「経営上の問題点」について「仕入価格の上昇」と回答した企業の割合は20年下期調査に比べて大きく上昇しており、原材料価格を含む仕入価格の上昇が企業にとって大きな障害となっていると言えます。

本日は、原材料価格の推移や影響について、経済指標や「21年上期新潟県企業調査」の結果をご紹介しながら確認していきたいと思います。

 

企業物価指数は2008年9月以来の高い水準・上昇率

日本銀行は、企業間で取り引きされる価格の指標として毎月「企業物価指数」を発表しています。5月の企業物価指数は、水準・前年同月比伸び率ともにリーマン・ショックが起きた2008年9月以来の高い水準・上昇率となりました。石油石炭製品、非鉄金属、化学製品などの上昇が特に大きくなっています。

前年同月(20年5月)は新型ウイルスの影響を大きくうけていたため、その反動による上昇があったことに加えて、世界経済の回復を背景に国際的に商品価格が上昇していることが要因とみられます。

 

「仕入価格BSI」は前期を大きく上回る

次に、当センターが5月に実施した「21年上期 新潟県企業動向調査」の「仕入価格BSI」と「販売価格BSI」の推移をみてみます。

21年1-6月期(以下、今期)の仕入価格BSI(「上昇」-「低下」)は36.0となりました。20年7-12月期(以下、前期)から27.6ポイント上昇と大幅に前期を上回りました。

仕入価格について回答企業からは、「木材の供給が極端に細るなか、価格上昇が顕著であり調達も難しくなっている。供給不足から、建設工事の遅れも出始めているようだ」など、ウッド・ショックと言われる世界的な木材不足の影響が県内でも表れているとの声が聞かれたほか、「原油価格の高騰でコストが増加している」など、原材料価格の上昇をあげる声が複数寄せられました。

一方、今期の販売価格BSI(「上昇」-「低下」)は4.7となりました。前期から7.2ポイント上昇し、2期連続で前期を上回ったものの、水準・前期からの上昇幅ともに、仕入価格BSIと比べて下回っています。

回答企業からは「原材料である鋼材等の供給不足や価格引き上げの影響が大きく、製品価格への転嫁が遅れており、今期は減益となる見込みである」などの声が寄せられました。仕入価格が大幅かつ急激に上昇するなかで、その価格上昇分を即座に販売価格へ転嫁することができず、企業の収益が圧迫されていることがうかがえます。

 

原材料価格が上昇している要因は?

なぜ原材料価格は大きく上昇しているのでしょうか?

それぞれの原材料ごとに個別の要因はありますが、共通する要因として①実需によるもの(世界経済回復による需要増加)と②投機的な資金流入によるもの(世界的な金融緩和の影響による商品相場への資金の流入)の2点が考えられます。

このうち、まずは実需の強さが挙げられます。先進国を中心にワクチン接種が進んでおり、足元では経済活動の本格的な再開に舵を切る国も出てきました。前年を振り返ると、新型ウイルスの影響による需要の低迷や先行き不透明感から、工場の稼働を停止するなど、供給量が減らす動きが広がっていました。そのようななか、世界経済が想定よりも早く回復したため、供給が追い付かないといった現象が起きています。つまり、供給を上回る需要の強さが原材料価格を押し上げている要因の一つであると言えます。

2つ目は投機的な動きです。新型ウイルスの経済へのダメージが非常に大きかったことから、各国の中央銀行は大幅な金融緩和策を実施しました。こうした緩和的な金融政策を背景に、世界的に資金が潤沢な状況となり、株や債券だけでなく、資金の一部が商品市況に流れ込んだことから、原材料価格が上昇したと言われています。

まとめ

世界経済の回復を背景に、新型ウイルスの影響により冷え込んでいた需要は増加に転じ、企業の売上高も改善がみられます。一方で、需要の増加に供給が追い付かない状況から、原材料価格が上昇し、企業収益を圧迫し始めています。

県内経済も海外からの受注増加により、製造業を中心に売り上げは持ち直しつつあります。ただし、原材料価格の上昇を販売価格に転嫁するまでに時間を要する企業も多く、採算の悪化が懸念されます。また、需要が供給を上回る状況が続けば、原材料は価格上昇のみならず、調達が難しくなる可能性もあり、生産・販売することができず売上機会を逸してしまうことも懸念されます。

ワクチン接種は進展しているものの、世界的に感染が再拡大しており、このまま世界経済の回復が続くか不透明な状況となっています。また、物価上昇をうけて米国などでは金融緩和からの政策変更が議論されており、投機的な資金の動きも注目されます。今後の原材料価格の動向を予測するのは非常に難しいですが、原材料価格は企業の業況を大きく左右することから、引き続き注意してみていきたいと思います。