東京圏への転入超過から考える


新潟経済社会リサーチセンターの小林です。

先日、新潟市で開催された「地方創生フォーラム in 新潟」に参加してきました。同フォーラムでは、「人口減少の現状と課題について」と題して、元総務大臣の増田寛也氏による基調講演や、「若者にとっての新潟らしく魅力ある多様な働く場づくりに向けて」をテーマにしたパネルディスカッションが行なわれました。

基調講演ならびにパネルディスカッションとも、これからの新潟県のあり方を考えるうえで非常に参考になる内容でした。そのなかでも、増田寛也氏の基調講演のなかで、非常に興味深いデータをもとにしたお話がありましたので、ご紹介したいと思います。

 

新潟県内の企業経営者

東京圏への女性の転入超過数は大都市ほど多い

東京圏(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)への人口流入が続いていると言われますが、総務省「住民基本台帳人口移動報告」によると、2017年の1年間に、東京圏以外の43道府県から東京圏に転入した人は48.1万人、反対に東京圏から43道府県に転出した人は36.1万人となっており、差し引きすると11.9万人が東京圏に転入超過したことになります。この東京圏への転入超過の実態について、増田氏は「東京圏への転入超過数 市町村別男女別内訳(2018年上位62団体)」という資料をお使いになって、43道府県の主要都市からの東京圏への転入の状況について説明をされました。ちなみに、増田氏の講演資料と同種の資料は以下のアドレスでご覧になれます。(以下のアドレスから入手できるPDFファイルの22頁目。https://www.kantei.go.jp/jp/singi/sousei/meeting/senryaku2nd_kpi/19-08-22_sankou.pdf

増田氏の講演資料で使われている62団体(市)から政令指定都市だけを便宜的に抜き出したものが下のグラフです。なお、本記事では、2018年と2017年のグラフを掲載しました。講演のなかで増田氏は、このグラフ(講演では上記アドレスから入手できる資料)をもとに、大きく2つのことを指摘されていました。1つは、東京圏への転入超過数が多いのは、政令指定都市のなかでも人口規模の大きい所が上位を占めていることです。

2つ目は、東京圏への転入超過数を性別にみると、女性の方が男性に比べて多いことです。同時に、転入超過数が多い人口規模の大きい所ほど女性と男性の転入数の差が大きいということです。

東京圏を中心とした大都市圏への人口流入の話になると、とかく地方の農山村や中小規模の市町村からの転入が加速しているイメージがありますが、実態は全国各地の政令指定都市や中核市などの主要都市からの転入が顕著となっています。さらには、男性よりも女性の方が、その傾向が強くなっています。




 

例外の都市としての神戸市、京都市

ところが上記のグラフをよくみると、もう1つ気付くことがあると、講演のなかで増田氏は指摘されました。それは神戸市に関しては、女性の転入超過数よりも男性の転入超過数が多いということです。また、上記アドレスから入手できる資料をみると、金沢市や姫路市なども同じような傾向となっています。また、京都市に関しては、他の政令指定都市に比べて男性と女性の転入超過数に大きな差がなく、2017年でみると、神戸市同様、女性の転入超過数よりも男性の転入超過数が多くなっています。

このことについて増田氏は、上記の都市が観光都市などとしてまちの魅力度が高いことを共通点として挙げておられました。その結果として、神戸市や京都市は、他都市と同様に東京圏への転入超過の状態にはあるものの、女性の転入超過が他都市に比べて抑えられているというものです。この話をお聞きし、都市やまちとしての魅力を地道に築き上げていくことの重要性を改めて感じさせられたところです。

中長期的な理想の重要性

現在、多くの市町村が若者や子育て世代の流出超過(=大都市圏等への転入超過)に直面しているのはご承知のとおりです。そして、UIJターン者向けの移住に関する施策や子育て支援策の充実などを打ち出している所がほとんどです。この流れは、決して間違っていませんし、それぞれ独自の施策で市町村が健全な住民獲得競争を行なうことは当然のことと考えられます。

しかし、上記の神戸市や京都市などの例をみると、独自の施策以上に、目にはみえず、定量的に測ることが難しい魅力やブランド力の有無が大きな影響力をもっている気がします。目新しい施策や独自の施策と合わせ、多くの人に受け入れられる魅力やブランド力を地道に築き挙げていけるようなまちづくりが一層求められているのではないでしょうか。短期的な対応策に終始することなく、中長期的にどのようなまちを目指していくのかという理想やビジョンを掲げ、そこで暮らす人たちの間で共有していくことが重要であることを、改めて考えさせられた講演会でした。