新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。
私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、ビシネス心理学講師 酒井とし夫氏より、商売に役立つ心理学的なヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。
今月の「センター月報4月号」では、お客様やスタッフと良い関係を築くための会話の工夫について心理学的な観点からご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。
ピグマリオン効果
私も講演会の冒頭で次のようにいうことがあります。
「年に何度か岩手県で講演をさせていただきますが、いつも温かく迎えていただき、熱心に聴講していただくので私の好きな場所です。今日もよろしくお願いいたします」
あるいは次のようにいいます。
「先ほど何人かの方とお話をさせていただきましたけれど、今日の参加者の方はにこやかで、熱心な方が多いですね。私もとても話しやすいです」
実は会場に入って
「今日の参加者の方はちょっと固いかな、消極的かな…」
と感じたときにこのようにいうことが多いのです。すると、本当に不思議なことに、にこやかに話を聞いてくださる方が会場のあちこちでポツポツと現れ始めます。
講演中には実験を行うことがあるのですが、そのときには会場にいる1 人の人に向かってこういいます。
「あなたなら協力してくれそうなので指名させていただきます。前に出てきていただけますか」
また、研修中には次のようにいうことがあります。
「今日の参加者の方はフットワーク軽く、さっと動いてくれるので実習がやりやすいですね」
このように声掛けをすると実験への協力がスムーズになり、研修参加者の方の実習への取り組みが積極的になります。
(中略)
こちらの期待によって、相手の態度や行動に変化が現れ、期待された通りに成果を出す傾向があることをピグマリオン効果といいます。
(中略)
私はお客さまから次のようにいわれることがあります。
「酒井さんはいつも元気で、明るいですね」
すると、私は元気で明るい自分を演じるようになります。そして、体調が少しくらいすぐれなくても、元気な振る舞いを行うことが多くなっていることに気がつきます。
子供は小さな頃に、親から
「男の子らしくしなさい」
「女の子らしくしなさい」
といわれて、その通りの行動を行い、態度を身に付けるようになります。
大人になっても、周りから
「社会人なのだから、ちゃんとしなさい」
「管理職になったのだから、それらしい振る舞いをしなさい」
といわれて、その通りの行動を行い、態度を身に付けるようになります。
「新潟の人は粘り強くて努力家だよね」
といわれると実際にそのように振舞うようになります。
(中略)
さて、あなたならピグマリオン効果をどのように応用するでしょうか?
たとえば部下やスタッフに仕事を頼むときも
「この企画書を作成してくれ」
と伝えるよりも
「あなたはアイデアマンだから、この企画を頼むよ」
と相手に期待をして、伝えることもできます。
交渉をするときも
「どちらが良いですか?」
と締結を急ぐよりも
「社長はいつもご決断が早いのでありがたいです。今日はどちらが良いですか?」
と伝えることもできます。
(中略)
商売人もビジネスマンも、少し「人の心」を理解すると結果が大きく変わってきます。
欲しい成果があるのであれば、先に自分から相手を「信頼」することです。
酒井とし夫(2017)「街でみつけた商売繁盛心理学 今すぐできる選りすぐりのアイデア 第13回」『センター月報』2017年4月号
感想
こうした言い回しはわざとらしくならないようにするがポイントのような気がします。ごく自然な流れの中で自分の「期待」を先方に伝えられるようになると、より効果があるのかもれません。私もチャレンジしてみたいと思います。