新型肺炎がもたらす働き方改革

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報9月号」では、今後の働き方の方向性について、ご寄稿いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

働き方改革 ワーケーション ジョブ型

ジョブ型勤務へ

「明日の天気は何?」「近くにコンビニある?」「カラオケは何時まで営業?」。こんなこと、わざわざ電話をして聞かなくても、手元のスマホで検索すればすぐわかるのに、なぜ手間と時間をかけてまで聞いてくるのか。毎日、毎日、かかってくる。こうした電話がなくなるだけで、業務はかなりはかどるのに・・・というのは、地方旅館のフロントでインターンシップとして働く学生の声だ。「あの人がバスの中からマスクを付けていない」「あの人はポリ手袋をつけないでトングを触っていた」。新型肺炎の影響で、そうした声までフロントに届く。何をしろというのだろう。そうした声を聞きながら、労働というものについて考えていく。

世の中には「Bullshit Jobs」(クソどうでもいい仕事)が多いという話を授業で時々する。資本主義を思考する人類学者デヴィッド・グレーバーの同名の書籍(邦訳も出版された)で語られている言葉だ。

すると学生は、それは、こうしたフロント対応のような、いつでもスマホやテクノロジーでも代替できる業務がそれにあたるのだろうと思う。

(中略)

しかし、帰るころになると、そうではないと思いを改めるようになっていく。なぜなら、自分がその瞬間、そこにいたことにより、小さな経済をまわすことができたことに気づくからだ。天気を聞いたからこそお客様の行動につながり、コンビニを知れたからこそ消費につながった。他人の悪口を聞いてあげたことで、その人のいら立ちは収まり、少し旅が楽しくなったはずだ。実業で働く限り、必ず誰かの役に立ち、小さな経済につながっていることに気づく。

一方で、世の中では「その人がそこで何をやったところで、誰にも何にも貢献していない」仕事が多い。私も講演をする機会が時々あるのだが、「いい講演だった」といわれたとしても、紙の資料はごみ箱行きになり、誰の何の行動にもつながらない講演が果たして仕事なのかと自省すれば、それこそがブルシット・ジョブだ。

(中略)

また、ワーケーション(WorkとVacationを組み合わせた造語)という言葉もよく聞かれるようになった。「休暇中に仕事をする」と説明されることが多いので誤解も少なくないのだが、「出張先で、1時間単位の休暇を組み合わせ、休日を過ごす」といったほうが正確だ。ただし、ワーケーションに関しては労災や倫理上の問題など、その障害は数多く、ホワイトカラーにはまだ遠い先の夢だ。しかし、労働生産性を上げるには「管理から逃れることが第一」との海外の調査もある。言い換えれば、ブルシット・ジョブをまっとうなジョブにするために、今後ワーケーションの導入が求められるようになっていくだろう。

こうした働き方改革の動きは、仕事に人を充てるメンバーシップ型から、人に仕事を与えるジョブ型への転換過程の動きでもある。つまり、その人の能力や個性を活かし、職務に対する成果で評価する働き方への転換である。ジョブ型になれば、誰が何時から何時まで働いたかを管理するブルシットな業務が不要となる。しかし、裁量労働制に代表されるジョブ型勤務は、日本では、労働基準法でコンサルタント等の専門職しか認められていない。その理由のひとつは、成果に対する評価が難しいからだ。

(中略)

新型肺炎が私たちに与えた最も大きな影響が、働き方への影響だったと思う。もし、これだけの経験をしながら何も仕組みが変わらなかったとすれば、この国に未来はない。



井門隆夫(2020)「観光イノベーションで地域を元気に 第41回」『センター月報』2020年9月号

感想

自分が抱えている仕事の中で、必要性が高いのはどれか?お客さまに貢献しているのはなにか?やらなくとも良いものはあるのか?という観点から、まずは見つめ直すことが大切であると実感しました。