人事評価制度等の一環として多面評価の導入をお考えの新潟県内企業のご担当者様へ

新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

人事評価制度あるいは人材育成の一環として、多面評価(360度評価)の導入についてお問い合わせをいただく機会が増えています。

そこで、本日は多面評価(360度評価)の導入状況や効果などについて、ご紹介したいと思います。

 

面接 面談 説明

360度評価とは?

多面評価(360度評価)とは、総務省|地方公共団体における人事評価制度の運用に関する研究会「地方公共団体における人事評価制度の運用に関する研究会報告書」によると、

通常の上司からの評価に加え、部下、同僚、他部局の関係職員等、多方面から人事評価を行う



総務省|地方公共団体における人事評価制度の運用に関する研究会(2011)「地方公共団体における人事評価制度の運用に関する研究会報告書」

ものとされており、

できる限り多くの角度から評価を受け入れることで、人事評価が評価者やその職位に左右されるものでないことを証明し、評価制度の透明性・信頼性を高め、評価結果の説得力を増す効果が期待できる。



総務省|地方公共団体における人事評価制度の運用に関する研究会(2011),前掲報告書.

と指摘されています。

したがって、評価される側からすると、多面評価(360度評価)とは様々な関係者から評価されることで、自分自身を冷静に振り返る機会、と捉えられるかもしれません。

360度

導入目的

多面評価(360度評価)の導入目的としては、信金中央金庫 地域・中小企業研究所「信用金庫の多面的評価制度の導入」をみると、①管理職の育成、②評価制度の客観性向上、③職場内コミュニケーションの活性化、の3つがあげられています。

このうち、①管理職の育成とは

自己評価と他者評価のギャップを理解することで、意識改革や行動改善につなげる。


信金中央金庫 地域・中小企業研究所(2020)「信用金庫の多面的評価制度の導入」

と説明されています。

また、②評価制度の客観性向上とは、先程の「360度評価とは?」でも触れましたが、

所属長が部下職員を一方的に評価するのではなく、双方向の評価実施により、人事評価の客観性を向上させる。


信金中央金庫 地域・中小企業研究所(2020) ,前掲報告書.

と言い表されています。

最後に、③職場内コミュニケーションの活性化とは

お互いが評価し合うことで相互理解が進み、コミュニケーションの活発化が期待される。


信金中央金庫 地域・中小企業研究所(2020) ,前掲報告書.

とも述べられています。

つまり、多面評価により人事評価の客観性を高めることで、本人の意識改革や行動改善につなげるだけではなく、職場内の相互理解を促す効果も見込まれているわけです。

導入率は?

実際の導入率はどのような状況なのでしょうか。

リクルートマネジメントソリューションズが従業員規模500名未満の企業から10,000人以上の企業の人事担当者600人に対して、2020年にインターネットにより調査した 「360度評価活用における実態調査」をみると、「360度評価を現在実施している」企業の割合は全体の31.4%となっています。同社によれば、他の調査結果と比較すると、近年、360度評価を導入する企業の割合は増加しているようです。

また、評価対象者をみると、課長層(62.5%)と部長層(59.5%)が6割前後で最も高く、以下、主任・係長層(43.2%)、事業・部長層(37.0%)、新人・若手層(27.8%)などとなっています。

したがって、主に管理職を中心に、多面評価(360度評価)が導入されている状況がうかがわれます。

面談 面接

新潟県では…

一方、新潟県の導入率については、当センターで昨年、調査を実施していますが、全体のごくわずかでの導入にとどまっており、全国に比べれば低い水準となっています。

質問項目

多面評価の際には、どのような質問で評価されているのでしょうか。

当然ながら、実施する企業によって異なっているのが実際ですが、例えば、 内閣官房内閣人事局「平成28年度マネジメントフィードバック試行結果について」(平成29年4月)によると、内閣人事局及び他府省の課室長級職員の合計40名を対象に、それぞれの部下職員(1人の対象者当たり5名以上)が上司のマネジメント状況を観察した試行結果が紹介されています。その際、質問項目は7分類13項目となっており、以下のような質問が公開されています。

(1)組織の課題解決
① ≪課題の把握≫ 彼/彼女は、 自分に与えられた業務、自分が必要だと考える業務だけではなく、組織として対応すべき課題を適切に把握しているか。

② ≪対応方針≫彼/彼女は、組織が対応すべき各課題について、その重要性、困難性や、 業務の進捗状況等を考慮し、優先順位を考えた上で、適切に対応方針を検討しているか。
 
(2)創造的組織の構築
③≪効率的な組織づくり≫彼/彼女は、無駄な業務は改廃し、過去から継続しているだけの不合理な業務は見直す等、状況の変化を踏まえた組織の活性化や、効率的な組織づくりを図っているか。

④≪新たな課題へのチャレンジ≫彼/彼女は、新たな知識を吸収するとともに、組織全体の創造性を高めながら、組織の今後の展開を構想するなど、新たな課題に積極的にチャレンジしているか。
 
(3)チームワーク
⑤≪適切な業務分担≫彼/彼女は、部下それぞれの能力・特長・ 勤務形態等の多様性を踏まえ、チームとしての総合力を発揮するため、適切な業務分担を行っているか。

⑥≪部下との目標や方針の共有≫彼/彼女は、組織の目標や方針について、部下と共有し、一体感を作り上げようとしているか。
 
(4)ワークライフバランスの実現
⑦≪働き方改革への率先した取組≫彼/彼女は、自らの定時退庁やテレワークの実施等、ワークライフバランス実現に資する働き方改革に自ら率先して取り組み、成果を挙げているか。

⑧≪部下の働き方改革≫彼/彼女は、部下それぞれが働きやすく、その時々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を実現できる環境整備を行っているか。
 
(5)コミュニケーション
⑨≪対話による相互理解促進≫彼/彼女は、部下から見て気軽に話しやすい雰囲気をつくり、意見を傾聴するとともに、チーム内での相互理解を十分に促進できるような対話を行っているか。

⑩≪組織内外との積極的交流≫彼/彼女は、組織の内外の人材と積極的に交流し、相互の組織間や業務運営に対する理解の促進、調整の円滑化を推進しているか。
 
(6)効果的な人材育成
⑪≪部下の成長機会創出≫彼/彼女は、部下の能力・特長を見極め、より高いレベルに成長できるような育成の機会をつくっているか。
 
(7)コンプライアンス
⑫≪誠実な業務遂行≫彼/彼女は、業務遂行において、自らが責任感を持って誠実な対応を行っているか。

⑬≪服務規律への意識向上≫彼/彼女は、組織としての服務規律の遵守、公平・公正な業務遂行が行われるよう、チームの意識向上を図っているか。



内閣官房内閣人事局(2017)「平成28年度マネジメントフィードバック試行結果について」

一部にやや答えにくい質問も含まれているような気もしますが、概ね回答しやすい質問となっているのではないでしょうか。また、質問数は多くはないのですが、幅広い分野にわたっていると思われます。

アンケート チェック

具体的な効果


最後に、多面評価(360度評価)を導入したことによる効果を各企業ではどのように感じているのか?を確認してみましょう。 先進的な取り組みを実施している民間企業19社に対してヒアリング調査を実施している 内閣人事局(2017)「民間企業における多面観察の手法等に関する調査」(調査実施機関:日本能率協会総合研究所)をみると、以下のような2点の効果が述べられています。

【改善に向けた気付きや学びの醸成】
・自分が気づいていない部分を他人から指摘される事で、自分と他者の視点が違うことに気付かされ、今のままではダメだといったことに気付いてもらっている。インパクトはあるが、前向きに改善してくれている。(G 社)

(中略)

【管理職の緊張感や社員のモチベーション向上に寄与】
・部下とのコミュニケーションに消極的な上司は評価されない仕組みで、上司の部下育成やコミュニケーションを意識した行動につながっている。(S 社)
・等級に見合ったパフォーマンスを常に意識して、等級にあぐらをかけない風土が形成されて、幹部社員に対する緊張感につながっている。(S 社)


内閣人事局(2017)「民間企業における多面観察の手法等に関する調査」

各企業から寄せられた声を読むと、しっかりとした運用がなされれば、多面評価(360度評価)は効果が高いようです。

まとめ

質問項目や評価対象者、細かな実施方法などは各企業によって異なるのかもしれませんが、 全国的にみると、多面評価(360度評価)を導入する企業は管理職を中心に増加していることが理解できました。

実際、 上司による人事評価はあっても、 自分自身の行動を深く振り返って考える機会はそう多くはありません。そのため、同僚・部下を含め多角的に確認・評価してもらう機会が定期的にあれば、より客観的かつ冷静に自分自身を知ることができますし、その結果、周囲とのコミュニケーションもより滑らかになるのではないかと思われます。 したがって、リーダーの育成や風通しの良い組織づくりに課題を抱えている企業の方は一度、多面評価(360度評価)の導入を考えてみてはいかがでしょうか。

ただし、評価結果を本人に紙面で伝えて終了とならないように、個人面談やワークショップなどを通じて、これまでの行動を見つめ直して新たな取り組みに挑戦していけるような建設的な機会となるように運用を工夫するほか、確認・評価をする観察者の匿名性の確保や、目指してほしい理想的なリータ像の明確化など、様々な配慮や注意などが必要となります。

なお、当センターでも多面評価(360度評価)導入のお手伝いをしておりますので、興味のある方は電話(025-246-3211)あるいはメールなどで、「多面評価の件で」とお問い合わせください。

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以下の報告書等を参考にさせていただきました。この場を借りて感謝申し上げます。

  • 総務省(2011)|地方公共団体における人事評価制度の運用に関する研究会「地方公共団体における 人事評価制度の運用に関する研究会報告書」
    https://www.soumu.go.jp/main_content/000112871.pdf
    <2021年4月9日アクセス>

  • 信金中央金庫 地域・中小企業研究所(2020)「信用金庫の多面的評価制度の導入-経営戦略 39-」
    https://www.scbri.jp/PDFkinyuchousa/scb79h2020s16.pdf
    <2021年4月9日アクセス>

  • リクルートマネジメントソリューションズ(2020)「360度評価活用における実態調査レポート」
    https://www.recruit-ms.co.jp/issue/inquiry_report/0000000855/ 
    <2021年4月9日アクセス>

  • 内閣人事局(2017)「民間企業における多面観察の手法等に関する調査」(調査実施機関:日本能率協会総合研究所)
    https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/kanri_kondankai/pdf/h300606houkoku.pdf
    <2021年4月9日アクセス>

  • 内閣官房内閣人事局(2017)「平成28年度マネジメントフィードバック試行結果について」
    https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/kanri_kondankai/pdf/management_ability.pdf
    <2021年4月9日アクセス>

  • 内閣官房「マネジメント能力向上のための多面観察の取組」
    https://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/jinjikyoku/kanri_kondankai/pdf/r010703torikumi.pdf
    <2021年4月9日アクセス>