2020年観光トレンド予測

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

さて、私どもの機関誌「センター月報」では、年初に「旅のトレンド予測」を毎年、お届けしておりますので、本日はその原稿の一部をご紹介します。なお、執筆は毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生です。

 

2020年観光トレンド

 

第3位と第1位のトレンドは?

井門先生が予測する旅のトレンドは、次のとおりです。


「第3位 ワーケーション&ブリージャー」
 
第3位は、働き方改革の話題。ワーケーションとは、Work(仕事)とVacation(休暇)を合体させた造語で、休暇中に仕事としての時間を認める仕組みだ。
 
(中略)
 
隠れた目的は有給休暇の取得だ。現場のシフト勤務者は取得率が高くとも、間接部門の取得率の低さが課題だった。
 
しかし、休暇にもかかわらずパソコンを持って出かけることや、そもそも社員を信用して休暇先での仕事を許可すること自体に対して、まだまだ日本の社会は寛容ではない。そうした障壁を乗り越えなくては普及しないだろう。
 
(中略)
 
まずは社内プロジェクトの討議を休暇先で実施する等、会社を挙げた集団的取り組みが効果的だと思う。それに加えて、受け入れ地域のリモートワーク環境の整備が必要だ。
 
(中略)


受け入れのためにシングル素泊まり型の宿泊形態を用意したり、コワーキングスペースやネットワーク環境の充実を図ったりしたからこそ、そうした需要を取り込めている。実施する組織と受け入れ先の理解があって初めてワーケーションは進んでいく。


(中略)
 
ワーケーションには大きな欠陥がある。それは「休暇中に仕事」という点だ。海外でメジャーなのは、BusinessとLeisureを合体させた造語でブリージャーと呼ばれる「出張先で休暇」のスタイルだ。言葉は似ていても交通費の負担者が変わるので意味はまったく違う。
 
国際会議でもブリージャーはあたり前で、よく会議の後に家族と旅行する外国人をみかける。社員に対して「性善説」の海外か「性悪説」の日本か。果たしてどちらの制度が普及していくか。その議論が始まるのが、オリンピック期間中、都内での通勤回避が訴えられ、リモートワークの必要性を感じる人が増える今年となるような気がしている。
 
(中略)
 
「第1位 MaaSの進展」


そして今年のトレンド第1位に予測したのが、MaaS(Mobility as a Service)だ。ご存じの方も多いと思うが、スマートフォンを使い、手元であらゆる運輸機関の検索や予約等をワンストップでできることはもとより、運輸機関同士が連携したり、人を載せて動く新しい仕組みを作ったり、あるいは宿泊業や飲食業、あるいは公的施設や病院等とも連携しながら、社会の人の流れを効率化、活発化していく社会全体の改革のことを指す。人や物を安全、確実に運ぶことが運輸機関の使命だったかもしれないが、それに加えて、利用者へのサービス機能を拡充し、利用しやすくしていくことも重要な役割となった。
 
新潟市では、新潟県・庄内エリアデスティネーションキャンペーンに合わせ、2019年10~12月にJR東日本が中心となり「にいがたMaaS」のトライアルが行なわれた。これは市内循環バスの1日券もスマホ上で表示したり、バスの現在位置情報がみられたり、市内飲食店のお得なチケットが買えたりと、観光で新潟を訪れた人々が市内めぐりをしやすいように設計されていた。
 
全国でも、乗り捨て自転車やタクシーが加わる等、様々なモビリティ情報が一体化され、決済もキャッシュレスでできるようにする動きが活発だ。タクシーのアプリ配車は日本でも市場に浸透し始めているが、海外ではタクシーだけではなく、路線バスもアプリで管理され、バスが路線にこだわらずに乗客のいる地点に向かう仕組みも実現している。
 
(中略)
 
喫緊の課題が、地方における高齢者の足だ。高齢ドライバーの事故をなくし、安心して暮らせる健康長寿の国を実現するためにも、MaaSの具現化が待たれている。例えば、旅館のマイクロバス。一館が一台を持ち、ただでさえ無駄な動きが多いバスを宿泊客の送迎だけではなく、住民や観光客にも使ってもらう仕組みはできないだろうか。
 
観光の分野でいえば二次交通と呼ばれ、課題となっている地方でのモビリティについて、今年は住民の足問題ともからみながら、改革が進んでいくと予想している。

井門隆夫(2020)「観光イノベーションで地域を元気に 第33回」『センター月報』2020年1月号

感想

井門先生は、2020年のキーワードとして「シェア」を提示されています。ワークスペースも、送迎バスも「シェア」する時代であり、所有から共有へと世の中の仕組みが変わる時代になると予測しています。

なお、全文については、私どもの機関誌「センター月報1月号」をご覧下さい。