10年後の観光地とは?

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報2月号」では、10年後の観光地の方向性についてご紹介していただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

これからの観光地 方向性 フリーランス

フリーランスの世紀へ


2020年度から、国では地方自治体と協力して「東京圏に住みながら、地方で兼業・副業する人に交通費を支援する制度」を始める。地方創生推進交付金を活用し、往復1万円を超える場合その半額まで、1人あたり年間50万円、最長3年間分を兼業・副業先の企業に支給するという。

ちなみに、新幹線を使い東京・新潟間を新幹線で往復すると約2万円かかる。その半額の1万円が助成されるとすれば、年間50回、つまり毎週1回、1万円の負担で東京から応援にきてもらうことができる。
この制度は、使えるなら使わない手はない。週末に需要が集中する反面、人手不足が著しいという観光地では、猫の手も借りたい思いだろう。

(中略)

ただし、週末の猫の手として兼業・副業ワーカーを使うのはもったいない。さらには、地方の方々が心の底で不安視する「どんな人がくるかわからない」というリスクもはらむ。

そこで、PCスキルを活かした地域分析・企業分析・将来予測のできる方々や、デザイナーやコピーライティングできる方々、アプリ開発のできるプログラマーにプロボノ(スキルを活かした社会貢献)的にお越しいただき、地元と協働したプロジェクトを企画・実施してはどうだろうか。兼業・副業の目的は、あくまでPCを活用した業務である。時々、観光の接客現場に入ってもらうのも、ご本人にとってはめったにできない経験になるはずだ。

今、地方が欲しいのは、賃金が低く、副業でもして稼がないと生きていけない人ではない。また、地方で働きたいと考えている人も、地方は生活費が安いので賃金が多少低くとも生きていけるからという人ではない。

うまくマッチングできるのは、都会で賃金はそこそこもらえているけど、自分の能力を活かし社会に貢献したいと考えている人であり、地方が望むのは、PCを日常業務でフル活用できているスキルのある方々だろう。

こうした方々が、将来独立して、フリーランスとして稼げるようになると日本の明るい未来がみえてくる。地方に定住とはいかずとも、多拠点居住者やふるさと納税者が増えれば、人口減少は避けられずとも、若い人たちが増えて地方も少しずつ活性化していくだろう。

(中略)

日本でフリーランスといえば、社員ではできない作業を安い費用で委託され、いつ切られてもおかしくない個人業者としかみられていない。一方、米国では、社員でできない、スキルの必要な業務を、高い費用を支払ってまでお願いされるのがフリーランスなのだ。そうしたフリーランサーは、PCを片手に全世界を飛び回る。そうした需要を獲得していくのが、21世紀後半の観光地であろう。

日本では、フリーランサーのためのセーフティネットも充実しているとはいい難い。おそらく今後、大企業で働く人は減り、独立して働きたいという優秀な方々が増えてくる。そうした方々を歓迎し、育て、常に交流できている地域が生き残っていくだろう。

(中略)

10年後は、これまでのようなレジャー目的の1泊型観光客は半減しているだろう。50年間の固定客だった団塊の世代がレジャー需要からもリタイヤするためだ。

需要不足から、中小の温泉旅館等の観光事業者も半減してしまうのはやむを得ない。しかし、供給量まで半減してしまうと、一気に地域は廃れていってしまう。

10年後にメイン市場となっている現在の40代をどう取り込んでいくかを考えたとき、現在まだない観光需要を創造していくしか方法はない。1つは、資本主義で成功した国内外の方々を迎える、

(中略)

古民家をリノベーションした分散型ホテルでもいい。1泊10万円、20万円する高級な宿泊施設が日本中に点在していくと思う。もう1つは、常にPCを(そのころはPCも進化していると思うが)持ち歩き、いつでも、どこでも自分の仕事ができるというフリーランサーもしくは兼業家が滞在して、地域の交流の場ともなるワーキングスペースに通うという、すでに海外では当たり前となりつつある観光地の姿だ。そのために、廃業した旅館が地元資本により新たにリノベされ、短期滞在型の居住空間として生まれ変わることや、映画なら3秒でダウンロードできる5G(そのころは7Gくらいか)が地域じゅうにいき渡っていることが前提となる。起業家予備軍を育てるための若者向けの滞在型学習も根づき始めるころだろう。


井門隆夫(2020)「観光イノベーションで地域を元気に 第34回」『センター月報』2020年2月号

感想

10年後の観光地あるいは旅館経営を考えると、「レジャー目的の1泊型観光客」への対応だけではなく、それ以外の新しい需要を創り出していく必要があるようです。そのための準備に、今年から取り組んだ方が良いのかもしれません。