お酒の楽しみAtoZ vol.06

新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

私どもの機関誌「Monthly」では、村山和恵氏より、お酒にまつわるコラムを毎月、ご寄稿いただいております。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

お酒の楽しみAtoZ

酒席のお作法

「酒席での振る舞い」

鎌倉時代より武家の礼法として成り立ってきた小笠原流礼法ですが、その教えの中には酒席での作法も存在しています。中には現代に通じていると思うものもいくつかあります。例えば「いささかも油断なく気を使うべし。殊に酒盃に酔い候えば、こころがけてさえ落度あるものにて候。」からは、当時の人たちも、お酒の席で無礼がないように細心の注意を払っていたということが理解できますし、「若きものなどは乱舞の座にのぞみて、口をつむぎたるは見苦しきものなり。」は、宴会のような場では酒席を楽しみ、余興等についても積極的に参加しましょうという意味合いですが、いずれも面白さを感じました。

さて、酒席での具体的な振る舞いについては、一般的なものとしては、お酌をするときや受けるときはお銚子やお猪口を利き手で持ち、もう片方の手を器に添えますが、こちらは落とす危険を防ぐためとなります。このとき、お酌をする人がお銚子を持っている利き手の掌を天井に向けた形でお酌をすることを「逆手注ぎ」と言い、好ましくない振る舞いであるとされています。武士が相手に刀を突き付けたときの手の形になり、死を連想させて縁起が悪いからという説があるそうです。

また、よく質問を受けるのが「お銚子の注ぎ口を使わないのが正式か?」ということです。こちらについては使っても使わなくても誤りではないので、周囲の状況を見ながらの判断で良いかと思います。ちなみに、注ぎ口を使わない理由として3つ、①「円の切れ目=縁の切れ目」となり縁起が悪い ②昔武将を暗殺するために注ぎ口に毒を塗ることがあり、それを避けるため ③注ぎ口の逆側から注ぐと相手から見て宝珠の形になり、縁起が良い、などが存在しているようで、探ってみると楽しいものです。

「ねばならない」ものではない

さて、巷には数多く礼儀作法やそれらが説かれた書籍や、セミナーも存在しておりますが、いずれにおいても「いかなる場合も、そうでなければならない」わけではないということです。形ばかりにこだわりすぎると、状況によっては不自然な立ち振る舞
いになり、悪目立ちしてしまうこともあるでしょう。

「水は方円の器にしたがう心なり」という言葉が意味するところは、水はどのような器に入れても水であり続けるといったことですが、私たちにおいてもその時々で、周囲への心づかいからなる自然な振る舞いができることこそが重要なのです。このようなご時世だからこそ、他者への心づかいを忘れることなく、美しく振る舞いたいですね。


村山和恵. お酒の楽しみAtoZ. Monthly. 2021, 10月号, pp.28-29.

感想

村山先生は、2020年に小笠原流礼法の師範を取得されているだけに、酒席での振る舞いに対する考え方など、大変に勉強になりました。その一方で、「いかなる場合も、そうでなければならない」わけではない、という言葉に気持ちが楽になりました。