いま時の若者気質

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報2月号」では、いま時の若者気質について井門先生のゼミ生を通じて、現代の大学生の一端をご紹介していただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

今どきの若者気質

いま時の若者気質

1.島への移住トライ

もともと大学近くの古民家を間借りしてイベント等を行うサークルに所属していたS君。ゼミに入ってすぐの2年生夏に十日町市を訪ね、伝説の古民家シェアハウス「ギルドハウス十日町」に泊まり、地方に移住した方々や旅人と接したことがきっかけになったのだろう、その後ゲストハウスに目覚め、全国のゲストハウスを訪ね歩き始めた。3年生になると、調査に訪れた群馬県の過疎地に立地する小さな温泉旅館で週末にアルバイトを始め、宿泊業の経営に興味を持ち始めた。そして、3年までに単位を全て取得し、4年になってから長期インターンシップを行うため、毎年訪れていた離島に移住した。もちろん、インターンシップということはそのまま島で働くことを本人も目指していた。

しかし、秋も終わりに近づくころ、地方への移住は時期尚早だったと島から戻ってきてしまった。背景には、「『移住』ではなく『永住』を前提とした島での生活」や「観光業での少ない報酬」に不安が募ったことがあった。もちろん、そうしたことを事前に理解していなかった反省は残るが、中途半端に我慢するのではなく、地方の課題を心に留め、一度「都市でも働いてみたい」という希望を叶えることとなった。

とはいえ、新卒一括採用の日本では4年秋に就職活動を始めても就職できる企業は限られている。そのため、もう1年大学に残ることを決め、地方と都市の両方で働く体験をしながら、地方の課題や可能性について論文として書き留めることを目指している。

おそらく彼は、自分自身の失敗を通じて、人生の成功に向けた第一歩を記すことができたと思う。日本では「成功を目指す」より「失敗しないことを是とする」ことがある。しかし、失敗しなければしないほど出世するような国ではイノベーションは起こらない。

2.お金への執着

ただ、S君にも理解して欲しかった点もある。それは「給与が少ない」といっていた点だ。「島では給与が少なく、子供が生まれても大学に通わせる貯金ができそうもない」、「都会で働けば貯金ができる」という思いを持っていた。しかし、そこには「生活コスト」が抜け落ちている。島の給与でも立派に子育てはできるし、都会の給与でも貯金が底をつくことはある。むしろその可能性のほうが高いと思う。どうしてもまだ社会経験がないため仕方ないのだが、「初任給、手当、福利厚生、休日・休暇ばかり聞きたがる学生には期待しない」と口を酸っぱくして伝えてもなかなか治らない。

最近の若者に感じることの第一は「お金への執着」が強い点だ。もちろん、昔から学生は貧乏と決まっているものだが、最近のアルバイト時給は4ケタが当たり前。2つも3つも掛け持ちして毎日アルバイトに精を出していれば、お金も貯まるだろう。しかし、「お金、お金」と連呼する背景として、値上がりを続ける学費の負担を背負っている学生も増えたことや、収入基準が緩和されたため奨学金の受給学生が多いことが想像できる。そのため、せっせと貯金をする学生が多いのだ。漠とした将来への不安がお金への執着を強めている。

(中略)

3.行動力はあるが

現代の若者が優れた点は、その「行動力」だ。S君もそうだが、自分が興味を持ったことに関してはすぐにアクションを起こす。様々な人に出会い、感化され、自己成長していく。そのきっかけをつかむのはうまい。一方でモノに対する消費欲は低い。欲しいモノがあるから行動するのではなく、あくまで人脈づくりや自己成長のために行動する。反面教師にしているのは、自分の親世代が経験したであろうバブル経済だ。バブルの頃の話や歌は心のなかではバカにしているのでその世代の方は十分に注意されたい。

一方で、社会に出る就職活動の瞬間、「自分のやりたいこと」がみつからず、不安になり、判断がつかなくなる。若い分、様々な人や仲間に感化はされるが、群れることがそれほど好きでもないので、人脈もそれほど深いものは作れていない。

タバコも吸わず、ビールも飲まない。飲むのは安いカシスオレンジのみ。居酒屋で私が出すよといっても安いものしか頼まない。やさしいのだ。人とのコミュニケーションは常にLINE。お金がかかる電話はかけないし、電話にも出ない。電話はつながっている相手とのLINE電話のみ。メールもあまりしないし、Facebookもやらない。社会との強い接点がないので、メンターがいない。恋人はその分、作りやすい。女子は、女性の労働参加が当たり前になった時代の申し子だけあって仕事に不安がない分、暮らしを優先し、20代での結婚・子育てを目指している。それが実現すれば、少子化にもピリオドが打たれるはずと期待したい。

就活の場面でも、「どんな暮らしをしたいか」を尋ねることがあれば、自信をもって語り続けるだろう。しかし、「どんなキャリアを積みたいか」を尋ねても明確な答えは持ち合わせていないのが現代の若者だ。

4.地域で学ぶ

ここまで大学に関わってきて、悔しいのがこの点だ。行動力のある若者に社会にふれる機会を提供すると、自らアクションを起こし、様々な人に出会い、突き抜けた発想も得て、時々失敗してもくじけずに次を目指しているのに、「どんなキャリアを積みたいか」の答えが出てこない。

つまり、社会にふれてメンターに感化され、アクションを起こす機会がまだ足りないのだ。もっと増えなくてはいけないのに、時間はアルバイトに消え、不安と貯金だけが残っていく。いっそのこと、地域がキャンパスとなり、学費を抑えてオンラインで授業やゼミを行い、様々な社会人とふれ合いながら人生のメンターを作る4年間ができれば何と素晴らしいことだろうかと思う。テクノロジーの時代にあってできないほうがおかしい。私の目の黒いうちに、なんとか「地域で学ぶ完全オンライン大学」ができることを願いたいし、私も若者に負けずとアクションを起こしたいと思う。

井門隆夫(2019)「観光イノベーションで地域を元気に 第23回」『センター月報』2019年2月号

感想

自分が大学生だった頃とは、かなり事情が異なっていることは分かりました。特に「お金への執着」については普段、大学生と接する機会がないこともあり、全く知りませんでし、少々、驚きました。改めて時代は変化するものだと実感いたしました。