超小型モビリティ デビューに向けてゆっくりと発進!

 

新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。

最近、斬新なデザインの小型車が街中を走っているのを見て、驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。2人乗り、軽自動車より小さくて機動性抜群、電気走行のため静かでCO2の排出なし、軽量なのでエネルギー消費が普通自動車の1/6など、なかなかの個性がある乗り物です。

この小型車(以下「超小型モビリティ」)は国土交通省が導入を進めているものです。交通の省エネルギー化を実現し、あわせて高齢者や子育てパパ・ママなどすべての世代に手軽な足を提供し、生活や移動の質を向上させることを目指しています。二輪車と軽自動車の中間に位置する「新たなカテゴリーの乗り物」とのことです。今日はこの「超小型モビリティ」についてご紹介いたします。

 

超小型モビリティ

▲新潟日産自動車のショールームにて(筆者撮影)

 

実証実験段階での取り組み

現在は試作モデルによる実証実験が繰り返し行われている段階です。超小型モビリティを活用するばかりでなく、地元に生産拠点を設ければ産業振興にもつながるとの思いもあり、昨年度も全国各地で積極的な実証実験が行われました。

超小型モビリティの導入については、これまで国土交通省により以下のような取り組みが行われてきました。

  • 2010~2012年 全国13地域で実証試験を実施。超小型モビリティの潜在ニーズや利活用場面などを探る。
  • 2013年1月 「公道走行を可能とする認定制度」を創設。
    ・ 認定制度の対象とする超小型モビリティを、軽自動車の規格内、乗車定員2名以内、定格出力8kw以下などと定めた。
    ・ 高速道路を走行しない、地方公共団体等により交通の安全が図られている場所において運行することなどを認定の要件とした。
  • 2013~2015年 超小型モビリティの導入促進事業を通じ実証実験を継続。先行導入や試行導入を行う自治体を補助金で支援し、活用事例の積み上げを図った。
  • 2016年3月 シンポジウム開催。実証実験の事例や普及に向けた課題が報告されるとともに、今後は業務、観光、日常使用のカテゴリー別に、時間をかけて普及を図る方針が示された。

実証実験は、自治体が実験を行うエリアと民間事業者を決めたうえで実施されます。この3年間に全国各地で41件の実証実験が行われ、940台の超小型モビリティが商業地やオフィス街、観光地などの公道を実際に走り回りました。多くの自治体がホームページなどで実験の様子を公表しています。

 

新潟県での実証実験

新潟県でも以下の実証実験が行われました。実証を受託したのは公募で選定された株式会社U・STYLE(新潟市)です。

 


実証期間 2016年2月19日~3月20日
実証場所  新潟市中央区の市街地・鳥屋野潟周辺地区(注1)
使用車両  日産ニュー・モビリティ・コンセプト2台
2人乗り、電気走行、最高速度 約80km/h
車両規格  全長2.34m 幅1.23m 高さ約1.45m(注2)
実験内容  様々な業態の企業や観光客、一般市民などの個人に利用してもらい、利用状況をヒアリングのうえ有効性と今後の活用策を検討。

(注1) 鳥屋野潟 新潟駅の南西3kmに位置する面積1.37km2の潟。四季を通じて水辺の景色が楽しめる。
(注2) 参考 軽自動車の規格 全長3.50m以内 幅1.48m以内高さ2.00m以内


 

超小型モビリティ

▲新潟市内の商店街を「ちょっと」訪問
  (写真提供 U・STYLE社)

 

利用者の反応や意見などをU・STYLE社の松浦和美社長に聞きました。企業、個人に共通の反応としてまず挙げられるのは、斬新かつ洗練されたデザインや目新しさなどのため注目度が抜群ということです。オフィス清掃、不動産賃貸、工務店、介護福祉など、様々な業態の企業が地域を巡回しながらの営業で利用したところ、業務の話題の前に超小型モビリティの話題で大いに盛り上がったそうです。

普段は家の外に出てこないお客様が超小型モビリティを見がてら見送ってくれた(工務店)、お客様と会話が弾んで嬉しかった(オフィス清掃)など、企業のイメージアップやPRにつながるのは間違いなさそうです。

機能面については、走行音が静か、狭い路地でも楽に走行できるなどの評価は予想できましたが、駐車スペースを取らない点が特に高い評価を得ています。今般の実証実験では、地域の顧客を巡回しながら営業する業種が多かったですが、狭小なスペースでも駐車できてたいへん助かったそうです。

松浦社長は、「企業が超小型モビリティを活用する際は、超小型ならではの機能とともに抜群の話題性などのメリットも生かして欲しい。地域巡回型の企業が、住宅地の隅々まで走り回り、御用聞きをしながら高齢者、単身者、主婦など様々な人たちと会話を交わすことで、地域における人と人の結びつきが強まることを期待している」としています。

 

超小型モビリティ

▲ 道路脇に楽々と駐車。他の自動車の通行を妨げませんよ~。  (写真提供 U・STYLE社)

 

一方、個人向けの活用について、松浦社長は、今般の鳥屋野潟周辺での実証実験もふまえ、滞在型観光と組み合わせるアイデアを披露してくれました。

「バードウォッチング、湖畔散策、ローカルな食や伝統工芸の体験など、鳥屋野潟エリアで寛ぎたい方々を滞在型ゲストハウスでもてなす。ゲストハウスに超小型モビリティを置き、鳥屋野潟周辺を散策する際に利用してもらう。お客様へのサービスとして使うのがぴったりだ。走行音が静かなので、鳥の声を聴き、風を感じ、自然との一体感を楽しんでもらえる。『この土地ならでは』をより一層体感し、魅力を感じてもらえるのではないか」とのことです。

観光拠点に来てもらった後は、備え付けの超小型モビリティでエリアを周遊してもらい非日常を楽しんでいただく、との考えは、観光をPRしたい自治体や特色あるサービスを提供したい宿泊施設などが協同して取り組めるアイデアではないかと思われます。

 

今後に向けて

県の担当部署(産業振興課)では、超小型モビリティの活用方法を模索する一方で、その製造体制を整えることにも取り組んでいます。県内には自動車の部品メーカーは数多く存在しますが最終組み立てメーカーがありません。部品製造から最終組み立てまで一貫してカバーできる体制ができれば新潟県の産業振興に大きく貢献することになります。

2013年2月、超小型モビリティ開発のノウハウを持つ企業が県内に設立されました。現在、当該企業において試作モデルの開発が進められています。工程ごとに厳格な検査を行うため時間はかかっていますが、試作モデルの完成後は、県内部品メーカーと協同で量産に向けた検討が行われるものと期待されます。

新潟県産の超小型モビリティが越後路を颯爽と走り回るまで、まだ少し時間がかかりそうですが、まずは次回の実証実験に多くの企業が参加し、新潟ならではの特色のある活用事例が見つかることを期待したいものです。

 

小型モビリティ・ドア

▲側面を開いて乗車します。窓は通常は取り外し、悪天時に装着します。2月の実証実験では「すきま風が寒かった」そうです。

 

小型モビリティ・運転席

▲運転席はコンパクトにまとまっています。エアコンがないので夏は自然風で耐えましょう。

 

小型モビリティ・座席

▲縦に2人乗りです。後部座席に「もぐり込む」のはやや大変。子供は喜びそうです。

 

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『センター月報』2016年7月号の「潮流 県内最新トピックス 第4回」を加除修正いたしました。