TPP協定により期待される中堅・中小企業のビジネスチャンス

 

こんにちは。TPP関連の講演会で講師を担当したことのある新潟経済社会リサーチセンターの神田です。

昨年10月に大筋合意した環太平洋パートナーシップ(TPP)協定では、広範な品目に及ぶ関税撤廃だけではなく、複雑な関税事務を簡素化することにより、中堅・中小企業の海外展開を後押しするTPP参加国共通のルールが実現しました。そのため、海外にビジネスを展開している大企業のみならず、現在は国内取引に留まっている中堅・中小企業にも大きなビジネスチャンスをもたらす可能性があります。

 

 

 

完全累積制度によるTPP税率の適用

そのひとつに、生産工程が複数国のTPP参加国に及ぶ場合に付加価値の足し上げを行い、その原産性を判定する「完全累積制度」の導入があります。参加各国で累積した付加価値の割合が一定以上であれば、域内での原産性が認められ、関税の優遇(TPP税率)が適用される制度です。

具体例を下のイメージ図を使い説明してみます。現状では、締結国Aの付加価値が20%であるため、原産地規則「付加価値45%」の締結国Bにそのまま輸出しても原産性を満たせず関税の優遇は適用されません。しかし、完全累積制度があれば、締結国Aの付加価値20%に日本の付加価値30%を加えて、全体の付加価値が50%となるため、B国での原産性が認められTPP税率が適用されるというものです。

完全累積制度では、付加価値の高い基幹部品の開発・生産を日本に残したまま関税メリットを享受しつつ、最適なグローバル・バリューチェーンを構築することが可能となるため、部品などを製造している中堅・中小企業にも海外展開のチャンスが大きく開かれるものと期待されています。

 

▲完全累積制度のイメージ図

▲完全累積制度のイメージ図(出典:内閣官房 TPP政府対策本部のホームページ  <http://www.cas.go.jp/jp/tpp/> 2016/3/24アクセス )

 

事前教示制度でスムーズな輸入通関を実現

TPP協定では、自社が扱う物品がどの関税分類に該当するかを事前に書面で確認できる「事前教示制度」が導入されます。物品の関税分類や原産性が事前に示されているため、輸入申告後には迅速な通関手続きにより貨物を引き取ることが可能となります。

また、関税上の特恵待遇適用の可否等を事前に確認することができるため、原価計算をより確実に行うことができるほか、販売計画などを立てやすくなるメリットがあります。

 

新輸出大国コンソーシアムによる総合支援

今後、TPP協定活用を視野に入れた企業では、具体的な事業展開を検討するために、きめ細やかな情報収集と分析が必要になると思われます。政府が昨年11月に公表した「総合的なTPP関連政策大綱」では、中堅・中小企業を支援するための「新輸出大国コンソーシアム」設立が盛り込まれました。

これにより海外展開を図る企業は、JETRОや国際協力機構、中小企業基盤整備機構といった様々な支援機関のアドバイスを受けながら、技術開発や市場開拓、海外企業とのマッチングなどに至るまで、あらゆる段階に応じて、総合的な支援を受けることか可能となります。

 

▲新輸出大国コンソーシアムのイメージ図

▲新輸出大国コンソーシアムのイメージ図  (出典:内閣官房 TPP政府対策本部のホームページ  <http://www.cas.go.jp/jp/tpp/> 2016/3/24アクセス )

 

終わりに

このように企業の海外展開を後押しする総合的な支援体制が整いつつあります。こうしたなか、新潟県内の中堅・中小企業においてもTPP協定をビジネスチャンス拡大の絶好の機会と捉えて、海外へのビジネス展開を積極的に進めていくことが期待されます。