観光イノベーションで地域を元気に

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、観光振興や地域活性化などに役立つヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報4月号」からは、地方の観光業を事例として、地方創生時代に求められるイノベーションに焦点を当てて、「観光イノベーションで地域を元気に」という新しいタイトルでの連載となりました。本日はその第1回原稿の一部をご紹介いたします。

 

井門隆夫 観光イノベーション

 

シェアリングエコノミーの時代

 

現在、宿泊業界では「住宅宿泊事業法案(通称、民泊新法)」の国会審議に向けた議論が白熱している。Airbnb(エアービーエンビー)等のマッチングサイトを通じて、自宅やアパートの1室を事実上ホテルとして使うことを一定程度認めるという法案だ。なかには投資を誘導して民泊専用アパートを建てさせるという動きもあり、宿泊事業者は猛反発をしている。

また、タクシー業界に目を向けると、Uber(ウーバー)が普及しつつあり、タクシーや代行業者に代わり、個人が運転するマイカーをタクシー代わりに有償利用する仕組みが世界的に広がりをみせ、こちらもタクシー事業者は反対ののろしを上げている。

そのほかにも、自宅の軒先をミニ店舗として、あるいは駐車場を有償で貸し出す、これまでになかった新事業が世の中に誕生している。学生が空いた時間に訪日外国人向けのガイドと通訳ができるマッチングサービスも生まれ、通訳ガイドのあり方を大きく変えようとしている。

これらに共通するのは、空いた「空間」や「時間」を有効に使う「シェアリングエコノミー」上のビジネスという点だ。シェアリングエコノミーは、これまでの「所有」という概念を変えようとしている。少なくとも、デフレ時代しか知らない日本の20代の若者の多くはシェアリングエコノミー賛成派であり、こうした若者がポリシーを変えずに育ったとき、既存事業は淘汰の波に襲われるおそれさえある。

(中略)

新潟県のとある商店街。空き店舗もかなり目立つようになり、シャッター通りといわれて久しくなっていた。シャッターを閉めた店舗の多くには自宅として老夫婦が住み続けているため、他人に貸そうにも貸せない状態が続いてきた。しかし、少しずつその老夫婦もいなくなり、都会に住む子息がその自宅をしぶしぶ承継し、完全に空き家になってしまった店も増えていた。

しかし、2016年、自宅以外として承継した空き家に関しても「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」が適用されるようになった。すなわち、承継した親の住宅を売却しても、その売却益にかかる税金に対して一定条件のもと3,000万円までの控除が適用されるようになったのだ。

そこから、商店街の再生が始まった。古い蔵を庭に持つ家は地元の居酒屋が買い取った。蔵を民泊用宿泊施設として改造。地元の家々に友人が泊まりに来たときのゲストハウスとして再生が図られた。夕食は自宅で済ませてもよいし、居酒屋のケータリングを受けてもよい。日中は地元の女性たちの集会所としても機能している。誰かの誕生日会には地元のケーキ屋がケーキを配達してくれる。ゲストハウスの予約はスマホを使い、1時間単位でできるので、日中の利用も宿泊利用としても自由自在。スマホがルームキー代わりにもなるスマートキーが採用されている。そこにはフロントもなく、清掃以外は完全無人で運営され、徹底して生産性が追求されている。

評判は評判を呼び、いまや地元客だけではなく、これまでは縁がなかった観光客までが町に来るようになった。田んぼ脇のレンゲ畑がSNSで発信されて以来、意外な観光スポットになったためだ。そこまでの移動は隣接する駐車場に置かれたシェアカーを使い、いつでも行くことができる。

別の八百屋だった空き店舗は、地域ファンドが出資するまちづくり会社が買い取り、観光客を相手にしたワインバーになった。賃貸で運営するのは、町の地域おこし協力隊だった若者だ。そして、1店舗、2店舗とふたたび店に灯がともるようになっていった。

こんなフィクションも、いま目の前で起ころうとしている。様々な政策とシェアリングエコノミーが、新しいイノベーションを起こそうとしているためだ。皆さんの町でも、新たなイノベーションの胎動が聞こえてきていないだろうか。

井門隆夫(2017)「観光イノベーションで地域を元気に 第1回」『センター月報』2017年4月号

 

感想

確かにフィクションではなく、数年後には実現する話かもしれません。遠い将来のこととは思わず、「シェアリングエコノミー」を念頭に置きながら、今からどんな準備ができるのか?を考えみてはいかがでしょうか。