観光情報を発信する際に気をつけたい点とは?

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

観光による地域活性化に取り組む自治体が多くなっています。特に最近は外国人旅行者の誘致に力を入れているところが多いようです。

こうした中、私どもの機関誌「センター月報11月号」で毎月、連載をお願いしている井門観光研究所の井門隆夫先生は、外国人旅行者の誘致と合わせて、観光関係者で是非考えていただきたい「観光地の情報発信のあり方・考え方」について、独自の提案をされています。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

井門隆夫氏 地域観光業のススメ方・80

 

勇気をもって発言・発信しよう

観光の現場を全国規模で眺めると、どこもインバウンドシフトの方向に動いている。しかし、水を差すようなニュースがあった。それは「2016年8月は訪日外国人は増えているにもかかわらず、外国人宿泊者が減った」というニュースだ。観光庁は「急増するクルーズ船の影響で、入国しても宿泊せずに船中泊という人が増えた」と解説していた。宿泊業界の人たちは「民泊が急増して旅館・ホテルに泊まらなくなっている証拠」だといっていた。いずれも正しい解釈だろう。

また、そうした解釈に加え「そもそも日本の旅館・ホテルの魅力が知られているか」も問題にする必要があると思っている。この傾向が続けば、宿泊業が減る。すると、クルーズ船に泊まりさえすればいい外国人客は増えても、泊まるところのなくなった日本人観光客までどんどん減っていくスパイラルに陥ってしまう。

ちなみに、日本人観光客はどのような旅館・ホテルに魅力を感じて泊まっているかというと、年々、単なる「近場(日帰り圏)」や「有名観光地」に傾斜しているような気がする。これは宿そのものの魅力ではなく、「認知」の問題だ。つまり、商圏から離れた宿は消費者が魅力を感じるかどうか以前に、その存在を「知られていない」のである。

PRの弱点は「消費行動を左右するまでには至らない」と前述したが、広報や広告宣伝を武器とする企業でも「商圏から離れていたり、有名ではない立地」には宿を造らない。一方で、既にそうした地域に立地する宿は地元需要に頼るか、離れた商圏から宿泊客を「連れてくる」旅行会社に頼らなくてはいけなくなる。言い換えると、商圏から離れた観光地はなかなか現状改革ができず、PRを強化する意義も見出せず、常に消費市場の蚊帳の外に置かれるようになる。

そうした地域では、観光PRは行政が担うことになる。ところが、行政は「無難」が好きだ。市民や議員から指摘を受けるリスクのない手法に落ち着き、市民受けはしても、遠い商圏の消費者にまで届く強いメッセージを創ることは難しい。ましてや、ここでも無難な旅行会社にまちづくりを頼んでしまう。ツアーは有難いが、手数料を払うのは民間事業者だ。結局、PRからどんどん後退すると同時に、旅館はますます疲弊しかねない。

これを繰り返しているうちに、外国人はもとより、日本人も訪れなくなり、地域観光はどんどん下降線をたどっていく。

では、どうすればよいか。様々な局面で「批判をしない」「批判を恐れない」ということが重要だ。

まずは、宿について。「良い宿」とは「その宿を良いと思う利用者が来ている」宿のことだ。批判を書くような客が来たとしたら、それは「間違った客」だ。宿のサービスが悪いのではない。宿の情報発信の仕方が悪いのだ。

利用者も宿を批判したり、リスクヘッジをする前に「自分自身が宿に合わせる」努力をすべきだ。自分が変わらない限り、宿の批判は一向に減ることはない。

行政は言わずもがな、市民や議員の批判を乗り越えよう。地域に来てほしいのは市民や議員ではない。誰に向けて発信しているのか、勇気をもって発言・発信しよう。

そして、(中略)メッセージ性の強いPR素材をどしどし世の中に発信し、消費を誘導し、新たな需要を創っていかない限り、明日の地域、いや明日の日本はない。

 

井門隆夫(2016)「地域観光事業のススメ方第80回」『センター月報』2016年11月号

 

感想

批判を受けるのは誰も嫌なものです。そのため、どうしても問題が起こらない、無難な方向に流れがちです。ただし、井門先生がおっしゃるとおり、弱いメッセージでは遠い商圏の消費者にまで届くことはないのでしょう。

地域のことを思うならば、勇気をもって継続的に情報発信することが大切なのだと改めて感じました。