新潟から世界に挑むトップアスリートを輩出!健康ビジネス協議会、選手育成のプラットフォーム創りに尽力



新潟経済社会リサーチセンターの佐藤です。今回は世界のトップアスリートを継続して生み出すプラットフォーム創りを目指す健康ビジネス協議会の取り組みをご紹介します。

2020年の東京オリンピックまで1年余りとなりました。 今回のオリンピックではサーフィンやスケートボードなど若者に人気のスポーツが競技種目に加わることとなり、一層の盛り上がりが期待されます。代表選手選考に向け、新潟県注目の1人は平野歩夢選手です。冬季オリンピック ソチ大会(2014)、平昌大会(2018)のスノーボード競技で連続して銀メダルを獲得した技術を活かし、東京大会ではスケートボードの代表選手を目指すことを表明して猛練習に励んでいます。

新潟県内におけるスケートボード普及の取り組みは、平野選手の地元でもある村上市に本部を置く一般社団法 人日本スケートボーディング連盟(以下「JSF」)などを中心に行われています。この競技は街なかでのストリート・パフォーマンスから発達した経緯もあり、 小中学生を含む若者の間で特に人気があります。若手選手の中には世界トップレベルを目指す者も大勢いますが、 その域に到達するのは簡単ではありません。本人の努力はもちろん必要ですが、技術のレベルアップだけではなく、お金の問題を始めとする競技以外の様々な課題もクリアしなければなりません。有望な若手選手が一流コーチを頼み、施設を使って練習し、各地の大会や海外遠征にも参加するとなれば年間数百万円もの費用が必要となるうえ、コーチや施設管理者、大会事務局、 宿泊先など多方面の調整も行わなければなりません。

さらに厳しい練習に耐えられるよう医療機関において継続した身体点検を受け、高校生であれば学業も疎かにできないなど、選手個人ですべての課題に対応することは困難です。世界に挑むトップアスリートの育成には、身体、健康、生活面など、選手を多方面から支える仕組みを構築して、選手が肉体的にも精神的にも安心して練習に専念できる環境を整えることが必要です。

 

日本スケートボーディング連盟

練習に励む子どもたち(JSF・健康ビジネス協議会提供(以下同じ))

 

 

日本スケートボーディング連盟

 

 

健康ビジネス協議会による選手育成の環境作り

新潟県内においてはJSFがイベント開催やサークル 活動を通じてスケートボードの普及や選手の育成に努める傍ら、一般社団法人健康ビジネス協議会(以下「健康ビジネス協議会」)が、同協議会のNWSプロジェクト(注)を通じて選手を育成する環境作りに取り組んでいます。このプロジェクトは新潟から世界に挑むトップアスリートを輩出し続けるため、前述のように選手が健康で安心して夢を追えるような環境作りを目 指すものです。練習施設の整備や合宿機会の提供などのほか、協力企業を募って競技大会の開催を支援するなど、様々なサポートを通して選手が競技に集中できる環境を整えています。選手の意見や要望を聞きながら支援の仕組みを充実させており、現在はJSFと協働でプ ロジェクトを進めています。

(注) NWS:新潟、育てる、スポーツ支援システム、の頭文字を取ったもの。新潟からトップアスリート及びスポーツ 関連事業を継続して生み出そうとの想いが込められている。NWSの活動のひとつがNWSプロジェクト。

健康ビジネス協議会における選手育成の環境作りの取り組みは、地域の子どもたちにスケートボードの楽しさを伝えようとする有志グループの活動から始まりました。2003年、平野歩夢選手のお父さんを含む有志グ ループが「日本海スケートボード協会」を立ち上げ、 村上市から旧市民体育館の土地と建物を借り受けてスケードボードの屋内練習設備を整えました。この施設を活用して毎週1回子ども達向けの教室などが開催され、当時5歳だった平野選手もこの施設で遊びながら腕を磨いたとのことです。

スケートボード

▲当時の子ども達向け教室の様子

2009年の「トキめき新潟国体」では約30人の子ども 達によるスケートボードのデモンストレーションが披露されました。2015年にはJSFが設立され、上部団体と連携を行いながらスケートボードの普及や選手育成 に取り組む体制が整えられました。一方で平野選手の大会遠征などが増えるに従い、前述のように技術指導以外にも様々な支援が必要であることが認識されるようになりました。有志グループの中に健康ビジネス協議会の会員企業が入っていたこともあり、同協議会におけるNWSならびにNWSプロジェクトの取り組みにつながっていったのです。

選手を支援する仕組みが徐々に整いつつある

NWSとJSFによる協働の結果、高校との連携により遠征が続く場合でも通信講座により授業出席をサポートする仕組みが整えられました。また、医療機関との連携では競技や練習時のケガに緊急対応してもらう体制ができました。将来的には競技特有の動きにより特に負担がかかる身体部分を定期的に点検してもらうことも検討しています。また、地元村上市の旅館の数部屋を年間で借り上げて長期合宿に備えるなど、選手を支援する仕組みが少しずつ整いつつあります。

練習施設の整備や若手有望選手を育成する仕組み作りにおいても大きな成果が生まれています。JSFと NWSの取り組みにより、16年9月、日本初となる移動式のスケートボード設備が完成しました。これまでの練習設備はコンクリート製の据え置き型が主でしたが、この設備は木製で、必要に応じて分解・組み立てができます。このため、選手の練習に活用するほか、この設備を各地に運んで競技会や体験イベントを開催することが可能となりました。JSFは、この施設をあちこちに運んで各地でスケートボードの普及や認知度アップを図りたいとしています。建設に必要な資金約1,500万円は、NWSに賛同する健康ビジネス協議会の会員企業、JSF、ならびに地元の木材資源活用を目指す新潟県などの協力を得て賄いました。滑走面の木製部分は県内産の越後杉を使用し、特殊加工技術により湾曲形状を作り上げました。この施設の製造依頼が他県から入り始めているとのことで、地元の産業振興につながれば喜ばしいことです。

スケートボード場

▲日本初の移動式スケートボード設備 高さ約4.5m、幅約8m

有望選手を育成するプログラムもスタート!

さらに19年3月にはNWSによる若手有望選手の認定と育成プログラム授与が行なわれました。大勢の応募者の中からJSF大会の成績などを参考に、強化選手1名、育成選手3名、ジュニア育成選手4名が有望選手と認定され、ランクごとに海外遠征への参加や専属コーチも配置する夏季・冬季の合宿への参加などの強化メニューと必要な予算が授与されまし。ジュニア育成選手に認定された4名は県内出身者です。認定式では健康ビジネス協議会の吉田会長から認定証が手交され、各選手から「世界を目指します!」「結果を出せるよう頑張ります!」などと力強い決意が表明されました。

認定式①スケートボード

スケートボード

▲NWSが若手有望選手を認定

施設の整備、学校や医療機関との提携などに加え、有望な若手選手への訓練プログラム提供も実現したことで、トップアスリート育成に向けた環境整備の基本的な部分は整いました。今後のNWSとJSFとの協働について、JSFは合宿や遠征などを通して選手を育成するとともにスポンサー企業探しにも注力することとし、一方でNWSは若手選手の競技生活、学業、健康などのバランスを点検し、さらに金銭面、私生活などに関する注意喚起も行なって、小中学生を含むアマチュア選手の健全な育成に気を配る予定です。若手の有望選手が実績を積み上げるに従い、スポンサーの申し出や共同事業の申し込みが急増するとのことです。プロ契約前の小中学生などが企業からの勧誘に翻弄されないよう、学校やご両親とも相談し、中立的な立場からしっかりとアドバイスを行いたいとしています。

地元に国内最大級の競技施設も誕生!

さて、東京オリンピックに向けてスケートボードの注目度が増すなか、村上市では老朽化した施設に替わる新しい施設の建設を進めてきました。この4月19日に竣工式が行なわれ、当市に国内最大級の屋内スケートボード施設が誕生しました。スケートボードなどの教室を開催して市民がスポーツに参加する機会を増やすとともに、競技大会を誘致したり選手の合宿や強化練習にも活用される予定です。村上市は、スケートボード競技の国内拠点施設の認定を取得してトップアスリート育成やジュニア選手の発掘に努め、「スケートボードの聖地創造と新たなスポーツ文化の創造」を目指すとしています。


国内最大級の屋内スケートボード施設

▲国内最大級の屋内スケートボード施設(村上市提供)

競技の普及や選手育成を目指すJSF、選手育成の環境を整えるNWSの取り組みとともに最新の屋内競技施設も揃うことで、「スケートボードと言えば村上市!」と認知度が上がるものと思われます。競技会や合宿の誘致によりハイレベルの選手が集うことで賑わいが生まれ、その賑わいが競技設備や競技用具などの関連ビジネス、さらに宿泊、飲食、物販など地域の様々な産業の振興へ波及することを期待したいものです。


=====

「センター月報」 2019年6月号の 「潮流 県内最新トピックス 第23回」を加除修正しました。