ベトナムでの日本語教育と日系企業への就職の現状と今後

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報7月号」では、観光業界での外国人労働者の受け入れについてご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

外国人労働者 旅館

 

共生経済・社会へと進む日本~外国人労働者がやってくる~

 

1.ベトナム・ダナンへ

5月中旬、あるホテルグループ経営者の方とベトナムに飛んだ。その方は筆者が以前からベトナムの外国語大学と学生交流しているのを知っていて、同行したいと申し出てこられたので快諾した。その大学は国立大学で、日本語学科で各学年100人の学生が学んでいる。ネイティブの日本語の先生が少ないので、学生を連れて交流訪問すると喜ばれるのだ。そこで、5年前から大学間協定を結び学生間交流を行なっていた。おそらく、その経営者の方は、私とある同じ「思い」を持っていたと思う。

ベトナム中部のダナン国際空港は、2017年秋にAPECが開催されたのに伴い国際線ターミナルが新設され、空港がベトナム戦争激戦地の南軍の前線基地だったことなど想像ができないほど、リゾート感にあふれている。成田からの直行便で6時間。ベトナム三の都市は、インドシナ半島を貫くASEAN東西経済回廊の東の玄関口として港湾機能等が急速に整備され、経済都市として発展しつつある一方、ヤシの木が並ぶ長く美しいビーチを備えたリゾート地でもある。ビーチリゾートの先には、日本人が中世に朱印船貿易で交易をしていた世界遺産の町ホイアンがある。これほど観光資源に恵まれた人口150万人都市は珍しく、市内のバーでは世界中からきた観光客が半そで短パン姿でビールを傾けている。

ダナン市内には、日本語学校のいくつかと、日本語学科を持つ大学が2校あり、合わせて約1万人が日本語を学んでいる。ベトナムでは、英語と並び、日本語が義務教育の第一外国語になっていることはあまり知られていない。それほどの親日国なのだ。外国語大学でも日本語学科の入学難易度は英語学科とともに最も高く、優秀な学生が集まってくる。日本語学科の学生は主に地元に進出した日本の製造業に就職をする。製造業としては男子学生が欲しいのかもしれないが、日本語学科の学生の9割が女子というのが特徴だ。彼女たちは「いずれ日本の企業に就職して日本で働きたい」という夢を持っている。

彼女たちは卒業時には日本語検定2級という資格を持ち、日本で働けるほどの語学力を兼ね備えている。しかし、日本の入国管理が厳しく、日本で働くためにはプロ通訳等の高度専門職でしか就業ができない。そこで、私は在学中に日本の大学へ交換留学の道を、ホテル経営者は企業実習として3か月間のインターンシップの機会を作るべく訪問したのが今回の目的だった。

(中略)

4.いよいよ開国へ

そして、2018年6月、ビッグなニュースが新聞一面に載った。政府は経済財政諮問会議で外国人労働者の受け入れ拡大を表明。「骨太の方針」と通称される経済財政運営の基本方針に「特定技能」という新たな在留資格を明記し、2019年4月から施行することで、これまで認めていなかった単純労働に門戸を開き、2025年までの就業をめざすことになった。

在留期間は5年間。農業、建設、宿泊、介護、造船分野等で、新たに50万人の外国人労働者が認められる。日本人の生産年齢人口は、2025年には約7,000万人に減っている。外国人労働者は2017年現在で約130万人なので、2025年には少なくとも200万人になっているだろう。そう考えると7年後には日本の生産年齢人口の約3%が外国人ということになる。

コンビニ店員は外国人留学生がなくてはならず、農業や建設でも技能実習生が屋台骨を支えているように、その頃には、宿泊業は特定技能の就業ができるようになっているので、スタッフの1割以上は外国人になっているだろう。

同じ頃、政府目標通りにいけば、外国人旅行者の延べ宿泊数は3億人泊を超えている。観光の現場では、利用客もスタッフも外国人が目立つ時代が10年も経たないうちにやってくるかもしれない。

さて、その心構えや準備ができているだろうか。私は毎月のようにベトナムに飛ぶ。今、動かなければ、優秀な外国人は中国や韓国に行ってしまうぎりぎりのタイミングだ。「英語ができない」などといっている場合ではない。日本は、外国人との共生社会を築かねばいけない時代が目の前に迫っている。

 

井門隆夫(2018)「観光イノベーションで地域を元気に 第16回」『センター月報』2018年7月号

 

 

感想

ベトナムの義務教育では、第一外国語の一つに日本語が導入されているとは知りませんでした。

そこで、念のため在ベトナム日本国大使館のWebsite¹で確認してみると、2016年9月から小学校3年生からの第一外国語として、日本語が取り入れられ、ハノイ市内の4校とホーチミン市の1校において,日本語教育クラスが開講されたそうです。なお、2016年度から17年度までは上記5校で試験的に実施し,その後、順次ベトナム各地に広がる予定とのことです。日本語が第一外国語の一つとなっているだけではなく、小学校3年生から学んでいることにも驚きました。

日本語が広がるとともに、両国の人的および経済的交流が進むことに期待したいところです。

 

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¹ 在ベトナム日本国大使館(平成28年9月14日掲載)「ベトナムにおける初等教育での日本語教育の開始について」
<http://www.vn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/20160914_JP_Culture_Nihongokyoiku.html>
(2018年7月9日アクセス)を参考としました。