スマートウエルネスで 健幸まちづくり

 

新潟経済社会リサーチセンターの尾島です。

高齢化・人口減少が進むなか、地域住民が「健幸(身体面の健康だけでなく、人々が生きがいを感じ、安心安全で豊かな生活を送れること)」であるために、そこに暮らすことで健幸になれる「まち」としてSmart Wellness City(スマートウエルネスシティ)を目指す自治体の取り組みがあります。

こうした中、10年以上前から健幸をテーマにハード・ソフト両面で市の政策を進めてきた見附市の健幸まちづくりの事例をご紹介いたします。

 

スマートウェルネス

 

見附市の健幸まちづくり

健幸まちづくりの取り組み経緯〜

見附市は、長岡市と三条市の間に位置しており、居住環境の優れた土地でした。しかし、同市はニット繊維の産地として有名でしたが、海外製品との競合により、厳しい経済環境にありました。

久住時男市長が就任後は、産業以外での強みを活かし、市民との間に自助、共助、公助の関係を築くことで健幸まちづくりを基本とした自治体運営を進めています。平成の大合併が進んだ当時、「健康」をまちづくりの旗頭にする自治体は全国的にもめずらしく、筑波大学の久野教授の健康なまちづくりと関わることで施策として進める契機となりました。

当時は議会でも、「健康」を施策にすることに「公費」を使うことには疑問の声もありました。今では健康寿命の延伸は国の重要政策に位置付けられていますが、健康なまちづくりを自治体の前面に打ち出した総合政策は前例のない取り組みでもありました。

 

スマートウエルネスシティの推進

健康づくりを推進するためには、「生きがい」「食生活」「運動」「健(検)診」が重要であるため、これを市の健康施策の4本柱としました。さらに市の中心施策として継続的に実施するため「見附市健幸基本条例」や、「見附市歩こう条例」を制定し市民への浸透を図りました。

基本施策のひとつとして「社会参加、外出のできる場づくり」があります。市民がいきいきと健康を保つためには、定年で仕事を離れた高齢者でも市民の側からの多彩な交流メニューに参加することのできるよう2004年に「ハッピーリタイアメントプロジェクト」をスタートしました。2005年の51からスタートした事業数は16年には285、参加者数は6千人にまで増えています。

一方、同市では3人に1人が高齢者と高齢化が進むなかで、車に頼らずに暮らせる都市設計のため「中心市街地を中核とした賑わいづくり」を進めました。見附市は昭和の合併時に今町と合併したことから、2つの中心市街地があります。今後はその中間に位置するJR見附駅周辺を3つ目の中心地として市民の交流の場にしたいとする構想をもっています。

市街地の拠点を結ぶコミュニティバスとコミュティワゴン、さらにデマンドタクシーと路線バスを組み合わせて公共交通を再整備し、中心市街地と周辺地域間の市民の足を確保しました。健幸ベンチ456基を歩道等に設置するなど歩きたくなる快適な歩行空間の整備も進めています。

 

スマートウエルネスを支える市民活動

こうした政策を進めるためには、市民の協力が不可欠です。同市では、地域コミュニティ組織の再編をこれまで進めてきました。市民の理解を得るため1組織の設立には1年以上の準備期間をかけて10年間で10地域をカバーし、18年に最後の見附町部西地区での組織を立ち上げました。このように時間をかけてコミュニティ組織を再編した結果、伝統文化の復活や地域の学校への住民の協力、さらに生ゴミの分別や、防災訓練への参加者の増加など、共助の気持ちが住民間に定着しソーシャルキャピタルが大きく向上しました。

市民が目的を持って社会参加し、外出するためには、交流の場づくりも重要です。このため中心市街地から撤退したスーパー施設を活用した市民交流センター「ネーブルみつけ」を開設し、まちの情報提供、行政サービス、物販・市民活動の場として年間50万人の来場数があります。また、老朽化した高齢者向けの温浴施設をコミュニティ銭湯として再建し、みつけ健幸の湯「ほっとぴあ」を16年にオープンしました。市民交流の場としてイベント等を開催するなど、健幸まちづくりのコミュニティの場として市内外から20万人が利用しています。

また、産業団地にあるイングリッシュガーデンには年間14から15万人の来場者があります。造園家のケイ山田氏の監修の下で設計された英国式の園内では、草花の植栽など日常的なメンテナンスを市民ボランティアグループ「ナチュラルガーデンクラブ」が担当し年間6万ポットの育苗により公共施設等の緑化にも貢献しています。

こうした見附市と市民の活動を中心とした「健幸まちづくり(スマートウエルネスシティ)」の結果、見附市の介護認定率は16.9%と全国平均(18.0%)、新潟県(18.6%)を下回ります。市民アンケート結果でも見附市を「住みよいまち」「魅力あるまち」とする回答割合が年々上昇しており、17年に見附市は第1回コンパクトシティ大賞最高賞を受賞、さらに10月には第5回プラチナ大賞最高賞を受賞するなど国レベルでの高い評価を受けています。

 

イングリッシュガーデン

 

=

『センター月報』2018年2月号の「地方叢生の視点」を加除修正いたしました。