小規模な設備投資で生産性向上

 

新潟経済社会リサーチセンターの小林です。

先日のブログ(「小規模企業における労働生産性低迷の背景には人材不足も一因」)で、小規模企業の生産性低迷の要因の一つとして、資本生産性(設備が付加価値額を産出している状況を設備一単位あたりで表したもの)が大きく低下していることが挙げられるとお伝えしたところです。さらに、資本生産性の低下の背景には大きく二つの要因があり、一つが設備そのものの老朽化、もう一つが人材のスキル低下であると推察したところです。特に、人材のスキル低下に関しては、技能を有する人材の退職等による人材流出や人材不足であると考えられます。

このように、設備の老朽化や陳腐化、または人材流出や人材不足のなかにあっても、設備投資に取り組むことや業務の見直し、ITの活用などで生産性向上に取り組む小規模企業が一部にみられているようです。

今回は、設備投資を行なうことで生産性向上に取り組む小規模事業者の状況についてみていきたいと思います。

 

 

設備投資実施率は上昇基調

中小企業庁「2018年版小規模企業白書」(以下、「白書」)によると、2012年度以降、設備投資実施率は上昇基調にあります。企業規模別にみると、中規模企業と小規模事業者(法人)では、12年度以降、着実に上昇しています。一方、小規模事業者(個人)では、13・14年度が2年連続で低下していますが、15年度は上昇しており、07年度以前のリーマン・ショック前の水準に戻っています。

法人・個人とも小規模事業者の実施率の水準は、中規模企業に比べれば低いものの、実施率自体は上昇基調にあり、小規模事業者の中にも設備投資に前向きな動きが拡がってきているものとみられます。

 

 

生産性向上を目的とした設備投資が増加傾向

次に、設備投資の目的をみてみます。小規模事業者(法人)の投資目的別の設備投資額の推移をみると、12年度以降「既存建物・設備機器等の維持・補修・更新」を目的とする投資額が増加基調にあるほか、全体に占める割合も高くなっています。また、「既存事業部門の売上増大」も増加基調にあり、「既存建物・設備機器等の維持・補修・更新」を超える割合を占めるようになっています。一方、「省力化・合理化」や「新規事業部門への進出・事業転換・兼業部門の強化など多角化」も微かながら増加基調にあり、投資額全体の底上げに寄与しています。

以上の傾向は、中規模企業でも同様の傾向となっています。つまり、小規模事業者でも、単なる更新目的ではなく、売上増大や省力化・合理化、多角化など生産性向上を主たる目的とした設備投資を増やしていることが分かります。

 

 

設備投資を実施することで利益が増加

それでは、設備投資を実施することで、利益額に変化はあるのでしょうか?直近3年間の設備投資の実施状況と直近3年間の経常利益額が増加した企業の割合との関係を表したアンケート調査の結果をみてみましょう。下のグラフをみると、総じて設備投資を積極的に実施した企業では未実施の企業に比べて、直近3年間の経常利益額が増加した企業の割合が高くなっています。

これを設備投資の目的別にみると、特に「新規投資・増産投資」において、設備投資を積極的に実施した企業では未実施の企業よりも直近3年間の経常利益額が増加した企業の割合が高くなっています。また、「更新投資」や「省力化投資」においても、設備投資を積極的に実施した企業が未実施の企業に比べて10ポイント以上上回っています。

当然ながら経常利益額が増加したことから設備投資を積極的に実施しているとも考えられますが、厳しい経営環境のなかで、生産性を向上させ、利益額を増加していくには、設備投資を行なっていくことが非常に重要であることを示しているとも考えられます。

 

 

また、「白書」には、小規模事業者が支援機関、補助金などを有効に活用しながら、生産性向上に向けた設備投資を実施し、業績を向上させている生花店一軒と飲食店三軒の事例が掲載されています。いずれの事例も、小規模事業者が日常的に抱えていた問題意識をもとに、支援メニューを上手く活用しながら設備投資や改善等を行なうことで成果を上げている様子が分かります。

( 中小企業庁「2018年版小規模企業白書」のWebsite
http://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/H30/h30/shoukibodeta/index.html )

 

まとめ

事例に目を通すと、来店客数の減少や人材不足などの経営上の問題点に対し、各事業者が時代の流れと諦めるのではなく、自店なりに改善できる方法を検討し、実行に移している様子がひしひしと伝わってきます。そして、各事例の設備投資を伴った改善策をみると、小規模事業者にとっては決して少額ではないと思われますが、かと言って身の丈を超えるほどではない程度の設備投資の規模です。

とかく設備投資と言うと、大規模なものを考えがちです。しかし、生産性の向上を目指して、生産性を下げている要因を正しく把握・理解し、身の丈に合った設備投資を行なっていくことも重要と考えられます。