働き方改革を地方創生に活かすためには?

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアなどをご紹介いただいております。

今月の「センター月報6月号」では、働き方改革を地方創生に活かすヒントについて、ご説明いただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

働き方改革

 

副業解禁・地方での創業、そしてサテライトオフィス

 

滅私奉公的な「働き方」を求められる日本において「働き方改革」を行うならば、真っ先に行うべき変革が「副業(複業)解禁」であろう。政府の「働き方改革」のメニューにも副業解禁は含まれており、近年では大企業も実施するようになりつつある。

(中略)

副業を可能とする目的は「優秀な人材の確保」のためだ。優秀な人材ほど自らの能力開示に積極的で、副業規定の有無で企業を選ぶ時代になっている。今後、地方企業では都市にさきがけ就業規則をあらためていかねば、副業を認めていく都市企業への人材流出に一層拍車がかかってしまうだろう。

(中略)

そういう筆者も、企業に勤務していたときから就業時間外に副業をしていた一人で、副業歴は18年になる。日本中の宿を紹介するWebサイトの構築という副業を通じて、どれだけの人脈構築など本業へのプラス効果があったことか計り知れない。

今後、徐々に副業が認められるようになるにつれ、都会の企業に働く人材が地方の企業・組織の副業に就くことも視野に入ってくると思う。例えば、アウトドアが好きな人が地方でベンチャー企業を創業し、平日は都会で、週末は地方で働くといった働き方など、すぐに想像ができる。そうした働き方を地方から実践・提案していくこともこれから必要なことだと思う。

「平日は都会で、週末は地方で働くのであれば、休みがなく倒れてしまうではないか」。そう思われるかもしれない。しかし、好きな仕事であれば倒れないと思う。それに「労働と休日を掛け合わせた時間の使い方」を提案・実行していかねば、政府が旗を振る生産性向上はなかなかはたせないだろう。そうした時間の使い方の一例が、出張と観光を同時に行う「ブリージャー」だ。

そして、今後うまく展開されれば期待したい仕組みが「サテライトオフィス」である。高速回線が完備された古民家に複数企業がサテライトオフィスを設置した徳島県神山町を一度でも訪問すると、その魅力を理解していただけると思う。とりわけ、集中して業務にのぞみたいクリエイティブ職や、短期間でのプロジェクトにはうってつけだ。オフタイムには、近くのビストロをのぞいてみたり、農家の軒下の移動カフェで過ごしてみたり。通勤などの余計な時間がない分、仕事に集中でき、人間性も回復していく。

しかし、多くの企業・組織が地方での勤務に難色を示すのは、業務上のことではなく、おそらく家族の環境やローンで買った都会の家や子どもの学校のことだろう。「結局は、家族と会えるのは数カ月に一回の単身赴任か」。そんな声がサテライトオフィス化に水を差す。

(中略)

しかし、もっと近距離であればどうだろう。毎週末には、パパ(あるいはママ)が働くサテライトオフィスに家族もやってきて、バーベキューを楽しみ、泊まっていくという姿も少し先の未来にあるような気がする。あくまで仕事は「ワークタイム(拘束時間)」ではなく、「アウトカム(成果)」で計られるべきで、働く曜日も時間も場所も自由でよい。そんな労働環境を作っていくことで、初めて「働き方改革」が実現されると思う。

すでに、都市部では多くの企業でオフィスを共用するシェアオフィスの開業が相次ぎ、ベンチャー企業が数多く入居している。そうしたシェアオフィスの会員向けのサテライトオフィスが最も手っ取り早いだろう。地方の温泉地なども、いつまでも一泊の観光客を追うのではなく、こうした場づくりに手をあげていくことも必要だと思う。

(中略)

徳島県では、サテライトオフィスで勤務する家族の子どもに向けて、住民票を異動せずに何度も都市と徳島の学校を行き来できるデュアルスクールの実証事業を進めており、学校の制度改革が働き方改革を追い越してしまうかもしれない。

(中略)

地方創生を実践するうえで、仕事(オンタイム)と観光(オフタイム)をこれまでのように分けるのではなく、融合して考えることが求められてくる。

 

井門隆夫(2017)「観光イノベーションで地域を元気に 第3回」『センター月報』2017年6月号

 

感想

1つの自宅から1つの職場に通うという「当たり前」が今後、「当たり前」ではなくなっていく可能性があるようです。そのため、もしかすると、仕事も住むところも複数抱えるような時代が今後やってくるのかもしれません。