【基礎編】RESASの使い方・2~新潟県の産業の特徴~

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

さて、先日から連載している「【基礎編】RESASの使い方」の2回目をお伝えいたします。前回、お示しした通り、「RESAS」を使って地域分析する際の手順を、a)人口、b)主要産業、c)人の動き――の3点に沿って、ご紹介しています。

今回は、b)主要産業の分析方法をご説明します。なお、a)人口については、「【基礎編】RESASの使い方」をご覧下さい。

 

パワーポイントの資料

 

主要産業の特定

まずは、自分の住む地域について「規模の大きな産業」「付加価値をもたらしている産業」「地域住民の生活を支えて所得を生み出している産業」を確認します。

 

①出典

出典は、環境省「地域産業連関表」、「地域経済計画」(株式会社価値総合研究所 受託作成)となっています。2つのデータとも県民経済計算や都道府県産業連関表などとの整合性を保ちながら2010年度を対象に、全国の自治体(市町村)別に作られたものです。このデータを使うことで、地域経済のお金の流出入状況――生産・分配・支出の流れが把握できます。

 

②操作方法

「RESAS」のトップページから、「地域経済循環マップ」→「生産分析」をクリックします。その後、右メニューの「表示レベルを指定する」をクリックして、右上の「分析対象地域」を該当する市区町村に指定して下さい。今回は、「新潟県」を選択します。そして、「表示する内容を指定する」を「生産額」とし、右下の「地域内産業の構成を見る」をクリックします。

 

地域経済循環マップ トップページ

 

地域経済循環マップ 生産

 

なお、グラフが表示されたら、前の画面に戻り、「表示する内容を指定する」を「生産額」から「付加価値額」あるいは「雇用者所得」にして、合計で3つのグラフを確認します。都道府県単位ではなく、市区町村単位で分析する際は、右メニューの「表示レベルを指定する」を「市町村単位で表示する」にした上で、右上の「分析対象地域」を該当の市区町村に設定して下さい。

 

③分析結果

生産額・付加価値額・雇用者所得

まずは、地域の中で規模の大きな産業は何かを表す「生産額」からみていきます。地域を企業に例えるならば、売上(販売額)に当たる指標です。

 

地域経済循環 生産額 花火図

 

図をみると、新潟県では「サービス業」の生産額が最も大きく、以下、「卸売・小売業」「不動産」「建設業」「運輸・通信業」などが続いています。

次いで、地域住民の所得や地方税収の源泉となる「付加価値額」の大きな産業を確認します。いわば、企業の粗利益(売上-仕入)に当たります。

 

地域経済循環 付加価値額 花火図

 

図をみると、概ね生産額と同じですが、生産額と比べ付加価値額では「不動産」「公務」「電気・ガス・水道」の順位が上がっています。

さらに、地域の「雇用者所得」を産業別に分析して、住民の生活を支えている産業を確認します。企業に例えるならば、労働者に支払う人件費に該当します。

 

地域循環 雇用者所得 花火図

 

図をみると、生産額や付加価値に比べて、雇用者所得では「サービス業」「卸売・小売業」の割合が高くなっています。地域の雇用者所得は概ね雇用者数の規模に依存するため、これらの産業は雇用者数が多いとみられます。

なお、上記の図は、国及び地方自治体の職員が一定の制約の下で利用できる「限定メニュー」で閲覧可能な「全産業花火図」と似ていますが、数値は異なっています。これは、利用している統計データが違っているためです。「地域経済循環マップ」は環境省「地域産業連関表」、「地域経済計画」をもとに事業所単位で作成したデータですが、「全産業花火図」は総務省「経済センサス」をもとに企業単位で集計したデータとなっています。

 

地域産業の特徴の把握

続いて自分の住む地域の産業について、その生産性や、他の地域と比べた際の特徴を把握するとともに、地域外から所得を稼いでいる産業についても確認します。

 

①出典

出典は今ほどと同様に、環境省「地域産業連関表」、「地域経済計画」(株式会社価値総合研究所 受託作成)となっています。

 

②操作方法

「RESAS」のトップページから、「地域経済循環マップ」→「生産分析」をクリックします。その後、右メニューの「表示する内容を指定する」を「生産額」とし、「表示産業を指定する」を「全ての大分類」から任意の産業を指定します。ここでは便宜的に「第1次産業」とした上で、「すべての中分類」を「農林水産業」に指定します。

さらに、右下の「グラフを表示」をクリックします。すると、グラフが3つ表示されるので、上から1つずつ確認していきます。なお、先ほどの「表示産業を指定する」を「全ての大分類」のままにしておくと、以下のようなグラフは表示されませんので、注意して下さい。

 

地域経済循環 生産額 グラフ

 

③分析結果

生産額

まずは、「生産額(総額-産業別)2010年」からみていきます。このグラフは、先ほど確認した「地域の中で規模の大きな産業は何かを表す――生産額」の図と同じ内容です。ちなみに、「サービス業」の生産額が最も大きく、以下「卸売・小売業」「不動産」「建設業」の順位となっています。

なお、②操作方法で指定した「農林水産業」のみ赤色の棒で表示されます。加えて、グラフ下の表示範囲をドラッグすることで、範囲指定ができます。

 

地域循環 生産額 グラフ

 

生産額(一人当たり-産業別)

続いて、下にスクロールさせて、「生産額(一人当たり-産業別)」をみます。従業者1人当たりが生み出す生産額の高低を産業間で比較し、地域経済の強みや課題を把握します。

 

1人当たり生産額 生産性

 

グラフをみると、「不動産」が最も高く、以下「化学」「鉱業」「電気・ガス・水道」「石油・石炭製品」などが続いており、先ほどの「生産額」の順位とは異なっています。当然ながら、1回当たりの取引金額の大きな産業や装置産業などで高くなる傾向があります。

生産額(修正特化係数-産業別)

さらに、下にスクロールさせて、「生産額(修正特化係数-産業別)」をみます。修正特化係数とは全国平均と比べた際の産業の集積度を把握するものです。具体的には、分析対象の地域における「ある産業」の構成比――生産額に占める当該産業の生産額の割合を、全国における産業の構成比で除した数値となります。これが1よりも大きいと、全国に比べてその産業の構成比が高く、大きれば大きいほど、集積度が高いことを表しています。

 

生産額 修正特化係数

 

グラフをみると、「金属製品」が最も高く、以下「パルプ・紙」「一般機械」「建設業」などの順位となっています。

なお、「生産額(一人当たり-産業別)」「生産額(修正特化係数-産業別)」はともに、「生産額」を基準としていますが、同様に「付加価値額」「雇用者所得」でも(一人当たり-産業別)(修正特化係数-産業別)を表示させることで、地域産業の特徴をより正確に把握できるようになります。

操作方法は「RESAS」のトップページから、「地域経済循環マップ」→「生産分析」をクリックした後に、右メニューの「表示する内容を指定する」を「生産額」ではなく、「付加価値額」や「雇用者所得」にして下さい。

移輸出入収支額

最後に、地域外から所得を稼いでいる産業についても確認します。少し操作方法が異なるため、説明を加えます。

「RESAS」のトップページから、「地域経済循環マップ」→「生産分析」をクリックします。その後、右メニューの「表示する内容を指定する」を「生産額」ではなく「移輸出入収支額」にします。後は、同じ操作方法です。

 

移輸出入収支額 操作画面

 

移輸出入収支額とは、地域外から所得を獲得あるいは流出させているのかを把握するものです。地域を企業に例えると、地域外への売上(販売額)と地域外からの購入額との差を示したものです。この額がプラスとなる産業はモノやサービスの購入について、地域外への支払額よりも地域外からの受取額の方が多いことを表しています。

 

移輸出入収支額

 

グラフをみると、「一般機械」が最も高くなっています。以下、「金属製品」「食料品」「電気機械」「化学」の順で移輸出入収支額が大きくなっています。

 

感想

以上の5つの分析から、新潟県の産業の特徴については、

  • 地域の中で規模の大きな産業は何かを表す「生産額」については、「サービス業」が最も大きく、以下「卸売・小売業」「不動産」「建設業」「運輸・通信業」の順

 

  • 地域住民の所得や地方税収の源泉となる「付加価値額」については、概ね生産額と同じであるが、生産額に比べて「不動産」「公務」「電気・ガス・水道」が順位を上げている

 

  • 地域住民の生活を支える「雇用者所得」については、生産額や付加価値額に比べて、「サービス業」「卸売・小売業」の割合が高くなっている

 

  • 生産性を示す「生産額(一人当たり-産業別)」については、「不動産」が最も高く、以下「化学」「鉱業」「電気・ガス・水道」「石油・石炭製品」などの順となっており、「生産額」の順位とは異なる

 

  • 全国と比べた際の産業の集積度を表す「生産額(修正特化係数-産業別)」については、「金属製品」が最も高くなっている。以下「パルプ・紙」「一般機械」「建設業」などが続いており、これらの産業の集積度が全国に比べて高くなっている。

 

  • 地域外からの所得の獲得状況を示す「移輸出入収支額」は、「一般機械」が最も高く、以下「金属製品」「食料品」「電気機械」「化学」の順位となっている

といったことが理解できます。

=

以前にもお伝えした通り、上記の分析は必要な統計データを揃え、そのデータを打ち込み、図示化する作業に従来は多くの時間を要していました。しかし、「RESAS」の作業に慣れてしまえば、ごく短時間で分析が終了します。やはり、この時間の短縮が「RESAS」の最大のメリットだと思われます。

なお、長くなりましたので、a)人口、b)主要産業、c)人の動き――の3点のうち、最後のc)人の動きについては、日を改めてお伝えいたします。

【ここまでの連載】

→ 「【基礎編】RESASの使い方~新潟県の分析事例をもとに~

→ 「【基礎編】RESASの使い方・2~新潟県の産業の特徴~

【関連投稿】

→ 「【初心者向け】地域経済分析システム(RESAS)を使ったインバウンドデータの分析手法

→ 「新潟県の観光(インバウンド)データを分析して分かったRESASのメリット

→ 「RESASを使う際に注意すべき5つのポイント~新潟県の観光分析事例から~

 


 

【資料】

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「地域経済分析システム(RESAS)について<ver.19>」(2015年9月)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/h27-09-11-nousui.pdf
(2016年3 月29 日閲覧)

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「地域経済分析システム(RESAS) 第Ⅱ期2次リリースについて」(2015年12月)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/verup2-setsumei.pdf
(2016年3 月29 日閲覧)

経済産業省「地域経済分析システム 基本操作マニュアル」(2015年12月18日第3版)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/manual.pdf

(2016年3 月29 日閲覧)

経済産業省関東経済産業局「地域経済分析システム(RESAS)の分析手法例 ~RESASを使って地域経済を把握してみよう~」(2016年3月)
http://www.kanto.meti.go.jp/
seisaku/kikaku/index_chiikikeizai.html

(2016年3 月29 日閲覧)

経済産業省関東経済産業局「地域経済分析システム( RESAS ) の分析手法例」(2016年3月)
http://www.kanto.meti.go.jp/seisaku/
kikaku/data/syuhou.pdf

環境省のホームページ「地域経済循環分析とは」(2015年12月4日)
https://www.env.go.jp/press/
files/jp/28653.pdf
(2016年3 月29 日閲覧)

価値総合研究所のホームページ「地域経済循環分析解説書」(2015年12月22日)
http://www.vmi.co.jp/reca/
pdf/download-04.pdf
(2016年3 月29 日閲覧)

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「Q&A (第2期2次リリース版)」(2015年12月18日)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/h27-12-18-ver2q-and-a.pdf

(2016年3 月29 日閲覧)