RESASを使う際に注意すべき5つのポイント~新潟県の観光分析事例から~

 

こんにちは。新潟経済社会リサーチセンターの江口です。

さて本日は、内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)の「RESAS」を使った分析結果をご紹介する連載の第3回です。

✻これまでの分析結果については、下記をご覧下さい。

初心者向け】地域経済分析システム(RESAS)を使ったインバウンドデータの分析手法
「外国人メッシュ分析」により新潟県のインバウンドを分析して分かったRESASのメリット

今日は「外国人消費分析」「外国人消費花火分析」を使った新潟県内のインバウンドの現状と、「RESAS」を活用する際に注意すべき5つのポイントをお伝えします。

 

外国人 カードカード支払額

 

外国人消費分析

それでは、「外国人消費分析」を使って調査した結果からみていきましょう。

 

1.出典データについて

まず、使用されているデータについてですが、こちらの出典は:ビザ・ワールドワイド・ジャパンのカードデータをもとに、内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部事務局)が作成したデータとなっています。

つまり、外国人訪問客によるVISAブランドのクレジッカードについて、その利用金額などが把握できます。ただし、アジアやヨーロッパといった地域ごとに、VISA、Masterなどブランド別の決済額割合などを加味しながら推計したデータである点には注意が必要です。また、2012年8月から2015年7月までのデータに限られているといった点にも留意しなければなりません。

 

2.隣接県との比較

それでは、分析を進めていきましょう。

まずは、外国人訪問者によるクレジットカード消費額を新潟県と隣接県との間で比較してみました。

2014年の1年間で比べてみると、新潟県は約19億となっているのに対して、山形県は約5億円、福島県は約5億円、群馬県は約13億円、長野県が約90億円、富山県が約10億円となっています。したがって、隣接県内では長野県が突出する金額となっています。また、新潟県は長野県に次ぐ規模となっています

なお、千葉県は約601億円、東京都は約6,055億円、神奈川県は約206億円となっています。やはり首都圏の規模は大きいです。

なお、下の図はマウスオーバーさせて新潟県のデータのみ表示したものです。

 

外国人消費分析・全国

 

3.新潟県内の国籍別消金額

次いで新潟県について、外国人訪問者のクレジットカード消費額(2014年間)を国籍別に調べてみました。

すると、中国の訪問者による消費額が最も大きく、以下、韓国、香港、米国、台湾、オーストラリアなどと続いています。この順位を新潟県の「平成26年度外国人宿泊数調査結果について」と比べてみると、調査年は異なるものの、中国の消費額は延べ宿泊数に比べて突出して大きくなっています。「爆買い」とまではいかないかもしれませんが、買い物にお金を費やす傾向がうかがわれます。また、韓国、香港、米国も延べ宿泊数に比べて消費額が大きくなっています。

 

国籍別消費額・新潟県・2014年

新潟県外国人延べ宿泊数

 

4.新潟県内の国籍別消費額の推移

続いて、今ほど、ご紹介した国籍別のクレジットカード消費額の推移を時系列で調べてみました。

すると、オーストラリアをはじめとして、冬場に消費額が大きくなる傾向が読み取れます。一方、中国は季節を問わず、消費額が大きくなっており、特に2014年から急増しています。

 

国籍別消費額の推移・新潟県

 

外国人消費花火図

続いて、「外国人消費花火図」のデータをみてみましょう。

このデータは「外国人消費分析」と同じデータを活用したものであり、クレジットカードの消費額を部門別に確認できる点に特徴があります。そこで、2014年の1年間における部門別消費額の構成割合を新潟県のほか、全国、そして隣接する長野県と比べてみました。

 

部門別消費額の構成割合

 

この図をみると、全国では、消費額全体に占める「小売」の割合が5割を超えています。恐らく、首都圏などで「爆買い」などがみられるためだと思われます。

一方、新潟県では消費額に占める「小売」の割合が低い一方、「宿泊」の割合が高く、4割に達しています。背景には、新潟県では泊まるだけの人が多く、地域での回遊性が高くない、すなわち買い物や外食に出る機会が少ないことがうかがわれます。また、連泊する人も少ないのかもしれません。いずれにしても滞在時間がきっと短いのだと思われます。

 

まとめ

本日を含めて3回にわたって、「RESAS」を使いながら、新潟県内のインバウンドの現状を探ってきました。新潟県内では湯沢町や妙高市などの一部で外国人訪問者が増えているものの、他県と比べると、まだまだ水準は低いこと、また地域内での回遊性が低く、地域全体を押し上げるほどには至っていないことなどが確認できました。

また、分析を通じて「RESAS」を使う際に注意すべき点に気が付きましたので、最後に以下の通りにお知らせしたいと思います。

 

1.出典データを確認する

「RESAS」には様々な統計データが使われています。特に民間企業が集計したデータについては、見慣れていないため、どのようなデータなのかをしっかり把握する必要があります。この点を疎かにすると、まさに数字の独り歩きが始まります。

そのデータがどのように取得されたものなのか、何を表したデータなのか、全体のどの程度をカバーしているのか、取り扱う際に何を注意すべきなのか、などをしっかりと吟味する必要があります。

 

2.数値そのものよりも特徴を把握する

「RESAS」には、推計されたデータなどが含まれているため、数値そのものに意味があるというよりも、他地域と比べた際の特徴や、時系列でみた際の傾向を把握することに重きをおいた方が良いデータもあります。

そのため、対象地域だけを分析するのではなく、どの地域と比較するのか?どの程度の時系列で比べてみるか?などを併せて検討しないと、その地域の特徴が把握しにくい場合があります。

 

3.マニュアルを熟読する

スマートフォンや家電製品を購入した場合、分厚い説明書を見ずに、とりあえず動かしてみる人も多いと思います。私もそのタイプであるため、当初「RESAS」についても、まずは適当にクリックして動かしてみました。

しかし、クリックだけしていても理解できない機能なども正直、あります。そこで、最初は嫌だったのですが、マニュアルを印刷して、マニュアル通りに動かしてみると、スムーズに分析が進んでいきました。マニュアルには、画面だけでは分からない分析手法や、図の見方などが掲載されています。

「面倒だな・・・」という気持ちを抑え、まずはマニュアルに目を通してみましょう。「RESAS」については「急がば回れ」が正しいようです。

ちなみに、マニュアルは紙媒体と動画の双方が用意されていますので、内閣官房(まち・ひと・しごと創生本部)のページをご覧下さい。

 

4.仮設-検証型でスタートする

ビッグデータについては、それを活用することで、例えば「こんな意外な場所に外国人訪問者が滞在していることが分かってビックリした」といった具合に、予想とは異なる知見を得られることが期待されています。

しかしながら、まだまだデータ数が少ないことから、あるいは私の分析テクニックが低かったことなどから、今回の試みでは新たな知見を得ることはできませんでした。「きっとこうなのではないか?」という事前の仮説に対して、「あぁ、やっぱりそうだった」という分析結果ばかりでした。

ただし、そもそも分析とは「仮設-検証」の繰り返しが基本であると思います。「RESAS」を使えば、夢のような分析結果に出会えるのを期待するのではなく、「こういった取り組みを実施してみたが、その通りに地域が変わったかどうか」を確認する、または「地域の問題はこの点だと思うので、それを裏付けてみる」ために分析をしてみる姿勢が大切なんだと、改めて感じました。

 

5.行動につながるような分析を意識する

「RESAS」を使うことで、従来に比べると、分析の手間・時間が確実に削減できます。

ただし、従来の分析でも同じなのですが、分析しても現状を把握できただけです。未来に向けて「で、何をすれば良いの?」といった具体策を示してくれるわけではありません。そこは分析者自身が考えなければならない点です。

「RESAS」に限らず、全ての分析に言えることですが、「で、何をすれば良いの?」を導き出すために分析をしているわけですから、分析で終わっていては意味がありません。したがって、できるだけ「行動」につながるような分析を意識しなければ・・・と強く感じました。

 


 

資料:

 

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「地域経済分析システム(RESAS)について<ver.19>」(平成27年9月)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/h27-09-11-nousui.pdf

内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局「地域経済分析システム(RESAS) 第Ⅱ期2次リリースについて」(平成27年12月)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/verup2-setsumei.pdf

経済産業省「地域経済分析システム 基本操作マニュアル」(2015年12月18日第3版)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/
sousei/resas/pdf/manual.pdf

新潟県の「平成26年度外国人宿泊数調査結果について
http://www.pref.niigata.lg.jp/
HTML_Article/225/703/
26gaikyaku_chosa_gaiyou.pdf