空き家の戸数が急速に増加~県内各地で空き家の有効活用に動き~


新潟経済社会リサーチセンターの唐橋です。

近年、新潟県内でも空き家を有効活用する取り組みがみられますので、本日はその事例をご紹介したいと思います。

 

空き家対策

新潟県の空き家戸数は急速に増加

人口の減少が本格化するなか、全国各地で空き家が増加しています。5年毎に、総務省が実施している「住宅・土地統計調査」によると、1988年の全国の空き家の戸数は394万戸、新潟県は5.7万戸でありました。その後、全国・新潟県とも増加基調が続き、2018年には、全国が846万戸、新潟県は14.6万戸となっています。30年間で全国は452万戸、新潟県は8.9万戸も空き家が増加しており、新潟県の増加率は全国を大きく上回っています。

全国の空き家の推移

新潟県の空き家の推移

空き家には大きく3種類があり、①別荘やセカンドハウスなどの二次的住宅、②賃貸または売却用住宅、①・②以外の③その他の住宅に分けられます。そのうちの二次的住宅を除く空き家の戸数を総住宅数で除した空き家率をみると、足元では全国・新潟県ともに横ばいとなり、両者の水準は同水準となっています。しかし、過去30年間で全国・新潟県とも二次的住宅を除く空き家率は上昇傾向にあり、特に新潟県では急速に上昇している様子がみてとれます。

このように、新潟県においては急速に空き家の戸数が増加するなか、空き家を有効活用しようとする動きが各地でみられるようになってきています。具体的には、空き家をリノベーションまたは改装して「まち」の賑わいの場や起業の場などとして生まれ変わらせる取り組みなどです。

◇新潟県内における空き家の有効活用の事例

ヨシダリノベーションプロジェクト(燕市吉田地域)

JR吉田駅に近い吉田上町周辺で、地域内外の人たちが交流できる場を作るためのリノベーションプロジェクトが進んでいます。この取り組みを行なっているのは、同地域出身で、2018年に帰郷した建築士の蓮沼知大氏を中心とした数人の有志です。

帰郷にあたり、何か地域との関わりを持てる活動をしたいと考えていた同氏は、まちづくりに関する勉強会に参加するなかで「リノベーションまちづくり」の考え方に出合いました。そして、吉田地域で実践したいと考えるようになり、JR吉田駅近辺の商店街で活動を始めることとしました。

当初は商店街に知り合いも少なく、人づてで商店街の店主や家主などを紹介してもらいました。また、商店街のイベントなどに参加や協力を行なうことを通じて、商店街関係者との信頼関係を築くなかで、同氏の考え方に賛同してくれる元呉服店の家主から空き店舗を借りることができました。18年8月から、その空き店舗のリノベーションに取り組み始め、19年5月にカフェを併設したコミュニティスペースである「Toko Toko」をオープンしました。通常、同所はカフェと、数人の雑貨作家による商品の展示・販売スペースですが、希望があれば地域内外の人たちが交流できるイベントの主催者への貸出も行なっています。オープン後、既に立ち飲みイベントや各種ワークショップなどの場として利用されています。

同所を訪れる人の大半がカフェの利用者ですが、同地域でリノベーションを活用した起業に関心のある人が訪れることもあります。その際、経験談などを交えながら同氏が適宜相談に応じています。同時に、同所のオープンを機に、周辺の空き店舗の家主から空き店舗を提供したいという声が出始めるようになってきました。今後も商店街関係者との信頼関係を維持しながら、2店・3店と広がりを作り出し、同地域の活性化の一翼を担いたいとしています。

ヨシダリノベーションプロジェクト

しばたまち守の会(新発田市)

新発田市中心部のメインストリートから1本小路を入った所にある「白勢長屋」と呼ばれる明治時代に建てられた長屋の一軒で、リノベーションに向けた動きが始まっています。この動きを主導しているのは、地元官民の有志の集まりである「しばたまち守の会」です。

同会設立のきっかけは、17年10月に新潟県主催で開催された「公務員リノベーションスクール@新潟県」(以下「スクール」)に、同市の官公庁に勤務する数名の職員が参加したことです。そこで学んだことを市民にも広く知ってもらおうと考え、11月以降、月1回のペースで市民向けの報告会やまちあるきイベントなどを開催してきました。回数を重ねるにつれ、参加者の一部で、リノベーションまちづくりに取り組みたいとの機運が盛り上がりました。そこで18年6月に、有志15名で同会を結成し、リノベーションまちづくりを始めることとしました。

対象物件の選定は「スクール」で学んだ3つの原則に則りました。1つ目は地価が中心部に比べて割安かつ下げ止まり感がみられること、2つ目は物件周辺に地域活性化の先駆者が存在すること、3つ目は志の高い物件所有者をみつけることです。そして、この3つの原則に当てはまる物件が、以前から市民の間で保存の機運のあった「白勢長屋」です。

現在は、「白勢長屋」の一軒の所有者と同会のメンバーとの間で、リノベーション後の具体的な活用方法や、改装工事の資金計画などを検討し始めています。また、同会の活動内容を市民に周知し、賛同者を増やしていくために「白勢長屋」を会場とした市民向けのイベントなどを行なっています。合わせて、地元FM局の番組へのメンバーの出演や同会のフェイスブックによる情報発信なども行なっています。

19年1月以降、今後の改装工事を安全に行なうために、県内の公益法人の補助金等を活用して、建物の構造診断などに着手しています。現地での構造診断では、メンバーも畳や床を剥がす作業に参加することで、建物の構造や強度について理解を深めています。

構造診断の結果が明らかになるなか、今後の改装の進め方や賃貸借の形態について、所有者と同会との間で具体的な話し合いを進めています。今後は、クラウドファンディングの活用なども検討しながら改装費用の調達に目途をつけ、地域の賑わいの場づくりを加速させていきたいとしています。

しばたまち守もりの会

にじいろBASE(長岡市)

JR長岡駅から約2キロ離れた新町・石内地区にて、築50年超の空き家をリノベーションし、1階を女性専用カフェ、2階をシェアスペース(貸オフィス)として営業している「にじいろBASE」があります。この取り組みは同地区在住の高橋紀子氏によるものです。

2010年の結婚を機に、同氏は夫の故郷である長岡市の同地区に引っ越してこられました。引っ越し後、数年が経過するなか、同地区の少子高齢化の現状や、それに伴う空き家・空き店舗の増加を目の当たりにし、同地区の将来に漠然とした不安を覚えるようになりました。この状況を少しでも解決していきたいと考えた同氏と夫は、まちづくりについての情報収集を行なうなかで「リノベーションまちづくり」の考え方を知り、実践したいと考えるようになりました。

同じ頃、自宅前の空き家の所有者が、その物件を手放したい意向であることを知りました。また、子育て世代を中心とした女性専用のカフェを開業したいという思いを同氏は持っていたことから、空き家をリノベーションしたうえで、1階を女性専用のカフェ、2階をシェアスペースとして開業することとしました。

17年12月の開業以来、カフェならびにシェアスペースとも、近隣の子育て世代の女性を中心とした利用者が徐々に増加しています。それに伴い、カフェで物販をしたほか、イベントや講座を開催したいとの申し出も増えつつあります。具体的には、ハンドメイドの作家が自分の作品をカフェで販売したり、ヨガやピアノなどの講師や助産師、栄養士などの人たちが、自分の専門知識を活かした女性向けのイベントや講座をカフェで開催したりするものです。これにより、自分の資格や技能を活かして収入を得たいと考える女性が手軽に実践できる場の役割も果たすようになっています。

18年11月には、同地区にゆかりのある有志数名とともに「ちょいまちなかリノベーションミーティング」という集まりを結成し、月1回のペースで同地区のまちづくりについて語り合う場を持ちました。19年5月には、この集まりを「神田・新町地区地域振興推進協議会」に発展・改名しました。同会では「はなまちリノベまちづくりプロジェクト」として、同地区でのリノベーションまちづくりの推進や、イベント開催による交流人口の拡大を進めていく予定です。既に、地区内の古寺と連携した「はなまち門前マルシェ」というイベントを19年5月に開催し、7月には2回目を開催しました。

これらの活動が少しずつ地区内で浸透するなかで、遊休不動産の所有者のなかから、同氏夫妻に有効活用の相談を持ちかける人も出始めています。これらの所有者と連携を深め、同地区全体のエリアとしての価値を高めていきたいとしています。

にじいろBASE

池田組(長岡市)

長岡市中心部において、空き家や空きアパートなどを使ってシェアハウス(共同住宅)やシェアオフィスを始めてみたいと希望する人たちに対し、物件の紹介やリノベーション工事を手がけているのが、同市で建設業を営む池田組です。これまでに同市で数件、リノベーション希望者への物件紹介等を行なっています。

同社の専務取締役である池田雄一郎氏は、本業を通じて地域を活性化するために、数年前から市内中心部の空き物件の増加に対し、何らかの対応ができないものか思案していました。そのようななか、長岡造形大学で開催されたリノベーションに関する講演会を聴講したことで、リノベーションによる物件再生を空き物件対策の1つとして自社でも取り組むことを検討し始めました。

検討から間もない2016年9月に、知人の1人から、シェアハウスを始めたいとの相談を受けました。偶然、シェアハウス向きの空き物件の所有者を知っていたことから、両者を引き合わせることとしました。

この案件で、同氏が気を付けた点は以下の3点です。1つは、物件の所有者である貸し手に、借り手であるシェアハウスの運営者ならびに入居予定者の人柄などを正確に伝えたことです。具体的には、借り手の人たちは若いながらも、地域社会に馴染める人たちであることを説明し、トラブル発生時には同氏が責任を持つことも付け加えました。2つ目は、建物の構造以外の内装や水回りの改修費用は借り手が負担することから家賃は相場より安くしてほしい旨を所有者に伝えたことです。3つ目は、貸し手の手続きの負担を軽くするために、行政への法令上の確認は同社が行なったことです。

また、池田氏は思いを1つにする人たちと「一般社団法人長岡家守同人」を結成しました。同法人では、空きアパートを所有者から一棟借り上げ、リノベーションのうえ、入居希望者にサブリース(転貸)しようとする取り組みを始めています。既に入居者のミーティングの場となる共有キッチンなどが完成し、入居も始まっています。

同社は、地域の活性化のためには「点」から「面」に向けた活動が必要であると認識しています。今後は、成功事例を積み上げながらノウハウを蓄積し、遊休不動産の有効活用を進めていく方針です。

池田組

点から面への展開に期待

以上の4事例の他にも、同種の取り組みが県内のいくつかの地域でみられており、この動きが県内各地に広まっていくことが期待されます。

合わせて期待されるのは、4事例のいくつかでも指摘されているように、各地域での点の活動が面の活動になって拡がっていくことです。この種の活動が地域全体に拡がることで、まちの賑わいを取り戻すことにつながっていくのではないでしょうか。


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「センター月報」 2019年8月号の 「潮流 県内最新トピックス 第24回」を加除修正しました。