令和時代のプロモーションとは?

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

私どもの機関誌「センター月報」では、毎月、井門観光研究所の井門隆夫先生より、地域活性化や観光振興などに役立つヒントやアイデアをご紹介いただいております。

今月の「センター月報5月号」では、令和時代のプロモーション方法のヒントについてご紹介していただきました。本日はその原稿の一部をご紹介いたします。

 

令和時代のプロモーション

 

ミレニアル世代の時代

 

1.新しい時代のスタート

元号も変わり、名実ともに新しい時代が始まる。

令和元年には、新時代最初のエリアプロモーションとして10月から「新潟県・庄内エリア デスティネーションキャンペーン(DC)」が展開される。「日本海美食旅(ガストロノミー)」をテーマとし、冬の日本海や雪国の文化に根差した食が全国に発信され、私も今から訪れるのを楽しみにしている。

しかし、おそらく今のようなスタイルで実施されるのは今回が最後になるのではないだろうか。もちろん、テーマである地域の食文化については、その価値が普遍である限り、一層発信され続けていくはずだが、不特定多数の消費者に向けて、ポスターや旅行会社のパンフレットといったアナログメディアを通じて集客するプロモーションスタイルは今後、新しいスタイルへと変わっていくと感じている。

その理由は、これまで長きにわたり増加し続けてきたアクティブシニア層(65歳以上)が減少し始めているためだ。この世代は、1970年代以後の観光の大衆化に寄与し、半世紀もの間、市場をけん引してきた。現在の観光ビジネスを形づくってくれたのもこの世代のおかげだ。キャンペーンという名声型のプロモーションスタイルもこの世代に向けた方法だった。75歳以上に限っては2028年まであと10年間増え続けるので、この世代に向けて、元気な超高齢者市場を創造するのも日本らしくてよいが、持続可能な地域を作るためには、新しい策を考えるタイミングになってきている。

 

2.注目されるミレニアル世代

新しい時代の観光は、現在の20~30代である(1981年~1996年に生まれた)ミレニアル世代が世界中で作り上げつつある。この世代は、世界的に物心がついたときには既にインターネットに触れていた「デジタルネイティブ」最初の世代だ。ビジネス上のコミュニケーションでは電話やEメールも使ってはいるが、オフタイムはチャットで済ます。非効率な合コン等には行かず、ミートアップアプリで仲間を募る。私のような狭間の弱小世代は、上の世代と下の世代とでコミュニケーションの仕方を分けなくてはいけないので、両方わかる。アナログ対デジタルの闘いだ。

彼らが社会に出た頃は、既に21世紀。日本では、長い平成のデフレ期に突入していた。そのため、彼らは生まれてこのかたインフレを知らない。彼らの世代の特徴は、多様な情報源を駆使して無駄なことをしないコストパフォーマンス追求型である点だ。そして、コミュニティを大切にする。チームというより、コミュニティだ。そこに昔ながらのリーダーの姿はない。

そういうと、旧来型組織の所属員なら「それでは烏合の衆だ」と思うことだろう。しかし、組織を引っ張っていくタイプのリーダーはあまり好まれない。必要だとしたら、常に失敗のフォローをし、包み込んでくれるメンター型や、ビジョンを示し、モチベーションを高めてくれるファシリテーター型のリーダーである。それは、彼ら世代に読まれてきたマンガ『宇宙兄弟』に登場する「エディ・ジェイ」や、最近、組織論の教科書にもなっている『キングダム』の「政」のようなタイプだ。

人口減少期に育った彼らは、ひとつの組織の歯車となってチームで闘うよりも、個を高めることを尊重し、全体で得られる付加価値以上に一人ひとりが幸せに生きていけることを優先している。

 

(中略)

 

5.デジタルネイティブの時代へ

旅館業界での働き方を20分間のプレゼンテーションで競う「第4回旅館甲子園」が先日開催され、全国から選ばれた3社のファイナリストが登場。栄えあるグランプリは、松之山温泉(十日町市)の「酒の宿玉城屋」が獲得した。生家である旅館に戻ってわずか3年の若社長である山岸裕一さんには恐縮だが、業界での下馬評は高くなかった。しかし、周囲の声を覆し、グランプリを獲得した背景には、酒を前面に押し出した宿コンセプトもさることながら、ミレニアル世代である山岸さんはもとより、まわりに集まった同世代の社員の個性が際立ち、都市で働く方々に評価されたためだろう。

おそらくこれまでの企業といえば、社長をトップとした団結や愛社精神、苦労を支え合う家族的な社風が評価され、旅館甲子園でもそうした企業がグランプリを得てきた。しかし、玉城屋には、「なんとなく楽しそう」「自分のやりたいことができそう」という社員が集まっている。もしかしたら彼らはずっとここにいる気はないかもしれない。でもそれは承知のうえ、それぞれの社員のキャリアアップにつながればいいという雰囲気に満ちている。

ミレニアル世代には、緩いつながりのデジタル上のコミュニティがいくつもあり、コミュニティと自分とのつながりを大切にしつつ生きている。コミュニティからの情報量も多く、ひとつの組織だけに依存していないので転職はごくふつうのキャリアステップとして考えている。

第三者が、彼らに情報を発信し続けてもなかなか響かない時代になった。彼らのこだわりにはまればよいが、はまらないと聞き流されるだけだからだ。一方で、信頼のおけるコミュニティのメンバーが勧めているものには飛びつく。なぜ、若者が海外旅行に行かないのかと旅行会社が悩んでいるが、それはそういう旅行会社に勧められても行かないからだ。仲間が勧めればいつでも行く。

こうした時代の観光プロモーションとは、いかに多くのコミュニティとつながりを持てるかにかかっている。「#niigata」でどれだけ仲間に発信されるかどうかだ。最も近道は、プロモーション自体をミレニアル世代に委ねることである。平成と令和の時代で決定的に違うことは、人口減少の時代であることに加えて、完全デジタルの時代へと移行すること。そして、主導権をデジタルネイティブが取ることだ。いち早くそうした地域、企業から新しい時代へのパスポートを得ていくことだろう。

 

 

井門隆夫(2019)「観光イノベーションで地域を元気に 第25回」『センター月報』2019年5月号

 

 

感想

デシタルであれリアルであれ、信頼できる様々なコミュニティとのつながりを持つことは、観光のプロモーションだけではなく、いきいきとした高齢化社会を過ごしていく上でも重要な気がしました。