公共インフラの老朽化問題に関する調査レポートをまとめました

 

新潟経済社会リサーチセンターの小林です。

全国各地で道路や橋梁、上下水道管などのいわゆる公共インフラの老朽化問題に注目が集まっています。国ならびに全国の自治体においては、少子高齢化や財政難に直面するなか、インフラの維持管理を適切かつ効率的に進めていくことが課題となっています。

そこで、各種統計資料などをもとにインフラの現状を整理するとともに、県内外の先進的なインフラの維持管理の事例をふまえたうえで、これからのインフラの効率的な維持管理のポイントについて調査レポートをまとめました。詳しくは「センター月報2018年4月号 公共インフラの効率的な維持管理に向けて」をご覧下さい。

なお、この調査レポートにおけるインフラとは、上下水道や道路、橋梁などをいい、行政庁舎や公民館などの建物は調査対象外としています。

 

 

インフラの現状

全国の現状

まず、全国のインフラの現状について、国土交通省の資料をもとにみると、今後20年間で建設後50年以上を経過するインフラの割合が急速に上昇する見込みとなっています。例えば、建設後50年以上を経過する道路橋の割合は、2013年に約18%だったものが、23年に約43%、33年には約67%と急増する見込みです。

それに伴い、インフラの維持更新費は、増加が続く見込みです。「平成26年度国土交通白書」によると、13年度の維持管理・更新費は約3.6兆円でしたが、10年後には約4.3~5.1兆円、20年後には約4.6~5.5兆円程度になると見込まれています。

 

建設後50年以上経過するインフラの割合

 

新潟県の現状

次に、新潟県のインフラの現状について、新潟県や県内市町村の資料などをもとにみると、新潟県が保有するインフラも全国と同様、今後20年間で老朽化した施設の割合が高くなる見込みとなっています。橋梁においては、建設後50年以上を経過する施設の割合が13年に約24%だったものが、20年後の33年には約67%と急増する見込みです。また、市町村が保有するインフラにおいても、同様の状況となっているところがほとんどとなっています。そして全国同様、新潟県ならびに県内市町村においても、今後のインフラの維持更新費が現状よりも増加するところが多いものとみられます。

以上のような状況は、行政庁舎や公民館などのいわゆる箱モノと呼ばれる公共施設と同様となっています。公共施設については「注目を集める公共施設の老朽化問題」または「センター月報2017年11月号 公共施設の効率的な維持管理に向けて」をご覧下さい。

 

新潟県が管理する施設の老朽化

 

インフラの効率的な維持管理を進めるうえでの問題点と持続的活用に向けた動き

インフラの効率的な維持管理に向けた問題点

県内市町村へのヒアリング調査などをふまえ、インフラの維持管理上の問題点を整理すると、大きく以下の3点にまとめられます。

①財源不足によりインフラ老朽化対策を先送り:厳しい財政状況のなか、対症療法的な対策が中心で、計画的な老朽化対策が後回しになってきた

②人員不足による職員の負担の拡大:行政の土木部門の職員数の減少に伴い、職員一人当たりの業務量が多くなりインフラの隅々までの現状把握が困難になってきた

③官民連携に二の足:インフラの維持管理に民間事業者が携わることへの住民の不安や、大手事業者等の参入による地元事業者の衰退への懸念から官民連携に踏み出せない

 

注目を集める官民連携による維持管理

多くの市町村が、上記のような問題点を抱えるなか、国は市町村向けの様々な支援を進めています。例えば、人材確保・育成のために、民間技術者を派遣できる仕組みや維持管理に関する研修の充実などを図っています。また、官民連携の新たな手法の一つとして「包括的民間委託」の活用の推進を勧めています。

包括的民間委託とは、公共施設等の管理運営業務について、「複数年契約」で、詳細な業務基準を定めない「性能発注」¹方式によって、複数の業務や施設を「包括的」に民間企業に委ねる方式のことを言います。具体的には、自治体が求める業務水準を定めるにあたり、例えば水道事業の場合では「受注者は、要求水準を最低限満たすよう、浄水場の運転状況の監視及び運転操作を行ない、安全な水を安定して配水するものとする」といった内容で要求水準書²に定め、詳細な維持管理の方法については民間事業者に任せる委託方法です。

 


¹性能発注:民間事業者が施設を適切に運営し一定の性能(パフォーマンス)を発揮することができるのであれば、施設の運転方法の詳細等については、民間業者の自由裁量に任せるという考え方(国土交通省「性能発注の考え方に基づく民間委託のためのガイドライン」)

²要求水準書:民間事業者に対して求める条件や内容を明記したもの(内閣府ホームページ「PFI事業導入の手引き」)


 

包括的民間委託のメリットとしては、大きく以下の3つが挙げられます。

1つ目は、これまで個別に行なっていた点検や清掃、調査業務等をひとつにまとめて発注し、それを複数年契約とするため、個別に委託業務を発注する場合に比べ、設計書作成業務、契約事務手続き業務などが省略され、業務の軽減を図ることができます。

2つ目は、複数年契約の性能発注方式であるため、民間事業者にとっては人材の確保や設備投資がしやすくなり、創意工夫の広がりを期待できます。

3つ目は、複数年にわたって管理・運営しているため、災害時などの緊急時には、施設の状況を熟知している民間事業者によって、迅速かつ適切に対応できることです。

以上のような流れのなか、県内においてもインフラの維持管理にあたり、官民連携を模索する動きがみられるほか、全国では他に先駆けて、官民連携などを活用しながら、インフラの効率的な維持管理に取り組んできた自治体があります。

調査レポートでは、県内の事例として三条市の公共インフラの包括的民間委託についてご紹介しています。また、県外の事例として東京都府中市の「道路等包括管理事業」、福井県坂井市の「上下水道包括的民間委託」、群馬東部水道企業団の「水道事業の広域化と官民連携事業」の3事例についてご紹介しています。

 

インフラの効率的な維持管理に向けて

最後に、インフラを効率的に維持管理するうえでのポイントを4つにまとめました。

①インフラの現状を客観的に把握

②官民連携の積極活用

③行政と地元に技術や経験を蓄積する体制の整備

④できることから実行し、推進しながら調整する

以上の4つのポイントは、上記の県内外の事例をふまえて整理いたしました。道路や水道といったインフラは、市民生活において不可欠なものであることから、いずれの事例においても、対症療法的な維持管理から先を見越した維持管理に改めてきているのが特徴といえます。そして、新たな維持管理方法の導入にあたっては、行政単独で行なうのではなく、行政と民間企業が協働して取り組んでいる所が大きなポイントとなっています。これからのインフラの維持管理にあたり、官民連携は限られた財源と人材でインフラを安全に維持していく手段の一つとして有効と考えられます。