酒井とし夫氏著『心理マーケティング100の法則』の感想

 

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

当センターで発刊している「センター月報」に毎月、ご寄稿いただいている酒井とし夫先生の新刊が発刊されました。そこで、今日はこの書籍をご紹介したいと思います。

 

書籍 本 感想

 

臨場感溢れる文章を書くには?


酒井先生の5冊目の書籍は『心理マーケティング100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)。タイトルどおり、心理学を活用しながらビジネスにすぐに使える売上向上テクニックを100項目紹介したものです。具体的には、商談の現場や店舗で使える営業テクニックをはじめ、プレゼンテーションをする際のヒントや職場でのコミュニケーションを円滑にする方法などが解説されています。

毎月、ご寄稿いただいている連載をよりコンパクトにしつつ、広範囲にまとめたような仕上がりとなっており、人間心理に基づいた営業・販売方法を広告・営業(交渉)・プレゼン・社内などの場面ごとに、網羅的に学べます。特に、成績を伸ばしたいと思っている営業担当者や、集客アップを図りたいと考えている店舗経営者、さらには社員のモチベーションを高めたいと感じている管理者の方々ならば、様々なアイデアに出会える本だと思われます。

私自身は100項目のうち、「なるほど、確かに…」「ここまで気を配って書くのか…」と最も勉強になった項目は「031 KSKK文章作成法」でした。これは、K(感情)S(思考)K(行動)K(会話)の要素を文章に取り入れると、より臨場感が感じられるというものです。そこで、該当部分を一部、以下のとおりご紹介いたします。

 

たとえば、「私は部下に怒りを感じて、怒鳴りつけてしまった」という文章はとても淡白な感じがします。

ここに「感情・思考・行動・会話」を加えて表現すると次のようになります。

「私は部下の『この書類のどこに間違いがあるんですか!』(会話=話し言葉)というひと言に強い怒りを感じ(感情)、『こんなに一生懸命に教えているのに、なぜ彼はわかってくれないのだ』という悔しさが頭をよぎりました(思考)。次の瞬間に頭に血が上り、手はワナワナと震えだし、思わず相手を怒鳴りつけてしまったのです(行動)」

こうすると淡白だった文章に現実味が出て、その場の状況がぐっとわかりやすく変わります。

 

酒井とし夫(2018年)『心理マーケティング100の法則』日本能率協会マネジメントセンター pp.80~81

確かに両方の文章とも同じ意味合いですが、後者の文章に臨場感がより強く感じられます。恐らく、文章だけではなく、何かしらの内容を口頭で説明したり教えたりする際にも使えるのではないでしょうか。

例えば私どもの会社であれば、景気の現状を口頭で説明する際、「新潟県内の景気は全国と同様に横ばいで推移しています」と伝えるよりも、「『まだまだ新潟には景気回復の波が及んでいないよ~』(会話)との声も聞かれますが、◯◯業では大口の受注が相次いでいるという新聞記事を目にして、『もしかすると景気判断を変える必要があるかもしれない』と頭を切り替えました(思考)。そこで、普段とは異なる統計指標にまで手を広げ、目を光らせて一つひとつ確認する(行動)と、全国並みに改善している指標の多いことに気づいたのです」といった具合に話すと、やや冗長ではありますが、臨場感ある伝え方ができると思います。

反対に、事実のみを伝えることに主眼を置いたビジネス文書を作成する場面では、ご紹介した「K(感情)S(思考)K(行動)K(会話)」をあえてはずして文章を作ると、よりシンプルに事実を伝えられるのかもしれません。

 

まとめ

冒頭で本書を「心理学を活用しながらビジネスにすぐに使える売上向上テクニックを100項目紹介」した書籍とお知らせしました。ただし、じっくりと読み込んでいくと、「お客様・職場の上司・同僚・部下だけではなく、家族・友人を含めた自分を取り巻く周囲の人たちと良好な関係を築くための知恵・工夫を紹介」した書籍と言い換えた方が良いと感じました。

例えば、酒井先生が解説された100項目を単なるセールステクニックと捉えれば、自分の都合を優先しがちとなり、お客様と良好な関係を長期的に築くことが難しいケースもあるのではないでしょうか。そうではなく、ビジネスであろうがプライベートであろうが、相手の立場に立ちながら、自分の考えを分かりやすく伝える知恵・工夫と捉え、生活の様々な場面で取り入れていけば、人生の歯車が軽やかに回り出し、本書をより活かすことにつながると思いました。