東京一極集中?多層的集中?~小峰隆夫氏著『日本経済論講義』の感想~

グラフ 日本経済

新潟経済社会リサーチセンターの江口知章です。

先日、小峰隆夫氏著『日本経済論講義』(日経BP社)を読みました。景気の現状、アベノミクスの評価、働き方改革のポイント、少子化対策の方向性、今後の地方経済について、広範囲にわたって分かりやすく説明されていました。特に地方経済の先行きについては、示唆に富む点が多かったです。

こうした中、書籍の中で気になったグラフがあったため、そのグラフを加工するとともに、本書籍の内容の一部をご紹介したいと思います。

 

ブロック中心都市(札幌、仙台、福岡など)へ集中

一般的に、地方経済の先行きについて考える際には、東京一極集中と併せて検討・分析する時が多いと思われます。これに対して、小峰氏は『日本経済論講義』の中で東京一極集中、東京の一人勝ちという捉え方を変えようと提起されています。

具体的には、札幌市・仙台市・福岡市などのデータを例にあげ、東京都区部よりも人口が集積している地域があると指摘されています。いわば、広域ではなく都市別に、短期間ではなく長期間にわたるデータをもとに分析されています。

その上で、

 

全国では東京への集中が生じているのだが、各ブロック(北海道、東北、九州など)ではブロック中心都市(札幌、仙台、福岡など)への集中が進んでおり、「各府県では府・県域の中心(府・県庁所在地)へ」「各地域では中心都市へ」という具合に、各階層において集中が起きていると考えるべきではないか。したがって私は、「東京一極集中」というより「多層的集中」と呼ぶべきではないかと考えている。

つまり、全国に1つあればいいもの(例えば、企業の本社機能)は東京に、ブロックに1つあればいいもの(例えば、プロ野球の球団)はブロック中心都市に、県に1つあればいいもの(例えば、県立大学)は県庁所在地にという具合に、機能の階層ごとに地域集中が起きており、それが総合されて日本全体で多層的な集中が起きているのといのうが正しい診断ではないか。

 

小峰隆夫氏著(2017)『日本経済論講義』日経BP社

と述べられています。その際、札幌市、仙台市、首都圏主要都市、東京都区部、大阪市、福岡市の人口推移をグラフにまとめて紹介されています。

このグラフはとても興味深いものなのですが、私たちが住む新潟県の県庁所在地である新潟市のデータが含まれていませんでした。そこで、新潟市の人口データを含めて、小峰氏のにならい下記のとおりグラフ化してみました。

 

人口の推移

人口の推計

 

県庁所在地別に、かつ長期時系列でみると、首都圏の千葉市、さいたま市、横浜市だけではなく、札幌市、仙台市、福岡市の人口の伸びに驚かされます。小峰氏がおっしゃられるとおり、こうした市がいわゆる「ブロック中心都市」に当てはまるのだと思われます。

一方、新潟市は残念ながら、そこまでの人口の伸びがみられません。しかも、先行きの推計値をみると、落ち込み幅も他市に比べて大きなものとなっています。

こうした差には当然、様々な要因があると思われますが、今回は社会増減の観点から、各市の転出入超過数(上位5地域)を内閣官房「地域経済分析システム(RESAS)」を使って簡便に分析してみると、以下のような図となります。

 

札幌市 転出入超過数

▲札幌市の転入超過数・転出超過数(上位5地域)

 

仙台市 転出入超過数

▲仙台市の転入超過数・転出超過数(上位5地域)

 

福岡市 転出入超過数

▲福岡市の転入超過数・転出超過数(上位5地域)

 

新潟市 転出入超過数

▲新潟市の転入超過数・転出超過数(上位5地域)

 

あくまでも上位の市町村のみの結果なので、別途、詳細に分析する必要があり、参考程度でしかないものの、札幌市は他都府県の大都市へと人口が流出している反面、道内の他市町村から人口が流入しています。一方、仙台市と福岡市は同じ県の他の市町村や他都府県の大都市へと人口が流出している反面、周辺県の県庁所在地などから人口が流入している面がみられます。

これに対して、新潟市は首都圏の大都市へと人口が流出している一方、新潟県内の市町村から人口が流入しているのみで周辺県の県庁所在地からの人口流入がみられません。当然、背景には首都圏との距離の近さや、新潟県の面積の広さなどが関係していますが、もしかすると、周辺地域でみた場合の拠点性に欠けている面があるのかもしれません。

 

まとめ

ご紹介した書籍に触発され、実際にデータを加工したことで、データはどの観点からみるかによって、意味合いが大きく異なるということ、またデータ同士を比較することで見え方も大きく異なるということを改めて学ぶ良い機会となりました。やはり、書籍は単に読むだけでなく、小さなことでも良いので、日々の行動に活かすことが大切なようです。